第6話 えれなの計略
えれなが約束しているという男性は、まず間違いなく今付き合っている男性であろう。えれなはどういうつもりなのだろう。
それまでの話がまったく飛んでしまうほどの、えれなの言葉に、湧川は、何をどうしていいのか分からず、こんな雰囲気を作ってしまったえれなに対して怒りを覚えたのだった。
それは当たり前のことであり、今、何を考えてもすべてが憶測でしかないということを感じると、まるで、
「豆腐の角で頭を打った」
かのような、痛みはないが、ジーンと響いてくるような感覚に、どう対応すればいいのか、思いつくわけもなかった。
しばらく、凍り付いたような時間が過ぎたが、その男はすぐに姿を現した。
彼女が付き合っている男性がいるというのは、風のウワサで聞いていたが、どこの誰なのかまでは、一切知らなかった。実際に現れたその男を見ても、初めて見る相手だったし、
「一体、こいつ、どこのどいつなんだ?」
とばかりに、知らないだけに、より挑戦的な気分になっていた。
「やあ、待たせたね」
と言って入ってきた男は、気さくそうに見えるが、その割に、堅実そうに見えるところが、
「いかにも、女性が好きになりそうなタイプだ」
と思うと、次第に腹が立ってきた。
「なぜ、俺にこいつを会わせるようなことを、えれなはするんだ?」
という思いである。
もし、現れた男が、もっといい加減そうな男で、別れるきっかけを湧川に与えてほしいと思っているのであれば分からなくもなかったが、この男を自分が判断するというようなタイプではないと思うと、今度は、逆を考えるようになった。
「まさかとは思うが、この俺の方が試されているのか?」
ということであった。
別れを言い出したのが、相手の男で、それを拒んでいるのが、えれなだとすれば、
「きっと、この男は、恋人関係を清算しても、友達としては普通につき合いたいと思っているんじゃないだろうか?」
と感じたのだ。
えれなという女性は、それほど器用な方ではない。好きになった人と別れたとすれば、その後も、友達として付き合っていけるかということになると、それは無理な気がした。
だから、彼女はきっと、その思いを盾に、別れたくないと言ったのかも知れない。
つまり、
「別れるのであれば、友達としての関係も解消する」
と言ったに違いない。
しかし、相手の男は、自分の立場からなのか、
「それは困るとでも言ったのではないか?」
もし、そうだとすれば、お互いにこじれたとしても、無理もないだろう。
湧川の方は、えれなの方の気持ちの方が分かる気がする。確かにえれなに対して贔屓目に見てはいるが、嫉妬という観点で考えると、
「別れた後、友達として、これからも」
というのは、本当に相手が好きだったのだとすれば、普通に考えれば、つき合っていくのは、絶対に無理である。
なぜかといって、別れた相手に、もし他につき合う女ができたのだとすれば、どうだろう?
それを友達として見続けることができるだろうか?
