第8話
その集落にて、学んだこと。
他種族や同種族に攻撃を仕掛ける割にこの生物は絶滅しない。
大昔からほぼ形が変わらない黒光りとある虫を思い出す。
「やっぱりよく分からない」
風に吹かれて飛び散る塵を眺めても面白さは分からないままだった、しかしどこかでモヤモヤとしたものが無くなったような感覚はあった。
「い、今のは?」
ふと後ろで驚きの声。
振り返れば磔にされた男と座り込む数人がいた。
「磔が1人、小さい女が2人、男が1人、女が1人つがいとその子供か」
「あなたも私たちを殺すのですか?」
その中の母親らしき人に問いかけられた。
「殺す?殺すとは?さっきのあれなら違う、あれはただ魂を抜いて身を朽ちさせた、元に戻しただけ。あなた達には何もしない」
「そうですか…」
命は助かってもどこか煮え切らないのは何故だろう。
「嬉しくないのか?助かったのに」
「ここまでボロボロにやられて、周りのみんなが死んだって言うのに私らだけ生き残ってもね、どうしていいのか分からないよ」
本来助からなかった命が助かったことで嬉しい出来事のはず、なぜ?
「やはりよくわからない」
「お母さん!お父さんが!」
その子が叫ぶ、突然に。
よく見れば傷だらけだった、縄で括り付けられているとはいえヤツらが遊びで投げた槍がそこかしこに刺さっている。
「その人、大切?生きてたら嬉しい?」
「何を言って…そ、そりゃあ嬉しいけど…今すぐにでも死んでしまいそうな人の前でそんなこと言われるとね…」
「嬉しい?ならそうする」
その一言で父親は地面に顔から崩れ落ちる。縄も磔にに使用していた木も塵になって空へ。
「お父さん!お父さん!」
「おとしゃん!」
子供らが涙ながら駆け寄る。
動かない背中にすがりついて泣きじゃくる。
対してそこまで成長していない子供らでも身内の、父親の死には気がついた、そしてそれを悲しんだ。
「…ん?一体何が…?」
すがりつく子供の重さを感じながら、父親が動く。
「「「えっ?!」」」
驚きのあまり目を丸くして離れる。
「どうしたそんなに泣いて、もう怖くないぞ、ここは天国だからな」
死んだと思ったのか途端にそんなことを言い出した。
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