第4話 怪談蒐集  第一高校新聞部 その4 部室の扉



 副部長のパソコンから回って来た新聞の最終版を印刷して顧問に届ける準備をする。

 この学園の校風は自由で、この手のフリーペーパーは余程でなければ自由に配っても良いのだが、活動履歴を証明するためにも顧問に了解を取ることにしている。

 こういうちょっとした気配りがお互いの関係を良くするのだ。

 何しろ弱小部を見てくれる先生なんて中々いない。この先生も他の部との掛け持ちで名前を提供してくれているだけで実質、幽霊部員と変わらない幽霊顧問だとしてもだ。

 先生の事を思い出していたら部室の扉がノックされ、件の顧問が丁度通りかかったからと入って来た。

 「この時期になると怪談が出るのもいつも変わらないのだな。

 しかし、あの百妖箱か」

 「あの、と言うと先生もこの話を聞いた事が有るんですか?」

 「正確には百の妖しい箱と書いて百妖箱と言ってな。昔は手紙を届ける相手を探していたのだが、今は迷える魂を行くべき所へ届ける役目をしているとか、な」

 そんな話は新藤君から聞いてない。百葉箱が人をさらっていくと。

 ふっと周りの景色が薄れるような感覚を覚えたけれど、先生はまだそこに居て話を続けていた。

 「そんな話になってるのか。おお、新聞を見るとこっちもコワイな。

 まあ、お前たちもいつまでも学校に居ないで早く帰れよ。百妖箱が迎えにくるぞ」

 先生の去った後はガランとした部室だけが残っていた。新藤君は別のネタを探しにさっさと行ってしまった。副部長の安曇さんも私に原稿を送ったらいつの間にか消えていた。

イラストの日影さんも同じようなものだ。

 部室の喧騒がなくなるとこんなにも存在感が無いものだ。

 私の足元が失われる気持ちを抑えて部室の扉を開けようとした。

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