完全に気持ちが消えてしまっていれば別だが、一度は愛した相手であれば、どんなに気持ちが冷めてきたとしても、いざ相手に今まで自分がいたそのポジションに入ってこられるのを、我慢などできるはずもないだろう。
それを思うと、我慢などできるはずもない。
そう思うと、この男を自分に遭わせるというのは、
「この俺の品定めを、この男にさせようというのか?」
という疑念が湧いてくる。
確かに、えれなという女性は、そういう微妙な男心というものを分かっていない節がある。
というよりも、相手の気持ちを逆撫でさせるかも知れないということを考えないところがあるといってもいいだろう。
それは、誰のことを好きなのか、ひょっとすると、自分で分からなくなっている時ではないかと考えたこともあった。
しかし、それにしても、このやり方はあまりにもひどい。だが、もし、この男がさらにクズであれば、どうだろう。
クズというのは、頭の良し悪しではなく、その奥に潜む計算高さという意味だ。
そういう意味でいけば、この手のクズは、きっと頭がいいのだろう。
頭がいいと考えれば、この男がもし、本当にえれなと別れたいと思っているのであれば、えれなの性格を利用して、
「お前、他に好きな人でもいるんじゃないか? 俺がその相手を見極めてやろう」
と声を掛けたのかも知れない。
これがえれな以外の相手であれば、こんなことは言わないだろう。それだけ、えれなというのは操りやすく、下手をすれば、付き合い始めた時から、
「この女、別れを切り出した時、すがってくるかも知れないが、話しようによっては、意外と簡単に別れられる相手かも知れないな」
という計算ずくのところがあったのかも知れない。
それを思うと、えれなは、最初からこの男の手のひらの上で、ただ転がされていただけかも知れないが、えれなの方も空気を読めないところがあるので、因果応報とでもいえばいいのか、
「どっちもどっち」
ということであろう。
もちろん、すべては湧川の想像にすぎないが、かなりの確率で、
「想像が当たっているような気がする」
と感じているのだろう。
「私は、清水さとしというもので、えれなさんとお付き合いをさせていただいていた者です」
と、自分から自己紹介をした。
「させていただいていた?」
というところに引っかかったが、それには触れず、
「ああ、そうですか」
と、そっけなく受け流した。
言いたいことは山ほどあるが、言う言わないは別にして、言いたいことは最後に取っておこうと思ったのだ。
「今回、私がする仕事のプロジェクトにえれなさんが参加してくれたおかげで、仕事がうまく行ったので、そのお祝いをと思っていたんですが、彼女が急に、こちらで会ってほしい人がいるから、来てほしいと言い出しましてね?」
と言い出した。
「あれ? 何となく話が違ってきてはいないか?」
と、湧川は思ったが、確かにこれでは、別れ話とはまた違ってくるのではないか?
そう考えてくると、今度は別の考えが浮かんできた。
「別れるというウワサはデマで、そのデマを俺が信じたとでも、えれなが思い、俺が、えれなを狙っていると思ったので、釘を刺す意味で、清水という男を差し向けたのではないだろうか? この男が本当に付き合っている男なのかどうかは分からないが、彼女としては、俺に諦めてもらうのが目的だとすれば、誰であってもいいと思ったのかも知れない」
と感じた。
だとすると、やはり、この男はただ利用されただけなのか? えれなだったら、それくらいのことは平気でしそうだ。
「まさか、金で雇われたりなんかしていないだろうな?」
とまで思った。
いろいろ考えていくうちに、えれなに対しての憤りは激しくなっていった。
この男も、まるで縁切り屋でもあるかのような、あざといセリフを吐く男で、えれなの方も、もしこの男が、噛ませ犬だったとすれば、好きになるに値しない女だといってもいいのではないだろうか。
少なくとも、えれなという女は、まずは基本として、
「自分はモテるんだ」
という思いが根底にあるのだろう。
そうでなければ、ここまであざといことをするわけもない。あざといことをしようとするのは、自分に自信がなければできないし、最初のきっかけにあざとさを使うのではなく、最後に勝負に行く時に使うものだという発想を持っているということは、それだけ、
「自分のことを分かっている」
と思い込んでいるからに違いない。
自分に対して思い込みのある人は、それだけ、武器を使うタイミングも分かっているのであろうと思われる。
「では、えれなの武器というと何だろうか?」
と考えたが、武器と言えるようなものは冷静に考えるとないかも知れない。
それでも、誰かがいつも彼女を助けようとする。そこに何か秘密があるような気がする。
しかし、おかしなもので、その助けようとする人間の中に自分もいるのだ。
今から思えば、えればは、受付で目立っていて、営業の人間からは、たくさん告白されるタイプだった。
