第6話

雑に、けれど根深く嫌な感情を無理やり知った。

その光景は脳裏から離れず。

そして未だその場から動けず、目の前には崩れ落ちて動かない少年が血の池の中心にいるばかり。

「………」

何を思うでもなく、何を言うでもなく。

いつの間にか辺りが静まり返る、争いが終わった。

攻めた側が勝って、守っていた方が負けた。

大地を濡らす血の上で笑っているのは勝者だけ。

「なあ、コレどうするよ」

「せめて俺らの手で手厚く弔ってやろうぜ」

負けた側の死体を見てヤツらは言う。

しかしそこに慈悲も敬意もなく

「首落としてその辺に晒そうぜ」

「やめろよ腐ったら虫が湧くだろ、あれ本当に汚ぇんだぜ」

「それもそうだな、んじゃどうすんだよ、燃やすか?」

「わからん、とりあえず後で考えようぜ」

「あとあいつらの処理もあるしな」

「あいつら?」

「負けたヤツらの生き残りだよ、まだ何人か生きてんだよ」

「どうする?殺し合いでもさせる?それとも俺らで遊び殺す?」

「趣味悪いな…それはそれでいいけども」

「とりあえず集めろ、逃げられねぇようにしとけよ」

「「「了解」」」


「…え?」

今まで見てきた生物が取らなかった行動、殺し合って、負けた方から何もかも残酷に奪う、虐げる

辱める、陵辱の限りを尽くさんとする。

「なにを、言って…」

理解が及ばず、処理が間に合わず、データベースにそんなものは存在しないと拒絶する。

「なんで同じ生物同士なのにそこまで残酷になれるの?」

分からない、解らない、判らない。

「それでもせめて、この子だけは星に還す」

そうして、その少年はそこで朽ち果てず、星に還る。

「いかなきゃ、あの人たちの所へ」

判らないことを判りたいと願う彼女は集落の方へ、歩みを進める。

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