第12話

どれだけ成長過程が始まりだろうと、終わりだろうと本能が叫ぶ、自分はもうダメなのだ、と。

その声を聞いてしまった、偶然そこにあったものに全てを託した、そうして今ここで、託した意味が叶った、願いが届いた。

自分のことを殺しに来た、という恐怖から生まれた小さな願い。

生きるでもなく、復讐するでもなく、ただひたすらに家族への感謝。

「それでね、おねがいしたの。わたしをあげるからわたしのかぞくをまもってくださいって」

「なんで…お父さんは…俺たちは…ミアさえ生きててくれれば…」

子が親のために何かを願う、それ自体は親孝行だ、けれどそのために自分が死んでしまっては、これ以上ない親不孝。

「おとうさん、おかあさん、おねえちゃん、おねぇちゃん、おにちゃん、ありがとう。ごめんね。」

ーよかった、ちゃんといえた。

太陽のような笑顔で告げる。

「ああぁ、ああああ!」

「待って!ミア!まだ…まだ私たち…なにも」

「行かないで!」

「待ってよ!」

「ねえ!まって!」

ああ、もういってしまうのだろう、これが最後なのだろう、そう気づかせるには十分な言葉。

その場に泣き崩れる家族。

「最後が…最後に…ごめん、なんて、そんなことを別れの言葉になんてするなよ!」

ミアの身体が光る。その光はゆっくりと上へ、上へやがて空へ、宇宙へ、星へ。

その場に残るは各々の慟哭。


もしもを、この場で何度考えただろうか。

奇跡という実態のない何かを何度願っただろう。

もう、顔はあげられない。


「あ、あれ?」

下を向いて泣き続ける父の、母の、カナの、ルナの、タカの、各々の耳に響く。

空耳だろうか、こうあって欲しいと強く願うことで起きた幻聴だろうか、けれどそれに縋らずにはいられない。

「……………………あれ?」

ミアがいた。

目の前に。

父の、母の、カナの、ルナの、タカの目の前に、がいて、ミアがいた。

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