第4話

侵略された、と思う怒りは脱力し、刺しても死なぬという異常は転じて恐怖へと、理解出来ぬものを忌み嫌う、もはや本能である。

あるいは人知を超えたものとしての崇拝の対象か。


「ねえ、この私に刺さったやつ何?」

それに対して未だ答えはなくただ重苦しい沈黙が続くばかり。

しかし確実にその集落は2つに割れた。

1つは同じ人間ではないモノへの恐怖と嫌悪、そこからくる排除的感情。

1つは人智を超えたモノへの尊敬、崇拝、いわゆる縋り付きである。


「なあ、コレどうする?」

「あんなもん殺してしまえ!でなければ追い出す他ない」

「そうだ!あんなんがいたら俺らに何があるかわかったものではない!」

「そうよ、いつ私たちが攻撃されるかも分からない、そんなのと一緒にはいたくないわ!」


「いや、これはチャンスかもしれない、コレがあれば他の集落から攻撃されない!」

「そうね、盾にできるもの」

「貧しいこの集落に降りてきた神様かもしれないし、いてくれるのならいてもらいましょう!」


ミアには何を言っているのかまるで分かりはしないものの、どちらも共に自分にとって嫌なことを言って、考えて争っている、と感覚的な理解をした。


「あ、あの…争わないで…私どこか行きます」

そう言って去ろうとする。

争えばまた終わってしまう、それを何度も見てきた。

そうして自分が人前に姿を現したことが間違いであったことを知る。

「あぁ、そうだいなくなってしまえ!」

「2度と来るなよ!」

「得体の知れないやつは近寄るな!」

言語の暴力とそれに伴って飛ぶ石、槍。


「お待ちください!行ってはなりません」

「どうかここにいてください!」

「我らをお守りください!見捨てないでください!」

「もし行くというのならば我らも共に行きます!」

異様な執着には気持ち悪い、という感情すら覚えさせた。

「…うぅぅ………」

あたまがぐらぐらする

めがうるうるする

むねがずきずきする


ーーーきもちわるい。


それを境にその場から霧散した。

字のごとく。

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