第3話怪談蒐集 第一高校新聞部・その8 「雪の子」
いつからだう。彼のことが気になって仕方がない。
ふっくらとした唇。少し紅みがかった頬。
男の子だよな。俺も男だしその気もないけど、つい魅入ってしまう。
この真夏の茹だるような教室の中でも涼しげな風情でたたずんでいる。
「だーーからーーー。怪談特集なのにBLしてどうすんのよ」
僕はパソコンの手を止めてエディタをセーブした。
「部長。やはり前置きも必要かと。
どうしてこうなったのか。これがあると話に現実味が出ますからねぇ」
彼を見ているとあの時のことをどうしても思い出してしまう。
『私のことを忘れないで。でも、ほかの人に言っては絶対だめ』
彼女はそう言った。
冬休みに田舎に遊びに行っていた時、友達になった子の家からじいちゃんの家に帰る途中、急に吹雪が強くなって気がついたら違う道に迷い込んでしまっていた。
でも吹雪の先に黒い家影とぼんやりとした明かりが見えるようだ。
僕は避難させてもらおうとなんとかたどり着き、扉をたたいた。
その扉を開けてくれたのが彼女だった。
僕はそこで一晩過ごして彼女がすっかり好きになってしまった。
そして朝が明けたとき、彼女はあの言葉を言ったのだ。
そのあと何度探しても見つからないあの家。あそこにいた彼女はなんだったのだろう。
そう、あの彼女にとてもよく似た彼は。僕はあの時のことを話してしまいそうになる。
でも今ら判る。あの吹雪の時のことを話したら雪女に殺されるに違いない。
でも彼は男だし。彼女の兄弟だろうか。それなら雪女ではないかもしれない。
僕は迷い続けている。
いや、ほんと彼に見つめられるとあの時のことを思い出してしまう。
あの時、僕は村の風習で女装していたんだ。
あれをバラされるのは流石に恥ずかしいんだよね。
確かに雪ん子なんてのがいるとは思わないだろうし。
真夏に居続けるのは体質で辛いんだよね。
部長も判ってくれるとよいんだけど。
「没っ!」
冷たい部長の一言が辛い。
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