第5話怪談蒐集 第一高校新聞部 その靴箱靴箱



 部室の扉の向こうに気配が有る。

 そう言えばそろそろ時期だから、またぞろオカルト絡みの新聞を計画しているだろう。

 報道に魅力を感じるのは良いことだ。

 しかし、部活動としては今どきは衰退するのもしょうがないのか、と思う。

 報道の光の当たる所なんて、一部のキャスターとか良い瞬間に巡り合ったカメラマン位だ。

 その他の取材員や編集なんて毎日消費されるニュースを探して加工する第一次加工産業のようなもので、土日祭日、夜中だろうが待ったなしで加工し続けなければならないのだ。

 学校なんて同じようなイベントしか起こらないので今回の様な怪しげなネタで埋めていくことにもなる。

 実際、学校と言う所は霊が集まり易い。

 何しろ、学生と言うのはその行動の大半を学校で済ませてしまうために、死んでもついいつもの様に学校に来てしまい、居ついてしまう。

 この学校の歴史も長いのでそんな霊たちのたまり場・スポットが出来てしまう。

 我々教師の一部にはそういうのに対処する能力を持った者もいて、そんなスポットに溜まった霊の浄化も行うのだが、手が回り切らないのも事実だ。

 掛け持ちでそんなスポットを顧問として入り、時を見ながら少しでも霊を剥がして行くのだ。

 今回も、そこに出入りする浮遊霊に百葉箱の噂を擦り付け、丁度成仏する年寄りの霊に協力して貰い一つの魂を導いた。

 昔、二つだったこの図書室と部室を改築して大きな図書室にしたこの壁の向こう、そこは普通の教室があるだけだが、彼らはまだ部室が失くなった事さえ気づかず、部活動を続けている。

 私にはその部室の扉が壁に貼られた新聞に重なって見えていた。

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