第11話 アリアさん対ミレーナさん!
アリアさんとミレーナさんについて行った先で着いた場所は、街外れにある広い草原だった……ここなら周りの迷惑にもならないし、植物もたくさんあるから今回の土魔法だけで戦うというルールでは、持って来いの場所なんだろう。
アリアさんとミレーナさんは、俺の方に手をかざすと、二人ともが植物の根を急成長させて俺の周りに張り巡らそうとした────が。
それぞれが急成長させた植物同士がぶつかり、植物は変な方向に曲がってしまった。
「ちょっとミレーナ!私がアディンくんの周りに防壁立ててあげるから邪魔しないでよ!」
「こちらのセリフです、私がアディンさんに危害が及ばないように防壁を立てて差し上げますので、アリアさんは何もしないでください」
「はぁ?どうして私以外の、それも女の魔力で包まれた土魔法でアディンくんのことを包むのを見過ごさないといけないの?アディンくんのこと包んでいいのは私だけなんだから!」
アリアさんがそう言うと、変な方向に曲がっていた植物が、片側……つまり、アリアさんが操っている土魔法の方がミレーナさんの土魔法を押し返すようにした────が、ミレーナさんもそれに抵抗して、今度は変な方向には曲がらずに、二人で一つの防壁を作ってくれたという感じになった。
「……じゃあ、勝った方がアディンくんのこと包み込むってことで、いいよね?」
「はい、問題ありません」
────二人がそう言った瞬間、二人の地面にヒビが入ったかと思えば、二人は地面にあった枝を何本も大木に変化させて、それで互いを攻撃しあった。
「流石アリアさんです、アリアさんの言う通り、もし本当に何も縛らずに本気の勝負をしていたら、アリアさんは格下の私に簡単に勝ってしまっていたでしょう……ですが、今回は私たちエルフが得意とする土魔法での対決……!」
ミレーナさんは、アリアさんの後ろにあった枝を急速成長させ、それでアリアさんに攻撃した……全く魔力の気配を感じなかった、やっぱりミレーナさんもすごい人だ。
アリアさんはそのいきなりの攻撃を躱すことができず────その大木の攻撃を喰らった……その衝撃によって、アリアさんの周りに木屑が霧散して、アリアさんの姿が見えなくなってしまった。
「アリアさん!」
いくらアリアさんでも、土魔法限定なら体は18歳の人間の少女だ……とてもじゃないが、あんな大木を喰らって無傷でいるとは思えない。
そう心配していた俺だったが、やがて木屑がなくなると、そこには────後ろに大きな花を開いている、無傷な様子のアリアさんが居た。
「姑息な手が上手なんだね、私には意味なかったみたいだけど」
どうやら、花を成長させてその花を盾にして無傷で済ませたようだ。
瞬時にそんなことを思いつくなんて、やっぱりアリアさんもすごい人だ。
「一度攻撃を防いだぐらいで……」
その後も、幾度となく大木によって互いが互いを攻撃するという状況が続いた……やっぱり二人とも強い。
とてもじゃないが、あの中に入って全ての攻撃を受け流せる気がしない。
「ミレーナ、もう打つ手はないの?」
「そちらだって、防戦一方なのでは?」
「防戦?この私が?」
アリアさんが口角を上げた────次の瞬間、アリアさんの方から、今までの大木の倍以上はある大きな大木が出てきたかと思えば、それがミレーナさんのことを襲った。
「そんな、もう────」
ミレーナさんはその攻撃を喰らってしまい、どうにか受け身は取った様子だったが、それでも服が破れていたり本人もダメージを負っていたりと、満身創痍な状態になっていた。
「っ……水魔法などの応用がない状態であそこまでの大木もを用意するのは、私ですらかなりの時間を要するのに……一体いつからその魔力を練っていたんですか?」
ミレーナさんのその問いに、アリアさんは即答した。
「最初から、ミレーナが不意打ちとかくだらないこと考えてる間もずっと練ってた、確かに土魔法だけだとミレーナの方が優勢……だったから、今回は久々に対策ってやつをしてみたの」
「……そうですか」
ミレーナさんは負けを認めたように、その場に座り込んだ。
勝負がついたことで俺の防壁も解かれたため、俺は二人の近くに行く。
「それで?どうして私からアディンくんを取ろうとしたの?」
「だって……」
「だって?」
ミレーナさんは頬を膨らませると、怒った様子で叫んだ。
「羨ましかったんですもん〜!アディンさんとあんな感じで仲良くしてるのが〜!私だってアディンさんと仲良くなりたいのに!」
珍しく感情を露わにしたミレーナさんに、アリアさんは大人気なくニヤついた顔で言った。
「うんうん、わかる〜!私とアディンくんって仲良いよね〜!」
「……」
ミレーナさんは無言でアリアさんのことを見た後で、悲壮な顔をしながら俺の方に近づいてきて言った。
「アディンさん、見てください……服は破れ、太ももや胸元が少し露わになってしまい、体に少し痛みを感じます……なので、良ければ少し肩を貸していただけませんか?」
「え、え……?えっと……」
色々とあったけど、怪我してるのは事実だし……
「わかりまし────」
俺がそれを承諾しようとした次の瞬間、ミレーナさんの体の傷が一気に治っていった……何事かと思ったら、アリアさんが呆れた様子で口を開いて言った。
「はい、もう回復したから、今の話なしね」
「……そうですか、ありがとうございます」
ミレーナさんは笑っているようで、目が笑っていなかった。
だが、アリアさんはそんなミレーナさんのことを無視して言った。
「じゃあ!私勝ったから、アディンくんのこと包み込んであげるね!」
「え……?」
その後、俺とアリアさんは、アリアさんが土魔法で作った防壁の中で二人で休憩することにした……ミレーナさんも入りたがっていたが、アリアさんがそれを拒否していた……この二人の攻防は、今後もまだまだ続きそうだ。
……色々とあったが、とりあえず今回の件はアリアさんの勝利ということで幕を下ろす形となった。
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