だが、実際に、会社につき合っている人がいるという話は聞いたことがなかった。
「では、この男はやはり、噛ませ犬だということだろうか?」
と、思うと、そこまで怒りを覚えないはずなのに、なぜかイライラしてくる。
バカにされた気がするからなのだろうが、何をバカにされているというのか、
「そうだ、分かり切っていること、冷静に考えれば分かるようなことを、この女は、相手が分からないと思うんだろうな? なぜって? それは、相手がバカだと思っているからなんだろうか?」
と感じるからだった。
好きな相手や、近しい人間ほど、ちょっと考えれば分かるようなことを、自分が分からないと思われると、これほどイラっとくることはない。
「そこまで言わなくてもいいのに」
と思うようなことを、露骨に顔に出して言ってしまったり、後で後悔することでも、その時は抑えが利かなかったりするのだ。
特に、
「今からやろうと思っていることを、先に言われると、腹が立つ」
という感覚である。
子供の頃に、この思いを誰もが一度は感じたことがあるはずだ。
「今からやろうと思っているのにな」
と、感じると、もう自分を抑えることができなくなる。
人によっては、この思いがトラウマとなって、怒りがこみあげてくるということも少なくはないはずだ。
湧川の場合は特にそうであった。
子供の頃というのは、人に気を遣うということはあまりない。むしろ、気を遣ってもらって当然だと思っているからこそ、
「子供だ」
と言われるのだ。
それだけに、自分の中で何が理不尽なことなのかも整理がついていないのに、自分がしようとすることを先に言われてしまい、それを大人の側のストレス解消に使われているということを、遠回しに感じるようになると、子供はそれをトラウマとして捉えるのではないかと思うのだった。
そのことを感じると、自分が考えていることを先に言われるのを、極端に嫌う人がいる。
えれなの場合が特にそのようだった。
湧川も自分にあることだと思っていたので、それだけを見ただけで、
「二人は合わない」
と言えることは明白だった。
それでも、こんな噛ませ犬のような刺客にならない男を送り込んでくるというのは、湧川も、
「いい加減、舐められたものだ」
と、感じたのだ。
だからと言って、自分がそんなに頼りになる男だというわけではない。だが、こんな露骨なことをされて、それに気づかない、あるいは、分かったとしても、怒らない人間だとでも思ったのか、それを思うと悔しいというか、情けないというか、好きになりかかっていただけに、こんな女だったのかと思うと、辛いというべきか、これでよかったとでもいうべきか、複雑な気持ちにさせられるのであった。
清水という噛ませ犬は、えれなといかにも親しそうにしているのだが、えれなが次第に鬱陶しそうにしているのが見え隠れしてきた。
「噛ませ犬のつもりだったのが、まるで、ミイラ取りがミイラにでもなったかのようなことなのか?」
と感じさせられた。
会話も実にぎこちなさそうで、噛み合っていない。
清水の方は、懐かし話をしているつもりなのだろうが、えれなの反応が鈍そうだった。
それはきっと、
「私だったら、そんなことはしない」
あるいは、
「そんなところにはいかない」
というようなことを、あからさまに清水が言ったからだ。
少々際どい場所を、
「こんな時に口にするなんて」
と思うようなことを露骨にいうからだった。
しかし、もしそれが、えれなから、
「少し、大げさに言ってもいいわよ」
と、事前に言われていたとすれば、納得できないこともない。
だが、それだって、本人がひいてしまうほどの話をしているのだとすれば、それは、えれなの人選ミスであり、自業自得と言ってもいいだろう。
もちろん、あくまでも、清水という男が、
「噛ませ犬だ」
ということであればの話であるが、果たして真相はどうなのだろう。
それでも、ここまでお互いがうまく行っていないのに、いまさらただの友達なとと言っても通用しない。たたの友達が行くようなところではないところを、生々しく言ってのけるのだから、下手をすれば、この男、今までにも噛ませ犬の経験があるのかも知れない。
ただ、それにしては、あまりにもへたくそではあるが……。
そんな状況において、まだこの男は、何かを言おうとしている。
「空気が読めない」
という意味では、この二人はお似合いではないか。
と思えてくると、
「まさか、この男、噛ませ犬なんかじゃなく、本当に付き合っているんじゃないか?」
と思えてきた。
だとすれば、えれなの方が別れたいと思っているとすれば、湧川を新しい彼氏と見立てて、清水という男に諦めさせようとしているのかも知れない。
「だとすれば、この俺こそ噛ませ犬なんじゃないか?」
と思えてきた。
もし、そうだったら、こっちとしてはたまったものではない。まったく打ち合わせがないどころか、話すら聞いているわけではない。一体、どういうつもりなのだろうか?
