第21話
と、言うことで狩りに来ました。
「どれ狩るの?」
「あそこにデカい動物がいるだろう?あれだよ」
ツネが指を指す先に熊が一頭歩いている。
距離にしておよそに100メートル、目と目があってちょっと気まずい。
お互いに沈黙の中どう出るかを伺っている。
しかしその空気を一切読まないのがミラ。
「わかった」
一言だけ残してクマの背後へ、気がついた時にはクマはこの世から去っている。
「狩ったよ」
「えっ?」
ドスンと力の抜けたクマが倒れる。その傍らでブイサインをするミラ。
インパクトのある絵だと思えど恐怖は感じた。
自分より小さなムスメが遥かにデカい熊を瞬殺したのだから。
「あっ、ああ…」
こりゃ力の振るい方も教えなきゃね。
この子をめぐって争いだって起きかねない。
「どう?どう?私やったよ。お母さん」
無邪気な笑顔を咲かせてアピールをする、それを無下にできるほど残酷な性格はできやしない。
なのに素直に褒められない。
なんでなのだろうかな…上手く伝えられる気がしないね。
「…すごくなかった?私。それとも余計な事だった?」
思ったより長く考え込んでいたのだろうか、満足気な顔はいつの間にか不安に塗られて落ち込んでいる。
「そんなことはないよ、でもね…」
言葉につまる、この先なんて言えばいいのだろうか強すぎる力を振るいすぎるな、と言えばいいのだろうか。それとも振るう相手を選べ、あまり人に見せるな、分からない。
どれを言うにしても最も納得のいく説明が思いつかない。なぜ?と言われたあとの説明がまるで出てこない。
純粋にダメだ、と言えば必ず反発が返ってくる。それを確実に答えられなければそれだけで小さな争いの種になることを知っている。
「お母さん?」
呼べ、とある種の強制をさせたのにも関わらず素直に自分をお母さんと慕い呼んでくれる事が愛おしい。
自分が産んだわけでも育てた訳でもないのに、家族になってくれた事が嬉しいと思えば思うほど、にも言えやしなかった。
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