episode2
「はぁ」
翌日の昼休み、僕は騒がしい教室で一人、気づくとため息をついていた。
ふと、机の上に置いてあるスマートフォンが目にとまる。
いつもはスキあらばスマートフォンでSNSをチェックしてるのだが、今日はそんな気にもなれない。
昨日茜に言われた事が頭によぎり、中々スマホに触れられずにいた。
あの人、恐すぎ…。
アカウントが見られていると思うと、正直ゾッとする。
もちろん、自ら公開しているものだから責任は僕にあるのだけれど…。
というか、これでちゃんと断れたのかな。
昨日はあのまま走って家に帰ってしまった。
茜の顔がふと思い浮かぶ。
名家のお嬢様って言ってたけどなんか、想像と違ったな。
というか、何者なんだよ…。
僕はもう一度深いため息をつく。
と、その時。
教室のスピーカーから呼び出し音が鳴り響いた。
『2-1 生徒会副会長の小笠原蛍太さん。生徒会長の久世茜が呼んでいます。至急、生徒会室までお越しください。繰り返します…』
僕はビクリと身体を震わせた。
教室中に昨日聞いた茜の声が響き渡る。
まじか…
行きたくない…。
そうだ、聞かなかったことにしちゃえば…!
「ん?小笠原呼ばれてるぞ」
「え、小笠原くんって副会長だったの!?」
クラスメートの視線が一気に集まった。
僕の浅はかな考えもすぐに消えていく。
「あぁ…。うん…。じゃあ」
作り笑顔と曖昧な返事で僕は教室を出る。
…あぁ、なんでまた。
ふと、生徒会室とは反対側へと続く廊下が目に入った。
あ、そうだ。迷ったふりして、このまま別の教室に逃げちゃえば…。
僕は一つ、頷いて廊下へと足を踏み入れる。
が、その瞬間。
「小笠原さん、反対方向ですよ?」
聞き覚えのある、丁寧な声が後ろから僕を引き止めた。
まさか、そう思い恐る恐る振り向いてみる。
「…うそ」
そこには上品そうに、ニコリと微笑む茜の姿があった。
「今後のことで色々とお話があるのですが、今大丈夫ですか?」
「え、いや…」
どうやって断ろうかと悩んでいると、
「あ、久世会長だ」
「いつ見ても、上品だよねぇ。可愛いし」
「一緒にいる人誰だろ?」
「さっき放送で呼び出しかかってた人かな?副会長って」
「え、そうなんだ。あの人副会長なんだ」
「会長と一緒にいる人副会長らしいよ」
「え、あの人副会長なの?知らなかったー」
茜が有名な生徒会長ということもあり、ギャラリーがどんどん増えていく。
ていうか、このままだと僕が副会長って定着してしまう…!
「と、とにかく生徒会ですよね?分かりました」
僕は早くこの場を去りたいという思いで、駆け足で生徒会室へと向かった。
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