第6話
ダンジョン配信総合スレ10378
678:名無し探索者さん
板の勢いもようやく落ち着いたな
679:名無し探索者さん
結局、昨日のドラおじの正体は不明なんだっけ?
680:名無し探索者さん
>>679
幾つか候補っぽいちゃんねるは貼られたけどなりすましだったしな。
681:名無し探索者さん
そいや、カナはまだ色ボケしてんの?
682:名無し探索者さん
書き込み過ぎてアカウントが凍結されたらしい
683:名無し探索者さん
草
684:名無し探索者さん
カナって不愛想だと思ってたけど可愛いとこあったんだな
685:名無し探索者さん
>>684
よくぞ聞いてくれました!!
686:名無し探索者さん
カナ厨は帰れ
687:名無し探索者さん
そんな事より桜下プロが無名の配信者を推してんぞ!
トップページ見ろ!
688:名無し探索者さん
は?
今日はカレンのイベントだろ?
689:名無し探索者さん
マジだって!
今すぐ見ろ!
690:名無し探索者さん
え……?
『ウワサのドラゴン動画の主、このチャンネルのスタッフかも!』
って?
691:名無し探索者さん
マジか!
ドラおじ見つけたのか!
692:名無し探索者さん
動画クリックしたらょぅじょが出てきたんだが
うっ……ふぅ
693:名無し探索者さん
通報した
*** ***
「きょ、今日はキーファちゃんと一緒に”ダーク・アビス”を攻略するもふ!
キーファちゃんのお友達のケンだよ!」
「……ぱぱ、さすがに無理があるよ」
着ぐるみの頭だけを被り、ぎこちなくカメラの前でポーズを取る俺に、ジト目のキーファから容赦なくツッコミが入る。
(しょうがねーだろ! 準備の時間が足りなかったんだよ!)
(ぱぱ、そのままのほうがカッコいいのに~)
(うっ……(感涙)!)
キーファのライフポイントを補充するため、ダンジョンポイントを急いで集める必要があった。だが、まだ本調子でないキーファに無理をさせるわけにはいかない。
いつもはキーファを目立たせるため、裏方に徹している俺だが、ここは身体を張るしかない。
だがしかし、かわいいキーファちゃんねるのイメージを崩したくない俺が取った苦肉の策がこれである。
<無理があるぞ、パパwwwww>
<なんで顔だけくまさんなんだよwwwww>
<キーファたんのジト目可愛すぎない? 新たな魅力か!!>
「しょうがないもふ! 急すぎて用意できなかったんだよ察しろもふ!
あとキーファのジト目が可愛いのには全面同意だ!!」
ナイスコメントをしたフォロワーに投げ銭しておく。
<視聴者に金投げんなwww>
<ていうか”ダーク・アビス”ってAAランクダンジョンだよな? マジで大丈夫?>
「え、そうなん?」
何しろ急いでいたからな。
ネットで適当にヤバくて映えそうなダンジョンを探しただけなんだが。
<去年Sランクパーティの”ブレイカーズ”がモンスターの大群に襲われて全滅したところだぞ? マジで危なくね>
<ていうかパパ、どうやって入ったの……>
「いやなんか、扉が開いたし」
<ねーよ!>
ウソだろ?
そんなヤバいダンジョンだったのか?
入り口のドアを押したら開いたぞ。ちゃんと施錠しといてくれよ……。
ズモモモモモ……
よく見れば、ダンジョンの壁からヤバそうな煙がしみ出している。
しかも悪いことに、このダンジョンはある程度モンスターを倒せないと出れないタイプらしい。
振り返ると、いつの間にか出口が消えていた。
「くっ……!」
「俺だってステータスを強化したんだ……なんとかするしかない!」
俺はここに来る前に立ち寄った、ダンジョン協会での出来事を思い出していた。
*** ***
「ダンジョンポイントをなるべく沢山下さい!」
ドサッ
ダンジョン協会ショップのカウンターに、封筒に入れた現金とアイテムが入ったズタ袋を置く。
「は、はぁ」
俺の勢いに困惑気味のショップ店員さん。
ショップで購入した人工物のダンジョンポイントはキーファのLPチャージには使えないのだが、俺のステータス強化には使える。
少しでも自分を強くし、キーファと一緒にダンジョン探索をするのだ。
「本日の公定レートは10ポイント当たり9千円(税別)になります」
カウンターの上に設置されたモニターに、現時点のレートが表示される。
けっこう高い。
「ここに100万円あるんでまず1000ポイントと……」
ごそごそ
ズタ袋の中からこぶし大の宝玉を取り出す。
「イフなんとかのコア……らしいんですけど、なんとかダンジョンポイントと交換できませんかね?」
ダンジョンポイントをLPにチャージできる装備を手に入れて、配信者を始める前は、少しでもキーファの身体に効くアイテムは無いかといろいろなダンジョンに潜っていた俺である。
「体を温めてマナを活性化できないかと思ったんですが、ちょっと温度が高すぎまして。いまはケトル代わりに使っているだけなんで、いらないです」
「……………………は?」
ぽかんとした表情を浮かべる店員さん。
それはそうかもしれない、いきなりケトルを買い取ってくれと言われてもな。
だが湯沸かしにしか使ってないとはいえ、それなりに苦労して手に入れたアイテムである。100ポイント分くらいになってくれればいいのだが……。
「え、は?
本当にイフリートのコア? マジで?
この10年でイフリートの出現報告は100体以下……そのうち倒せた事例は20例ほど……コアの回収に成功したのは」
「うえええええええええええっ!?」
何故か白目を剥いて立ち上がり、頭を抱えて叫ぶ店員さん。
ど、どうしたんだろう?
もしかして、イフなんとかは保護モンスターで、狩っちゃいけなかったとか?
「か、鑑定には時間が掛かりますので1週間ほどお待ちください。
ですが、最低A3ランクのアイテムですので、預り金代わりとしてダンジョンポイントをお支払いします」
ぴっ
俺のアカウントに、ダンジョンポイントが振り込まれる。
========
ダンジョンポイント残高:6,440(+6,000)
========
「おっ!」
思ったよりたくさん貰えたぞ。
「あざ~っす!」
俺は店員さんに手を振ると、急いで協会を後にした。
何しろクマの着ぐるみを探す必要(超重要)があるからな!
*** ***
……うっかりしていた。
ダンジョンポイントを買ったはいいが、ステータスにチャージするのを忘れていた。
「た、探索をする前にケンのステータスを強化するもふ!」
<お、マジでパパも配信に参加するんだな>
<そいや、パパのステータスみるの初めてかも>
「わくわく!」
何故か注目を集めてしまう。
ザコい俺のステータスを見ても面白くないと思うんだが。
(ん?)
コメント欄を見た時に気付いたが、現在の視聴者数が3000人を超えている。
(いつもより多いな……!)
とてもいい事である。
気分を良くした俺はステータス画面を開き……。
<え、ええええええええええええっ!?>
大量のコメントがコメント欄を埋め尽くすことになるのだった。
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