第13話 魔術大会を始めよう!

「すごい人の数ですね」

「この街だけじゃなくて、他の街からも人がいっぱい来る大きな規模の大会だからね」


 魔術大会当日、俺とアリアさんは、魔術大会会場である闘技場の観客席から、席が埋め尽くされている会場を見ながら話していた。


「……そう思うと緊張してきました、ギルドの貴重な一つだけの訓練生枠を俺が使っても良かったんでしょうか」

「あぁ、それはね……うん、少なくともアディンくんが何か心配することはないと思うよ、相手も訓練生だと思うから相手の子が心配だけど……」

「え?」

「ううん、なんでもないよ!それより、私第一試合目から早速試合だから行ってくるね!アディンくんはここで私のこと観てて!」

「わかりました!頑張ってください!」

「アディンくんがそう言ってくれるなら、私ちゃんとアディンくんにかっこいいところ見せられるように頑張るね〜!」


 アリアさんは笑顔でそう言うと闘技場の真ん中に向かい、それから一度俺の方を見るとウインクしてきた……アリアさんはこんな時でも変わらないな。

 俺がそのことに少し安心感を覚えていると、アリアさんとその対戦相手の人が闘技場の真ん中に出揃ったことで、司会者らしき人は大声で言う。


「皆さん!今年もこの時期がやって参りました!各街、都市、国から凄まじい才能を持った魔術師を集めて、その頂点を決める場!その名も、魔術大会!!ルールは簡単!魔法のみで闘い、その魔法力を競う大会です!!」


 その大声量に当てられた観客の人たちも、呼応するように「うおおおおお!!」と叫んだ。


「そして!なんと今回は!世界に有数しかいないSランク冒険者にして、魔法に関する扱いなら世界でも右に出るものはいないと言われている、あのアリア=フェルステさんがご出場なされるということで!闘技場の真ん中に居るのが、まさにそのアリア=フェルステさんその人です!!」


 その大きな声とともに、周りから話し声が聞こえてくる。


「え、マジで!?」

「なんでフェルステさんが居るんだって思ってたけど、まさか参加するなんて……!」

「あのフェルステさんがこういうのに参加するなんて……!」

「今回は荒れるぞ……!」


 アリアさんの参加が宣言されたことで、観客の人たちがさらに盛り上がりを見せる……もうわかっていることだが、やっぱりアリアさんはすごい人らしいな。


「そして、第一試合でそのアリア=フェルステさんの対戦相手となるのは!こちらも異国のSランク冒険者にして、冒険者の中でもそのクエスト達成数は堂々の第一位である、ノーラ=シュテリドネさんです!!」

「うおおおおお!!」


 観客の人たちはまたも盛り上がっている……ノーラ=シュテリドネさん、異国のに関する知識はほとんどないから俺にとっては知らない名前だが、遠目からでも長髪で髪色が水色の女性ということはわかった。

 観客の人たちがこんなにも盛り上がっているということはかなり有名な人なんだろう。

 ……アリアさんと同じSランク冒険者で、しかもクエスト達成数が一位ということは、それだけ強さも兼ね備えているはずだ、どんな試合になるんだろうか。


「それでは、前置きはこのくらいにして……そろそろ始めていただきましょうか!第一試合、アリア=フェルステさんバーサスノーラ=シュテリドネさんの開幕です!!」


 それから観客の人から歓声が上がると、最初はシュテリドネさんの方からアリアさんに攻撃を仕掛けた……氷魔法だ。

 アリアさんはそれに対応する形で、炎魔法を使って氷を溶かした。

 ────だが、シュテリドネさんはその氷の中に雷魔法を含めていたらしく、氷が溶けたことによってその雷が一気にアリアさんの方に向かった……アリアさんはそれをギリギリのところで風魔法を使って方向を歪ませる形で回避した。

 その一連の攻防に、観客の人たちはさらに声を上げる。

 すごいハイレベルな戦いだ、あれが……Sランク冒険者。

 俺も含めて観客の人たちもその戦いに感心していると、観客席からでは聞こえないが、アリアさんとシュテリドネさんは何かを話しているようだった。


「シュテリドネ、随分面白い小細工考えるんだね」

「……あれを初見で防ぐとは、アリア=フェルステ、真面目さに欠ける性格はしてると聞いてたけど、実力があるのは本当らしいな」

「私にそんな上から話してきた人久しぶりなんだけど、もしかして私に勝てると思ってるの?」

「あぁ、思ってる、何故なら────どれだけ魔力があろうとも、君は会話に意識を持っていかれてこの程度の魔力にも気づくことができないからだ」


 二人が何かを話しているかと思えば、アリアさんの足元からとても大きな木の根が出てきた……もしかして、俺がミレーナさんに模擬戦でやられた時みたいに……!


「アリアさん!」


 俺はアリアさんの危機に、思わず叫んでしまっていた。

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