第6話 当選確定~でもそんなに要らないって何故?

「へぇー」

 いやへーて…

「半分の1億2千万円って言われても正直な話、良く分からないし、今の生活でそんなに困っていないのよね…」

「まあ私が料理を作ったりお酒を買ったりしているわけですからね…」

「そう言うこと。だから、運用は任せるわ!」

「まあ、そうなりますよねぇ…家を買うとかは?」

「ここがあるのに?」

「ここ私の家ですが?後ろの家、空き家なので買いますか?安いですよ?」

「問題事しか起きない気がするわ」

 デスヨネー。

 仕方ない。両親の部屋だった所を空けますかねえ…


 と言うわけで今夜も飲み会ですね。はい。

 当たっているのはほぼ決定なので前祝いです。

 といっても夕食からずっと飲んでいるわけですが。わけですが!

 大きくなった彼女らの酒類消費量が尋常じゃ無い件について。

 おつまみに豚肉スライスを蒸し焼きにして一口サイズに切ってポン酢と共に提供。

 日本酒とビールを渡して撤退。

 …明日は駅挟んで隣の商店街に行って串焼きを大量に買うか?いや、足りるか?

「おじさんビール!」

「はいはい…段々私がビールになってないかなぁ?」

「この動物の絵の描かれたビールが良い!」

「わたしこの黒丸に金の星のやつ!」

「…それぞれ1ケース注文しておきますか…」

 ネットショップでビールを4メーカーの代表銘柄各1ケース。あと、当たっているようなので冷凍ストッカーも購入。ああ、あとはお菓子の詰め合わせなども…

 そうやって色々追加していき、購入合計金額が10万円近くなったために購入を一瞬躊躇ってしまった。

「おじさん何か買ったの?」

「君達がいつでも冷たいお酒やジュースを飲めるように大型の冷凍ストッカーを購入したよ」

「やった!あ、アイス食べて良い?」

 そういえば買ったなあ…溶けては…いないか。

「どうぞどうぞ」

「いただきまーす!」

「そういえば、耳って隠せるかな?」

「え?なんで?」

「耳を見て妖精族とか判断しそうだからねぇ…その姿から少し変える事が出来れば出歩いても問題無さそうですし」

「んー…黒目黒髪で耳は丸く…」

 私の目の前で顔が少しずつ変わっていく。

「こんな感じ?」

「うん。普通以上の日本人離れした美少女だね。これで大丈夫だ。ただ、その姿でアルコール類は購入しないように」

「外ではお酒飲まないよ?」

「そっかぁ…ああ、あと名前をどうするか…親戚で外国に行った奴は…居るな。末岡絵里とか岡本美衣沙とか名乗って欲しいんだけど」

「えー?」

「偽名と言うよりも世を忍ぶ仮の名前だよ」

「!?」

 あ、何か琴線に触れた?

「今見ているショーグンみたいな感じね!」

 えええええ?

 嘘は駄目なのにそれオッケーって…

「そう、末岡絵里は世を忍ぶ仮の姿…実は妖精なのだ!」

「いいな姉様!わたしは?わたしは!?」

 ヤバイ…親の遺した時代劇モノを見始めていたなんて想定外なんですが?

「アニメは見終わったのですか?」

「他のものも見ようかなぁって!」

 まあ、危険なものはなかったはずですし、少しは人の善悪や機微が分かれば…うん。なんか疲れた…

「冷蔵庫の中のお酒とかは自由に飲んでも大丈夫なのでどうぞ。私は部屋に戻りますね」

「うん。おじさんおやすみなさーい」

「はい。おやすみなさい」

 部屋に、戻ろう…

 部屋に戻り、扉を見て余計に疲れた気持ちになったままふて寝した。



 8月2日(水)晴れ。


 さて、朝食は簡単にトーストとスクランブルエッグ、ウインナーにしますか。

 8枚切り5袋と卵2パック、ウインナー4袋が瞬殺ぅ…まあ、朝食時は小さくなってくれるからありがたいんですけど。それでもパンは1枚食べる…

 業務スーパーへ行くか、ネットで大量買いか…

 ああ、空き缶と一升瓶が大量に!

 一升瓶は奴に叩きつけるとしても、空き缶は金曜日か。

 ───物流が停滞する前に買える物を買っておかないとマズイ気がするな。

「おじさん、今日は何するの?」

「うーん、今日も買い出し予定なんだけど…1人か2人はここで荷物受け取りをお願いしたいんですよ」

「あ、じゃあアタシ留守番!この姿で良いのよね?」

 そう元気よく手を挙げたのはどこからどう見ても日本人女性な子だった。

「…うん。お願いするよ。玄関内に置いてもらえれば良いですから。もし大きな物が来た場合は家主がしまうからと言って玄関前に置いてもらってください」

「はーい」

「あと、サインは…」

「末岡、で良いんだよね?」

「パーフェクトです」

「感謝の極み」

 まて、まさかアレを見たのか!?


 ネットバンクに結構な金額が入金されたのを確認し、一部を降ろして買い物を決意。

「アニメとか時代劇?のものをもっと欲しい!」

「私も!」

「じゃあそれを買って、ゲームも買うかぁ…しかし、荷物がなぁ」

「おじさんの部屋に飛ばす?」

 ああ、そうか。彼女達は空間移動出来るんだ…

「買い込みすぎたらお願いしますね」

 そんな話をしながら車は家電量販店へ。

 そして言われるがままアニメや時代劇の円盤を大量購入。そしてゲーム機とソフト。追加でタブレットも購入。

 通販及び連絡用だ。

 あと他は…

「おじさんおじさん、お菓子もあるよ」

「お菓子はこれから行くスーパーで買いますよ」

 妖精達の買って買って攻撃をすり抜け、なんとか支払いを済ませる。

 へへっ、ポイントザクザクだぁ(白目)

 カートを押しながら車に戻り、助手席とトランクルームに詰め込む。

 後部座席は彼女らがいるから仕方ない。

「さて、車の中がパンパンに───」

「おじさん、荷物届いたって!」

 どうやら何らかの連絡が来たようだ。

「大きな荷物も一緒だって!配達の人が困ってたって!」

「まあ、困るでしょうねぇ…しかし、ストッカーも届いたのかぁ…ストッカー以外は家の中にお願いします。服もあるはずなのでそれはご自由に着てください。

「私達これ持っていくついでに着てきてもいい?」

「お願いするよ」

 そう言うや否や彼女らは荷物ごと消えた。

 ───さて、カートを返してくるか…

 カメラの死角で助かった。まあ、こうする予定だから死角に入ったわけだけど。

「あとはスーパーに行って食料品を買った後は靴や外出用の服かぁ…」

 昨日今日で三十万くらい買っているんだが…これが当たり前となってきたら怖いな。



 同日10:44


「被害状況は!」

「大阪府難波一帯は壊滅状態!未だ消火活動は難航!ただ、問題のあった大火災現場近くの公園に妙な扉があると通報がありました」

「死傷者は!?」

「480名を超えました!近隣より救急車と消防車が応援に来ていますが間に合っていません!」

 危機管理センターは昨夜からひたすら状況確認と手配についての現地とのやりとりが続いていた。

「妙な扉…」

 その中で漏れ聞こえた妙な扉について岸は思考を巡らせる。

「突如現れたそうで、開けることも撤去も出来ないとのことです」

「…恐らくそれが異世界の扉だ」

「異世界?」

 突然何を、と言いかけたものの、今回の災害原因がドラゴンによるものだけに危機管理担当補佐官は言葉に詰まる。

「ああ。荒唐無稽と笑ってもらっても構わない。ただ、私と幹事長は二日にわたって接触したのだよ…一方的なものだがな」

「では、それを事前に周知すれば…」

「どう周知する?頭のおかしい総理と言われて終わるぞ?」

「……」

 間違いなく言われただろう。そしてその後にこの事態が起きれば、今以上に言われただろう。

 何を言っても叩かれる結果ならば沈黙は金だ。

「今なら、あんなドラゴンが出てきたなら言い切れるがな…」

 岸は深いため息を吐き、

「記者会見の用意を。私が現状とは別に事情を説明する」

 そう言い、自身の聞いた限りのことを急ぎ紙に書き起こしていった。


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