第2話怪談蒐集 第一高校新聞部 その2 「壁の裏は」
今回の新藤君の持ってきた話の「百葉箱」をイラストにしていくと昔のアニメの妖怪ポストになってしまった。
これってどうよ。柱の上に三角屋根の小さな箱。妖怪ポストか小鳥の巣箱にしかならないよ。
おどろおどろしくすると妖怪ポスト。明るくすると巣箱だよ。イラスト映えする話題にしてよね。
デッサンから目を上げてぼーっと壁を見る。前号の新聞が貼ってあって下が止めて無いので開いた窓から入って来た風でちょっと上にはためいた。
そこにはちょっとした壁のシミがある。その照れ隠しに新聞を貼っているのだけど、怪談の話をしたせいかそれが気にかかった。
「ねぇ、新藤君。この部室の隣って図書室だったよね。」
「資料を探すときに手頃だったから部の創設の時にぶんどった、とは聞いた事が有るよ」
「図書室のどの辺りだっけ。いや、なんかこの新聞の裏のシミが気になってね」
「閉架書庫じゃなかったっけ。古い資料とか廃棄の近い図書を一時保管してるとこ」
「閉架書庫?そんなの有ったっけ」
「図書委員と話をしたことが有ってね。その子が本の整理をして扉の向こうに持って行ったよ。確か、それがこの壁の方向だったよ」
でも、それはおかしい。私も本は好きだから何度も図書館に行ったけど、そんな扉は見た事が無い。図書館は本棚が並んでいるだけの所のはずだ。
「またまたぁ。怪談特集だからって…」
そう言ったが新藤君はふと頭をふって「そう言えばあの時の図書委員はあれから見てないな」言い出した。
「移動する閉鎖書庫とそこ専門の図書委員とか?次回のネタには良いけれどイラストにはし辛いわね。他に何か覚えてないの?」
「そう言えば、あの図書委員はセーラー服だったよ。図書室にはぴったりの雰囲気なので気にしなかったけれど」
うちの学校も昔は制服がセーラー服だった。それがブレザーになったのはもう30年も前のはずだ。
私はそれからそのシミを考えないように壁に貼られた新聞の四隅をしっかり止めて仕事に集中してイラストを描き上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます