第16話 アリアさんを祝おう!
夜になってアリアさんの祝勝パーティーに来た俺たちだったが────
「あれ、アディン=アルマークスくんだ〜!試合見てたよ〜!ねぇねぇ!アリアなんかよりも私と────」
「アディンくんに触ったら許さないから」
「アルマークスくん、良かったら私たちのパーティーに────」
「アディンくんに話があるならまずは私を通してくれる?」
こんな感じで押し寄せられて、全然アリアさんのことを祝うことができなかったため、俺とアリアさんは高そうな食べ物をお皿に乗せると二人でテラスまで来た。
「アディンくんは私のアディンくんだから絶対渡さないよ〜だ!」
アリアさんは会場に向かって大声でそう言った。
ドアは閉められているから会場の人たちには聞こえないだろう。
「きっとアリアさんの弟子だからってことでみんな誘ってくれただけだと思いますよ……それに、俺はアリアさんのところを離れるつもりはありません」
「アディンくん……!」
ようやくアリアさんの優勝を祝えそうな雰囲気になったので、俺は改めてアリアさんのことを祝うことにした。
「アリアさん、本当に優勝おめでとうございます!今回の大会で、さらにアリアさんの凄さを思い知らされました!」
「まぁね〜!でも正直、一試合目以外は本当に肩書きだけって感じのやつばっかだったから、素直に喜んでいいかは微妙だけどね」
「優勝は優勝なので、喜んでいいと思います」
「もう〜!アディンくんがそう言ってくれるなら、私喜んじゃうね!」
アリアさんは、俺に可愛らしい笑顔を見せる。
……俺はさっきのアリアさんの言葉で一つだけ気になることがあったため、そのことを聞いてみることにした。
「さっき一試合目以外はって言ってましたけど、一試合目ってシュテリドネさんでしたよね?あの人は、やっぱりアリアさんから見ても結構強いってことですか?」
「私には及ばないと思うけど、それでも強いと思うよ……今回は対人形式だったからあんまり強みを発揮できてなかったみたいだけど、クエスト達成数一位っていうだけあって色々対策立てて戦う感じなのが目に見えてたから、相手がモンスターとかだともしかしたら私より効率良く倒したりするかも」
「アリアさん、より……」
あの試合を見て、俺はやっぱりアリアさんはすごく強く、シュテリドネさんもアリアさんには負けたけどそれでも強い人、という感想しか出てこなかったが、アリアさんは対人戦とモンスター戦で見方を変えてそんなことまで考えられるのか……そういったところも見習わないといけないな。
俺が改めてアリアさんに尊敬の念を抱いていると、アリアさんはしばらく黙って何かを考え込んでいる俺のことを見ると、慌てたように言った。
「アディンくん!?言っておくけど、今言ったのはもしかしたらの話だから!私の方が魔力量は多いから私の方が全然強い可能性の方が高いよ!?」
「わかってますよ?どうしてそんなに慌てた感じで言うんですか?」
「今の沈黙の間って、私の弟子を完全にはやめないまでもモンスター対策はシュテリドネに任せようか考えてる沈黙じゃないの!?」
「ち、違いますよ!アリアさんは考え方もすごいなって、改めて尊敬してたんです」
「え、そ、そう?それなら嬉しいね〜!」
さっきまで慌てた様子のアリアさんだったが、頬を赤く染めて口元を緩ませ、照れながらも喜んでいるのが表情だけで簡単にわかる表情になった。
「……パーティーって言っても、やっぱりこうしてアリアさんと二人で居る方が落ち着きますね」
「うん……他の誰が何人居たとしても、アディンくん一人だけが私のこと祝ってくれたら、私は本当に幸せだよ」
そう言って、今度は綺麗な笑顔を俺に見せてくれた。
「アリアさん……」
夜と場の雰囲気に当てられてしまったのか、俺たちが普段とは違う雰囲気で会話をしていると、テラスに高そうな服を着た人たちが複数人やって来ると、アリアさんに話しかけた。
おそらく、貴族の人たちだろう。
「フェルステさん、フェルステさんこそ本日の主役なのですから、そろそろ会場へ戻っていただけるとありがたいです」
「えぇ、フェルステさんに挨拶をしたいという方が私たちを含め大勢居ますから」
アリアさんは「今いい雰囲気だったのに、タイミング悪すぎ……」と、何を言ったのかはアリアさん自身にしか聞こえないほど小さな声で呟くと、アリアさんは俺に申し訳なさそうに言った。
「ごめんねアディンくん、すぐ済ませて来るから、ここで待っててもらってもいい?」
「はい、わかりました」
アリアさんは俺の頭を軽く撫でると、その貴族の人たちと一緒に会場に戻った……俺は一人でテラスから街の景色を眺める。
「今日は……色々あったな」
アリアさんが魔術大会で優勝して、俺は実戦形式のもので初勝利を収めることができた……大きな進歩だ。
……あの日の約束を果たすまでには、あと何歩進めばいいのか。
夜になって至る所に光のある街並みを見ながら、俺は一人でそんなことを考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます