第7話 騒動(家庭内)と騒動(世界)
同日13:17
他にも幾つかの買い物を終え、家に戻ると…
うん。軽く騒ぎになっていた。
まあ、騒いでいるのは妖精方なのですが。
あと、これだけは言える。
冷凍技術に心から感謝を!
その技術のおかげで彼女らへの食事の手間が8割軽減されるっ!
丼もの具材を崇めます!
業務用スイーツや調理済み焼きそば1キロ、200個以上の冷凍焼売よ…私はあなた方を賛美します!
というわけでストッカーにお酒と冷凍食品をバンバン詰め込み、途中で買い込んだこじゃれたサンドウィッチなどの軽食をご提供。
───うん。正直言って、こんな生活していたら数年で金が枯渇するわ。
ちょっと別に稼ぎ方を考えようか…バレにくい方法を。
といっても、恐らくは半年経たずに彼女らの事はバレるでしょうが。
それまでの間に何処までこちらの足場を固め、手出しできないようにするのかが勝負ですね。
兵は拙速を尊ぶ…なんて言うけど世間が言っているような「稚拙でも速攻が良いんだよ!孫子にもそう書いてある!」というわけでは断じて、断じてない。
それ言えるのは絶対的戦力差があって、罠も策略も封じる程度段取りも終わっていて「攻めるだけだから何も考えずGo!Go!」と言う詰みの仕上げ状況ですからね?
実際これは「最低限の目標を達成させるための短期決戦が重要であって、複数目標を得るために長期戦をすべきではない」という事であり、必要目標を最短最速で勝ち取れ。あれもこれもと十分目標を得るために時間を掛けていたらあまり良くないよ?といっているだけですし。
そもそもこれは作戦篇。計篇ではない。
そして私がすべき事は攻めること以前に他者から攻められないようにする。戦わずして勝つ事であり、国や対する全てから『敵対するのは損だ』と思ってもらえるよう準備をしなければならない…が、
「面倒くさい」
うん。何もかも投げ捨てて俗世から隠遁したくなるレベルで面倒。
十中八九問題しかやってこない気がするんですよ。
まあちょっと考えれば当然なんですが。
そしてそれを跳ね除ける力は確実に無い。
───よし。論点をすり替えよう。
現在私は雇われている。そして彼女らの事を知己だった議員へは善意でリークし終えているので義理は果たした。
彼女らは嘘を嫌い平穏を望み私も隠居生活を望んでいるので共同生活をしている。
これらを脅かすモノに対してどのような対処をするのかは分からないし、煩わしいのは御免被る。
兵糧攻め等は敵対行為と看做されるためおすすめしない。
私を亡き者にした後は?同じ事が言えるでしょうね、と。
うん。もうどうにでもな~れ~と思いながら刹那的に生きようか。
宝くじがあと1回大きく当たれば…の前に一つ懸念事項が。
「他の種族の方々が再び扉を開けてやってくる可能性…ですよねぇ、問題は」
「ごーはーんー」
「小さくなってもらっても?今回は焼売と餃子なのでその方が楽しめるかと」
「たしかに~!」
いや、ガチで業務用冷凍食品を崇めます。
超崇めます。
念のためミートボールとかも後でまた買いに行こう…
大皿に出来上がった焼売を雑に盛り付けながらため息を吐いた。
同日16:51
少し離れた個人経営の酒屋さんなどでビールやチューハイを6ケースほど買い、午前に行った業務食品スーパーとは別の所で後部座席一杯買って帰宅。
帰宅しながら何となく音楽からラジオに切り替えると…ニュースで政府が異世界の存在を認め、コンタクトを取りたがっている旨の発表があったと報じていた。
「へぇ…実害もあったわけですし、彼女達の忠告もあった。世にその事を正直に話すことによって彼女らへのポイント稼ぎもあるんでしょうね…」
誰も居ない車内で一人呟く。
「へー、そんな面倒なこと考えているんだ」
「ついてきていたんですか?」
突然耳元で声がし、慌てはしたものの事故を起こすことなく運転を続ける。
「お夕飯何?」
「今朝買った冷凍焼きそばですよ。あと、何カ所か扉があるらしいんですが、全部竜族か龍神族ですかね?」
おっと、露店販売がある。焼き鳥かぁ…5本600円、10パック買っていきましょうかね。
「龍神族はないと思うわ。全て竜族の方ね」
「下手に突入したら敵対行動扱いでどえらいことになる奴ですね」
「それに言葉が通じないと思うのよね。それにこちらからは開かないと思うし」
「えっ?」
「最初に会った人に対して対話呪法を掛けるから当事者以外は基本何言っているのか分からないと思うわ。ああ、私達は別よ?交渉役として動いているわけだし」
「であれば私はドラゴンとの交渉はないですね。いやぁ…助かった」
「えっ?何言ってるの?お酒渡したんでしょ?酒好き種族に。絶対に貴方を交渉役に指定してくるわよ?」
なにそれ怖い。
「ああ、焼き鳥10パック…11パック下さい!」
とりあえず今は何も考えないようにしよう。
「政府広報が貴方がたとコンタクトを取りたがっているようですよ」
焼き鳥がみっしり入った袋を持ち車へと乗り込む。
「え?やだ面倒くさい」
「うわぁ…他の種族との橋渡しは?」
「おじさんで良いじゃない。どうせ巫女様やり込めたんでしょ?だったらもんだいないわ。聞いたわよ?かなり凄い殺気を受けていたって。そんな中でも平然としていたんでしょ?」
「ああ、あの…いや、セールのおb…お姉様方の殺気に比べたら微々たるモノだなぁとスルーしていました」
「…………あー…確かにぃ。あの人達のモノに向かっての突進力と気迫は…うん。人の上を泳いだりかき分けるフリして肘を入れてくる人なんて見たことないわ」
「あれはマナーが悪すぎますよ…ただ、あんな群が向かってくるのと比べたら「無理!あれは無理!竜族の対話の方が話通じそう!」ですよねぇ…良かった。分かってもらわなかった場合、これから夕市に突撃するのかと」
「あっ!私この袋と後ろの荷物全部転送するね!」
彼女は自主的に手伝ってくれた。
序でに逃げた。
あっ、私の分焼き鳥まで持って行かれた!
同日17:12 自主党党本部
「やはり批判殺到ですね」
「何事も結果論だからな」
牧野修官房長官の台詞に岸はため息交じりに応える。
「あの部分だけでも隠しておいた方がよかったのでは?」
「彼女らがそれを嫌い今後の交渉事にマイナスの作用を及ぼしたらどうする」
「……そう、ですよね…嘘を見抜く、意図的に隠したことに対してどんな判定を下されるか分かりませんからね」
実際にソレができるかは分かりませんが、と牧野は肩をすくめる。
「下手に不義理を働いて今回のようなことが起こった場合、我々にとても勝ち目はないからな」
「ミサイルも効かず、お返しにと放たれた超高温のブレスで基地一つが核を受けたようになっていましたね…我が国の初動が少し遅くて助かったのは皮肉ですが」
自衛隊は即座にドラゴンへの攻撃を…行わなかった。
明らかな未知の生命体に対するマニュアルがなかったのと、スクランブル発進直後に岸が攻撃に待ったを掛けたからだった。
そのため飛び立ちはしたがそのドラゴンの姿を撮影するだけに留め、基地へと引き返したのだった。
「しかし海外はアレをどう見たら撃退に成功したと言えるんだろうな」
「もしその台詞を聞きつけて再度襲来を受けたらどうするのかまでは考えていないかと思いますよ。まあ、パフォーマンスはどうしても必要と言うことかと」
「各国から問い合わせが殺到しているのも知らない振りしたいよ…連中かなり焦っているだろうな」
「しかし、総理。よく撮影出来ましたね」
「無論許可をもらって撮影をしたんだよ。あちらは自分たちとは関係ない、出て来たドラゴンに対して余程侮辱的な取引を持ちかけたから騒ぎになったという事を知ってもらいたい訳だからな。説得材料の一つとして頼んだんだ」
「……それ、見方を変えたら全部妖精のせいにしようとしていたと捉えてしまいませんかね?」
「………どうしよう」
岸と牧野は頭を抱えた。
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