第2話 手がかり

ガチャ

白く輝くドアノブをひねって扉を開ける。

白色で統一された清潔感のある部屋。本棚からクローゼットまで見慣れたいつもの美月の部屋のまんまでつい、いつものように「美月ー?」と声を掛けそうになる。

ここに美月はいないのに。

きれい好きの美月の部屋は、いつ来てもきれいに整頓されている。

何か手掛かりが無いかと思って来たけど、一体何から手を付けていいのか…。

頭を抱えていると、机の上にあった一冊の本が目に留まった。

「あ、これ…」

それは以前、私が美月から借りた本だった。確か高二の秋。突然美月が勧めてきたものだったから覚えている。相当気に入っていたのだろう。美月がそんなことをしてくるのは珍しかった。

「なつかしいなぁ」

そんな思い出に浸りながら分厚い本をなんとなく手に取って、めくっていく。

でも、本当に美月はどこへ行ったのだろう。卒業したばかりの学生に行くあてなんてあるのだろうか。そもそもどうして…。

ぎゅっとくちびるをかんだ瞬間、ヒラリとめくったページから何かが落ちた。

「紙…?」

それは小さく折りたたまれたA4サイズの白い紙だった。

もしかしたら、なにか重要なことでも書いてあるのかもしれない。

胸をドキマギさせながら、そっと紙を開く。

だけど…。

「なんも無いじゃん…」

白紙だった。

書いた筆跡も何もない。真っ白すぎるただの紙だった。

しおりにでも使っていたのだろうか。

可能性の消失に小さくため息をつきながら、紙を折れ目の通りに再び折りたたむ。

その時、視界の端に一本のペンが目に入った。

「これって…」

それは私が誕生日に美月にプレゼントしたペンだった。

一見なんの変てつも無いように見える、花柄のキャップつきペン。

だけど、これで文字を書くと、紙自体には何も書いてないように見えるが、キャップについているライトを照らすと、書いた文字が浮かび上がるのだ。

「ん?じゃあもしかして…」

ペンのライトを付けて、さっきの白紙に照らす。

すると、光に照らされて図形と文字が浮かび上がってきた。

「本当に見えた…!…これって地図?」

浮かび上がってきたのは地図らしきものだった。

見覚えのある名前がいくつか並んでいる。

…でも

「ここ、空き地じゃなかったっけ?」

赤く丸印が塗りつぶされている場所に指を当てたまま、私はそう呟いた。

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