確かに、えれなの相談ごとには、結構いろいろ聞いてきてあげたつもりだったが、それだけで飽き足らず、利用することを考えたのだとすれば、こんな屈辱はあったものではない。
噛ませ犬に噛まれたとしても、自分が噛ませ犬にされたとしても、どちらも、ありえないことだった。
「この女、恐ろしい女だ」
と考えた。
ここまで思うと、もう迷うことはなかった。その後何をどう感じたのかなど覚えていない。何とかよく、その場を最後まで怒りもせずにいることができた自分が信じられないほどで、それ以降、えれなに連絡を取ることもなかった。
えれなの方からも連絡を取ってくることはなかったので、どちらにしても、湧川は、利用されたことには変わりない。
「何てことだ」
吐き捨てるように言って、えれなのことを忘れ去ることができたのだった。
それは、二年前のことで、すでにそのことは忘れてしまっていたのだ。
湧川は、性格的に、熱しやすく冷めやすい性格だった。
しかし、そのことがあってから、生活のリズムがしばらくおかしくなっていた。今までであれば、事なきを得ていたようなことでも、ちょっとしたトラブルになってしまったりと、
「今は運が向いていないのかな?」
と思っていたが、それは、運というよりも、歯車が狂っているだけだったのだ。
逆に言えば、一つ歯車が噛み合えば、すべてがうまくいくということで、まるで、バイオリズムの一つ一つのずれのような感じだった。
だが、これは、湧川に限ったことではない。誰もが、バイオリズムのすべてが、そして、歯車がきれいに噛み合うわけではない。少しずつずれているからこそ、ちょっとずつ欠陥はあるが、何とかうまく回ってきているのだ。
すべてがうまく行っている間など、そんなに長く続くものではなく、必ずどこかに無理がくる。そう思うと、
「うまく行っている部分を何とか伸ばすか?」
あるいは、
「うまく行っていない部分を、ごまかしながら、被害を大きくしないように心がけて行動するか?」
ということの二択になるだろう。
これは、減算法、加算法の考え方にも関わってくることでもある。
減算法というと、テストなどで考えると、点数的に合格ラインが決まっている場合などは、
「どの問題を優先するか?」
という、テスト戦略に関わってくるものであろう。
逆に加算方式は、合格ラインを考えるというよりも、合格人数が決まっている場合で、
「何点取れば合格するのかが分からない場合は、逆に、解ける問題から片っ端から解いていく」
ということで、こちらも結局は、戦略とやり方は同じであるが、プロセスによる考え方が違うことで、
「いかに歯車を噛み焦るかが変わってくる」
のだった。
また、この考え方は、
「長所と短所」
の考え方にも精通している。
「長所をより伸ばすか?」
あるいは、
「短所を、いかに補うか?」
という意味で、攻守の問題と言ってもいい。前者が攻めであり、後者が守りである。
しかし、そもそも、
「長所と短所は紙一重だ」
と言われるではないか。
もっと言えば、前者は、加算法に繋がるものがあり、後者は、減算法である。
将棋などで、一番隙のない布陣は、最初に並べたあの形だという。あれこそ、減算法の極意のようなもので、守りを崩してまで攻めなければ、勝ち目はないということになる。
「攻撃は最大の防御」
という言葉は、その裏返しだといえるのではないだろうか?
