ここに宝物がある
星多みん
真っ白なウサギを追いかけて
星々のように散らばった営みがある高いビルが遠のいて、両端に壁紙ある細道を肩をぶつけないように通る。
そこは大きな草原で中心の一人ぼっちの大樹は月に照らされて、これを見た人は幻想的と思うだろが、私はそんな景色を堪能するよりも別の事を考えて首を傾げていた。
追いかけていたはずのウサギが居なくなっていたのだ。まるで最初から存在しないように消えて、私は何かの童話を思い出していた。
背筋から全身にゾクゾクを楽しんでいると、大樹から「いらっしゃい」と大樹から声が聞こえたので、いよいよ不思議な世界に迷い込んだと考えるのだが、それは違うようで月明かりに紛れて紛れ込んでいた暗い緑の服を着た白髪の少女が話しかけただけだった。
「こ、こんばんは」
「こんばんは。お姉さんも白いウサギについて来たの?」
おどおどしている私と対照的に少女は落ち着いているのか、大樹から伸びている根っこを枕の代わりにして、こちらに寝返りをした。
「お父さんとお母さんは?」
私はその少女を少し見つめてから、思い出したかのように時計の針が十二時過ぎている事を確認してから聞いた。
「大丈夫。私のお家はここから離れてないから」
少女は微笑みながらそう言うと、こっちに来るように手招きをした。私は何かされるのでは無いかと全身に力を込めるも、立っている事に疲れているのも事実であり、結局は少女の小さな体を見てから少し離れた根っこに腰かけた。
「すごい警戒されてる~」
私は左耳から入った無邪気な言葉に反応して、少女と顔を合わせるのだが、瞳を閉じた白いまつ毛が見えて本当に見えているかと疑問に思うが、糸目なだけで見えているのだろうと、気付くと視線は上に上に自然と満月に移動していた。
それから十分くらいだろう。優しく撫でる夜風が、神秘的で愛おしく思える青白の月明かりが、何も言えない感情にさせると、いつの間にか少女の頭が膝に乗っており、小さな息と相まって兎と触れ合っている気分になった。
『可愛らしい寝顔だな』
そう思ったから、動いて起こすのは申し訳なくて、この今がずっと続いて欲しくて。明日が嫌で、今を無駄にしたくなくて、その心が時が経っていても止まっていると思いたくて。そんな答えも出ない虚しい思考をしていると、いつの間にか知らない少女は頬に大粒の涙を流していた。
「お姉さんは何になりたいの? 私は自分で考える立派な大人になって、自由になって、それから……」
「それから?」
「それから、色んな人を救いたい。こんなはずじゃなかったって人をね。そう言う人って石炭みたいでね」
「どうやって救うの?」
「それはまだ分かんないけど、私が少し話してれば少しだけ輝くんじゃないかな?」
いつの間にか起きていた少女は自分の肌よりも白い歯を剝きだすと、愛された子が見せる眩しい笑顔をする。
「私は本当は君みたいな子になりたかった。誰かに愛されたかった、自分を見て欲しかった」
子供に言ったらいけない、見せてはいけない。こんな汚い世界を見せるのはダメなのだろうが、我慢をしないで私が大人になる過程を全て話した。
「だから、私は出来るならずっと何も見たくない。君になりたい」
私のその声が徐々にフェードアウトしていたのは、少女の赤い瞳がハッキリと見えた戸惑いからだろうか、涙が少女ではなく自分のだったからだろうか、それとも怪しい宝石に魅入ってしまったからだろうか。
何かの草が風に吹かれて鼻に当たると、私は目を覚ました。
どうやら私は泣き疲れて寝ていたらしい。周りを見ると少女は居なくなって、片耳だけが熱くなっていた。スッキリした私は帰ろうと芝生とコンクリートの境に股を掛ける。
その瞬間、私の視点は低くなって頭からの照らす太陽とコンクリートから蒸発しようとしている水溜りが季節を感じさせたが、手足が焼かれるような感触が遅れてくると高く跳ねて水溜りに着地する。
足元には白い毛並みにルビーみたいな瞳の兎が青空を背景に反射しており、それに驚いて私は後ろに急いで引き返す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます