第16話
産まれる、ということはせずただそこから発生したに過ぎない概念に父親と、母親と、そう呼ぶ相手ができた。
だけれどわからない、父親ってなんだろう、母親ってなんだろう。
どう思えばいいのだろう、どうすればいいのだろう、どんな顔を、どんな感情を出してその人たちと過ごせばいいのだろう。
「よし、じゃあ行こうか」
父ことルイが全ての土葬を終え次へと動き出す。
「「「はーい」」」
それに返事をしてついて行く娘息子たち
そしてそれを眺めては歩き出すこともしないミラ。
ここでお別れをするのだとばかり思っていた。
「何をぼったってんだいミラ、お前さんも一緒だよ」
「えっ?」
キョトンとするミラに対してため息をついて呆れるツネ。
「何を言うかと思ったらお前さんは…一緒に行くに決まってるだろう?もう家族なんだから」
「か、ぞく?私が…」
「家族の意味は知っている、血の繋がりのない2人がつがいになって子を産み育てる、その両親と子の関係に付けられた名前、だから私は違う。私は誰からも産まれてない、生まれてもない。」
「よく喋るかと思ったらんな馬鹿なこと言ってるよ…」
「確かにそれも家族だよ、けれど人間って言うのはね、そんな繋がりがなくても家族になれる不思議な生き物なんだよ」
ツネの後ろからルイが教えてくれる。
その言葉は温度をくれた、陽だまりのような心地よい感触だった。
「家族になってくれるの?じゃあどっちがお姉さんが決めないとね」
嬉しそうに右の手を握るルナ。
「私たちは双子だからお姉さんになったらミラが1番上だね」
左の手はカナが。
それぞれ小さくも生命を持つものが生きるという強さを教えてくれる。
「きっと僕にとってはお姉さん、だね」
少し恥ずかしそうに、けれど嬉しそうにタカが言う。
その言葉は祝福を与えてくれた。
そしてその家族から、ここにいてもいい、と存在する場所と意義、意味、理由をくれた。
それを貰った上でそれでもなお私は赤の他人だ、とそう言ってのけられるほどミラも人を知らないことはなく。
「ふ、ふつつかものですが、お世話になります」
どこで学んだのかそんなセリフを、少し照れながら笑いながら告げた。
そうして家族となった。
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