ここに宝物がある

グリムの入り口

「グリムの入り口って知ってる？」

「知らな～い」

「東京の夜。人通りが少ない場所に真っ白な兎が現れるらしい」

「え～！　可愛いじゃん」

「確かに可愛いけど、絶対に追いかけたらいけないよ。その兎は心が疲れた人の前に出てきて、追いつかれないように、でも逃げ切らないように前を歩くんだけどね。ある場所に行くと消えてしまうんだって」

「ある場所？」

「そう。草原の真ん中に大樹があってね。そこは満月がずっと出てて、直ぐに逃げなかったら真っ白な少女に話しかけられて、最後には入れ替わってしまうんだって」

「聞いてる感じは綺麗な場所だけどな～」

「まぁ、美しいものだけが大切じゃないって言う教訓系の作り話だと思うけどね。それこそ、呪われた宝石みたいなよくあるやつね」

「ところでさ、ミクは明日から仕事辞めるんだよね？」

「うん。辞めてからカウンセラーになろうかなって」

「えぇ～。この仕事が天職って言ってたのに、同機が居なくなって悲しいけど、頑張ってね」