第7話

知らないから、知りに行く。

知ろうとして、歩み出す。

「ねえ、あなた達はどうして同族で殺し合うの?」

「ああ?誰だお前」

「殺したあと、その人たち、食べるの?」

「何言ってやがんだこいつ、頭悪いのか?」

「おい、見ろよこいつ女だぜ」

「ちょっと小さいがこの際いいだろこれで」

「なんだ、俺ら今日ツイてるな!」

「質問をして姿形を見せたら勝手に盛り上がった、この人たちはなんで騒いでいるの?」

「教えてやるよ、特別にな」

やたらと大きな男が答える。

「こいつらを殺したところで食べやしないよ、ただこいつらが持ってるもんが欲しかった、だから奪うついでに殺した、殺されるのはこいつらが弱いからだ、分かるだろ?この世は弱肉強食、弱いやつは生き残れねえんだよ」

「そういうことだ、そしてそんな俺らの前にノコノコと顔を出したお前もこれからこうなるって訳、まあ殺す前にお前で楽しむけどな!」

言い終わったと同時にヤツらは笑う。

「なんで笑っているの?」

「そんなん楽しいからに決まってるだろ、楽しけりゃ笑う、頭にきたら怒る、悲しけりゃ泣く、人間として当然の行動だ」

「人間…?あなた達生物の名前?」

「あー…なんだお前、さっきから何も知らねえみたいな反応ばかりしやがって、イカれてんのか?さすがにちょっと怖いぞ」

「そう、じゃああそこの人は何をしているの?」

ミアが指さすそこには木に磔にされた男に向かって目をつぶって槍を投げている人がいる。

それを見て喜ぶ人、笑う人、泣き崩れて叫ぶ人、下手くそ!と叫ぶ人がいた。

人間的当てなる趣味の悪い遊びである。

「あいつは敵だからな、敵で、的なんだよ今は、さっきも言ったろ?弱いやつが悪いって、負けたんだから何やってもいいんだよ、それが勝った奴の権利だ」

「わからないけどわかった」

「お前も大人しくしてりゃ痛くはしねえ、大人しく俺らの玩具にでもなれ、そうすりゃ少しは地獄を見なくて済む」

「地獄って、なに?」

「おい、押さえろ、暴れさすなよ」

後ろからヒョイと持ち上げられたと思ったら、そのまま縄で拘束された。

「なんだ、なんの抵抗もなしか、それはそれで面白味がないな」

「もう何も答えてくれないの?」

「これ以上はな、答えて欲しけりゃ後でだ」

「そう、じゃあもうあなたたちに用はない、さよなら」

その一言が破壊の一手。

「お前、この期に及んで無事で済むと」

途端、ミアを押さえていた男が燃えた、燃えて塵となって消えた。

「は?」

「私は遊んだりはしない、ただ終わらせるだけ」

一瞬にして辺りから人が消えた、対峙する男を1人残して。

「お、お前…何しやがった!俺の仲間をどこへ!」

「わかんない、さっき言ってた地獄じゃない?」

「化け物か!お前!人を一瞬で消すやつなんざ人間じゃねぇ!ふざけんな!」

途端にあわて怒鳴る、血色の良い顔が既青白い。

「え?どうして?」

「そんな卑怯なことがあるか!堂々と闘うなら闘えよ!」

「堂々、ってなに?」

人の当たり前、と人ではないものの当たり前の差、常識の差が嫌な響き方をした。

「非常識なことしやがって!」

「?なにか悪いことしたの?私」

「クソッタレがぁぁ!」

男、渾身の右ストレート。

腕が塵と化す

「クソクソクソクソクソ!」

「なんで怒っているの?」

「てめえ!」

「あなたが弱いのだから、仕方がないでしょう?えーと、なんて言ったっけ、弱肉…なんたらって」

その言葉で、意気揚々としていた男は呆気なく膝を地につける、戦意の喪失。

あまりにも早いあきらめに思わずため息が出る。

これでは雑に片付けられた負け犬のようだ。


「弱い人に何をしても面白くはないのね」

塵に向かってつぶやく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る