そんな状態だったので、本当はあまり目立った動きを見せない方がいいのだろう。
「天中殺の時は、動いてはいけない」
というのを聞いたことがあるので、しばらく静かにしていた。
だからと言って、生活のリズムを止めてしまうわけにはいかず、やはり、
「被害を最小限に」
という考えだったのは当然ではないだろうか。
だが、こうなった原因が、あの時のえれなの、
「余計なこと」
だったことが悔しかった。
「もう、あんな女とかかわりになどなりたくない」
と思っていた。
今から思えば、少しでも、いい女だと思った自分を情けなく思うくらいだ。やっと2年が経って、生活は完全に元に戻ってきた。迫田につかさを紹介してもらえる機会が巡ってきたのも、
「きっとバイオリズムが好転してきたことが原因ではないか?」
と思うようにあったのだった。
湧川は、つかさと、つき合うことにした、
と言っても、お互いに、二の足を踏んでいるようだったので、
「だったら、お試し期間というのではどうだい? 体験入店みたいなものさ」
と、迫田は言って、少しいやらしい笑みを浮かべた。
他の二人はポカンとしていたが、一人だけ、その言葉に反応したのか、何とつかさだったのだ。顔を赤らめて、下を向いてしまった。その表情を、迫田は見逃さなかった。
そして、すぐに、
「私はいいですよ」
と、これも意外なことに、最初にOKしたのも、つかさだったのだ。
「そっか、それなら、後は湧川だけだな」
と迫田に言われて、
「ええ、いいですよ」
と、湧川も二つ返事だった。
湧川も、つかさのことを気に入っていた。少し気が強そうなところもありそうだが、変に人と同じでは面白くない。どこか変わったところがある方が、お互いを知るのに、いいような気がした。
つかさは、ニコリと笑い、湧川を見た。その日初めて、つかさが湧川をまともに見た瞬間だった。
「つかさという女性は、本当に気を許せると思った人でなければ、まともに顔を見ようとはしない人なのかも知れないな」
と、湧川は感じ、その相手が自分であることを光栄に感じていた。
この思いが、湧川を二つ返事にさせたのだった。
二人とも最初から問題などなかったのに、煮え切らなかったのは、それぞれで事情が違っていた。
湧川の方は、
「簡単に了承しないのは、えれなのことがあったからだ」
と思っていた。
あの時、いろいろ考えさせられ、結局。自分を試すようなことをしたえれなが、正直許せない気持ちになっていたからで、それがトラウマになっていたからだった。
つかさの方は事情が違って、意識をしたのは、つむぎのことだった。
「もし、私と、湧川さんがつき合うようになるのはいいけど、いくらお試しとはいえ、関係がこじれてしまうと、つむぎのお母さんが、迫田さんの会社に勤めているということから、何か私とつむぎの間でも、ぎこちなくなってしまったら困るわ」
という思いが一瞬、頭を掠めたからだった。
つかさも、湧川も、お互いに嫌な相手だとは思っていない。
特に湧川とすれば、えれなのような女性を見てきたので、
「あの女に比べれば、全然マシではないか」
ということだったのだ。
ただ、それともう一つ引っかかっていたのが、
「つかさは、学校を卒業して、ある病院に入ったのだが、そこを一度辞めてから、また別の病院に勤め出した」
ということだった。
その時にいろいろ事情があったのだが、なるべくなら言いたくないと思っていた。
ただ、
「分かってしまったのなら、その時はその時、私が身を引けばいいんだわ」
と、つかさは思った。
つかさという女性は、気が強いのは間違いなさそうなのだが、
「相手に尽くす」
ということに関しては、
「右に出る者はいない」
と言われていたようだ。
そんな性格でもあることからも、病院を辞めた理由や、辞めてから次の病院までの間のことは、なるべくなら知られたくないと思っていた。
しかし、逆に、
「つかさのことだから、人に知ってほしいという気持ちにもなりかねないわ」
と、つかさのことを誰よりも知っている、つむぎは、心の中でそう感じていた。
もちろん、他の人は誰も知らないが、つむぎだけは知っていた。逆に、
「奈落の底に堕ちることがなかったのは、つむぎがいてくれたおかげだ」
と言ってもいいだろう。
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