第7話 粗暴な男をやっつけよう!

「アディンくん、今日はここ最近でも一番頑張ったね〜!」

「はい……もう少しも炎出ません」


 俺とアリアさんは酒場で一緒に座りながらそんなことを話していた。

 今日は魔力量を増やすためということで、魔力を限界まで使い果たした……魔力を使い果たしても、どうにか魔力を練ろうと頑張った結果少し出た炎をも使い切って、魔力を完全に使い果たした状態ということもあって、疲労感が強い。


「でも、魔力を使い切った後で頑張って練った魔力分が、次の新しい魔力として増えるから、そうやって少しずつ強くなっていこうね!」

「頑張ります……」

「私、ご飯注文してくるね、アディンくん何食べたい?」

「アリアさんと同じのでいいです」

「え〜!私と一緒にしてくれるの〜?嬉しい〜!じゃあアディンくんは疲れてると思うから、ここで休んで私のこと待っててね!」

「わかりました」


 アリアさんは一度俺に微笑みかけると、すぐに酒場のカウンターの方に行った……アリアさんが戻ってくるまでの間は、大人しく体を回復させよう。

 ……ところが、俺のところに筋肉質で俺よりも二回り以上体の大きい男の人が、何やら怒った様子でやってきて、大声で言った。


「おい!お前、フェルステさんと二人でご飯たぁいい身分だなぁ?どこの誰か知らねえが、そこ代わってくれよ」

「代わってって言われても、俺師匠にここで待つように言われてますから」

「師匠だぁ?フェルステさんが弟子を取り始めたって噂は聞いてたが、まさかこんなガキだったとはな……おいガキ、俺と殴り合いで勝負しろ!」

「えぇ……」


 いきなり話しかけてきたと思ったら、随分と粗暴な人みたいだ。

 今は疲れてるし、アリアさんにも休むように言われてるのに……それに、あまり人のことを殴りたくはない。


「それは────」


 断ろうとしたとき、この人が突然座っている俺に殴りかかってきたので、俺はそれを反射的に避ける……アリアさんに比べたら全然遅い。


「っ!このガキ避けやがった!表出ろ!」


 周りを見渡してみると、他のお客さんたちが困惑、動揺、恐怖、さまざまな目でこの体の大きい男の人見ていた……他の人に迷惑をかけてこの酒場に迷惑をかけるわけにもいかないし。


「わかりました、出ましょう」

「おうよ!」


 そして、俺とこの体の大きい男の人は、一緒に酒場の外に出た。

 すると、体の大きい男の人は意気揚々と話し始めた。


「ルールは単純!魔法や武器は禁止の素手での殴り合い!周りに迷惑をかけたら悪いもんなあ?」


 そう言ってニヤニヤと俺のことを見てきた……迷惑をかけたら悪いと言っているが、実際のところは魔法や武器を使った戦いが苦手だから、自分が一番得意な素手での殴り合いで勝負がしたいということだろう。

 だが、今は俺も魔力が使えないからちょうどいい。


「それでいいです」

「で、俺が勝ったらフェルステさんは俺の物だ!」

「師匠は物じゃないですよ」

「黙ってろ!ガキは大人しく頷いてりゃいいんだよ!」


 ……アリアさんのことを物のように言うこの人に少し怒り、俺はその怒りを拳を握ることで表して言った。


「……じゃあ、素手の殴り合い、でいいんですね?」

「あぁ……そのツラボコボコにしてやるぜ!!」


 そう言って、この人は俺に向かって駆け込んできた。

 無防備な上に、あの走り方じゃ急に止まったりすることもできないだろう。

 俺はすぐにこの人の後ろを取ると、足を引っ掛けてこけさせた。


「痛え!何すん────」


 その後はもう、ただただ俺が一方的に攻撃する形で終わった……冒険者でもない一般の人にここまでするのは気が引けたが、この人から言ってきたことだから仕方がない。

 俺が一応、息切れしてもう動けずに疲れている様子のこの人の応急処置をしていると、酒場のドアが勢いよく開いて、アリアさんが俺のところに来た。


「アディンくん!だいじょう────ぶ、みたいだね」

「はい」


 アリアさんは安心した様子で、俺の隣まで来て言った。


「席に戻ったら居なくなってて、周りの人に聞いてみたら体の大きい男と出て行ったとか聞いて心配したよ」

「心配かけてすみません、この人がアリアさんと居る俺のことを見て、そのことでいきなり殴りかかってきて」

「……へぇ」


 アリアさんは虚な目をこの男の人に向けると、俺に言った。


「アディンくんは、一発殴られたってこと?」

「いえ、ちゃんと避けました」

「そっか、良かった……アディンくんは優しくていい子だね、そんな人にもちゃんと応急処置してあげるなんて」

「アリアさんを物のように言うこの人に怒りを覚えて多少加減を忘れてしまったところがあるので、申し訳なくて」

「……アディンくん、先に酒場に戻っててくれる?アディンくんの意思を尊重して、私がこの人のこと回復魔法で回復させといてあげる」

「本当ですか?ありがとうございます!」


 俺はアリアさんのお言葉に甘える形で、先に酒場に戻った。

 ……その後で何が行われるかも知らずに。


「本当だよ、アディンくん……最後にはちゃんと、この人のこと無傷の状態にしてあげる……でも、その前に────アディンくんに危害を加えようとしたからには、ちゃんとそれ相応の罰を受けてもらわないとね」


 十分ほどしてアリアさんがさっきの体が大きく粗暴な男の人と一緒に戻ってくると、体の大きな男の人は、俺に何度も謝罪してきた。

 俺は当然それを許したけど……アリアさんが回復魔法を使うのに、十秒もかからない。

 きっとあのぐらいの軽い怪我なら、数秒で治せたはずだ。

 ……さっきの十分で、何があったんだろうか。

 俺はそのことを考えないようにして、アリアさんと一緒に楽しく酒場でご飯を食べた。



 この作品が連載され始めてから一週間が経過しました!

 毎話ごとに日を追って読んでくださっている皆様や、一気に読み進めてくださっている皆様にも感謝しかありません!

 もしこの作品を読んでいて楽しいと思ってくださっている方が居たら、この連載一週間をきっかけとして、その気持ちをいいねや☆、コメントなどの方法で教えていただけたらとても嬉しいです。

 今後も楽しくこの物語を描かせていただこうと思いますので、読者の皆様もこの物語を楽しんでくださると幸いです!

  今後もよろしくお願いします!

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