第7話

 俺は強化の為にダンジョンアプリを立ち上げ、自分のステータスを開く。


 その瞬間、大量の書き込みがキーファちゃんねるのコメント欄に溢れた。

 みんな一様に驚いている。


 なんだなんだ?

 俺なんかよりキーファを見て欲しいんだが!


「あっ、なるほど!

 お前ら、俺が弱すぎてビックリしてるんだな?」


「しかたないだろ? キーファはワーウルフで、ステータス上昇に必要なダンジョンポイントが人間より多いんだ。パパとしてはキーファを最優先で強化したいしな!

 ここまで上げるのにすげー苦労したんだぞ? 最近ダンジョンポイント高いしよ」


 納得した俺は、表示をキーファのステータスに切り替える。

 俺のスタータスなんて面白くもなんともないからな。


 ========

 氏名:大屋 キーファ

 年齢:8歳

 種族:ワーウルフ


 HP:200/200

 MP:30/30

 攻撃力:80

 物理防御力:200

 魔法防御力:200

 魔力:20

 必殺率:30

 LP:433日


 LV1格闘(ひっぷあたっく)

 LV1射撃(ボウガン)

 LV1魔法(テンションアップ、防御力強化)

 レアスキル(にこにこキーファ)

 ========


「あ、そうか。 久しぶりにダンジョンポイントがたくさん手に入ったんだ。

 せっかくだしキーファの防御力あげとこ♪」


 ========

 氏名:大屋 キーファ

 年齢:8歳

 種族:ワーウルフ


 HP:200/200

 MP:30/30

 攻撃力:80

 物理防御力:210(+10:ダンジョンポイントを3000消費します)

 ……


 ========


 ぱああああっ


「わあっ♪ またキーファつよくなったよ! ありがとうぱぱ!!」


 むんっ、とポーズを取るキーファ。

 世界一可愛い。


 <流れるようにキーファたんを強化してて草>

 <ていうか、防御力のダンジョンポイント消費量って1上昇あたり50じゃなかった? マジでレート悪いんだな……>


 そうなのだ。

 ワーウルフはを持つこともあり、ステータス上昇に伴うダンジョンポイント消費レートが悪い。


 だいたい普通の人間の6~10倍近くを消費する。

 そのかわり、特殊な力を解放すれば一時的に10倍以上強くなれるのだが。


(まあ、キーファに”その力”を使わせるつもりはないけどな)


 力を使えば、キーファのLPは大きく減少してしまう。

 キーファにも絶対使っちゃ駄目だと厳命している……もし使ったらお尻ぺんぺんの上、おやつ1週間抜きである。


 <いやいやそんなことより!>

 <パパのステータスもっかい見せてよ!>

 <今来たんだけど何ココ?>

 <ここのスタッフがドラゴンをブッ飛ばしたドラおじって本当?>

 <え、この子が探索すんの? かわいいけどまだ子供じゃん……>

 <なんか視聴者増えてね?>

 <パパ、はやくはやく!>


「あ~、何だよオマエラ」


 そんなに俺がステータス強化する所が見たいのだろうか?

 しぶしぶ自分のステータスを開きなおす俺。


 ========

 氏名:大屋 ケント

 年齢:27歳

 種族:人間


 HP:3800/3800

 MP:0/0

 攻撃力:1600

 物理防御力:1200

 魔法防御力:1200

 魔力:0

 必殺率:0


 LV3格闘(右ストレート)

 LV3間接(全回復)

 レアスキル(超てかげん、非常脱出、キラキラ紙吹雪(キーファ演出用、【超だいじ!】))

 ========


「な? やっぱり面白くもなんとも……」


 さっさとHPと攻撃力を強化しよう、そう考えていた俺だが……先ほどを上回る勢いでコメントが書き込まれていく。


 <は? なにこれ?>

 <強すぎwwwwwww>

 <草>

 <いやいや、さすがにコラだろ?>

 <【悲報】パパ脳筋だった>

 <世界ランカーの山田でも攻撃力950じゃなかった?>

 <山田以上かよwwwwww>

 <これならドラゴンを拳で一撃も可能なのか?>

 <レアスキル3つも持ってるヤツ見た事ねぇ……>

 <ちょっと配信総合スレに宣伝してくる!!>


「????」


 あっという間に1000を超えるコメントが書き込まれる。

 俺が……強いって?


 思わず困惑してしまう。


 探索者適性が目覚めたときにダンジョンポイントが付与される。

 俺はそれが多かったので、体力と攻撃力と防御力に全振りしただけだぞ?

 他のステータスも0ばっかだし、魔法も使えずまともに武器を使う技量もないから拳で戦っているくらいだ。

 剣技や魔法を駆使して鮮やかに戦うトップ探索者には及ぶべくもない。


「あ~、そうかそうか。

 お前ら俺にドッキリを仕掛けるつもりだな?

 ”えふえふ”ならスタータス上限は9999だものな、騙されないぜ?」


 えふえふとは国民的RPGで、最新作ではVRダンジョン探索モードが実装されて人気である。もちろん俺とキーファも大好きだ。


 <ゲームと一緒にすんなwwww>

 <え、マジで言ってんの?>


 コメントにかまうのも面倒だ。

 俺はさっさと自分のステータスを強化する。


 ========

 氏名:大屋 ケント

 年齢:27歳

 種族:人間


 HP:3800/4000(+200:ダンジョンポイントを2000消費します)

 MP:0/0

 攻撃力:1620(+20:ダンジョンポイントを1400消費します)

 ……

 ========


「それじゃあ配信始めるぞ! 俺のキーファをちゃんと見ておけよ。

 ……じゃなかった、見ておけもふ!」


 <そのキャラまだ続けんのかよwww>


「いけ~、ぱぱ!

 ごーごー♪」


 肩車したキーファが可愛くこぶしを振り上げる。

 ああ、これだけで元気いっぱいだ。


 俺は力強く地面を蹴ると、ダンジョン:ダーク・アビスの奥に向かって駆けだした。

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