第6幕 裏切り者達からの罵声

私は今、仕事で車を運転している。

ペーパードライバーだった私も、最近になって

運転に慣れてきた。

まさか突然の部署異動があり、運転するようになるなんて思いもしなかった。


今は1人で大丈夫なぐらい慣れてきたが、運転はあまり好きではないし、車にも興味はない。


車の運転というのは便利な分、事故を起こしてしまう、巻き込まれてしまうというリスクがつきまとうからだ。


人間誰しもうっかりミスをすることがある。

だが、運転ではうっかりミスしましたでは済まないのだ。

他人の物を壊すことも人を傷つけること、最悪の場合命を奪うことも簡単にできてしまうからだ。

そして自分は社会的に死んでしまうのだ。


そんなリスクを背負いたくないと思いつつも、仕事だからと割り切って働いている。

100%自分の思い通りの仕事なんてない。

何かしらは我慢したり、受け入れなければならないのだ。


いつも通り音楽をかけながら、運転している。

運転は好きでなくても、音楽を聴くのは好きだ。

音楽を流すだけで、それが帳消しになる。


もう少し目的地に着く。

私はそのまま一車線目の道路を走る。

その時………。


急に1人の女性が飛び出してきた。

突然の出来事でハンドルを左に回してしまい、電柱に衝突した。



私は車から降りた。

痛い……。

立ち上がれないし、脇腹を打ってしまい、声も上げれない。


その時飛び出してきた女性が私の前に立った。

それは……。


以前に付き合った元カノだった。

浮気をして、一方的に連絡手段をブロックした人だ。

彼女の目はまるでゴミを見るかのように、私を見下している。


一体何がしたいんだ!

過去のこともあり、怒鳴りつけたかったが、脇腹が痛くて声が出ない。


私がもがいていると、他にも人が集まってきた。

誰か救急車を呼んでほしい。

そう思いながら、その人達の顔を見ると……。



全員知っている顔だった。

相談していたことを面白おかしく噂にした元親友。

恋心を弄んで、嘘ばかりついて私を切り捨てた女友達。

私の家族を切り捨てた親族。

他にもたくさんいる。


「お前のせいだ」

元カノが口を開く。

何を言ってるんだ?


「お前のせいだ」


「お前のせいだ」

「お前のせいだ」


「お前のせいだ」


「お前のせいだ」


「お前のせいだ」


「お前のせいだ」


「お前のせいだ」

他の奴も次々と口を開いた。


私のせい?

ふざけるな。

あの時どんな辛い思いをしたことか。

それに怪我をしているというのに……。


私は耳を塞いで、疼くまった。

助けなんて呼ばなくていい。

早く消えてくれ。

私の前から今すぐ消えていってくれ。


耳を塞いだが、裏切り者達の罵声は続いた。


「お前のせいだ」


「お前のせいだ」


「お前のせいだ」


「お前のせいだ」


「お前のせいだ」


「お前のせいだ」


「お前のせいだ」


「お前のせいだ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


目を覚ました。

最悪の朝だった。

一気に全てのトラウマな記憶が蘇ったからだ。


煙草を一本吸って落ち着かせる。

あの夢は今まで私を裏切った奴らが全員出ていた。


よくオールスターという言葉を聞く。

番組やフィクション作品の総集編でよく使われる。

ほとんどはいい意味で使われるが……。

今回はまさに、最悪のオールスターだ。


まさかあいつらが夢に出てくるなんて……。

しかも罵声を浴びさせられるなんて……。


心がまたズキズキ痛み出す。

ずっとそうだ。

初めて大きな裏切りを受けてから、心が痛むのが治らないんだ。


今裏切った奴らは何も気にせず、幸せに過ごしているだろう。

風の噂で、中には結婚して子供がいると聞いたことがある。


そう。

裏切った側は何も罪悪感を感じず、幸せの道を進む。

だが、裏切られた側はその傷を背負ったまま、生きていくんだ。


何故こうなってしまったのか。

何度も考えた。


だが、考えれば考えるほど、私の心が傷ついていく。

煙草をもう一本吸って、会社に向かう準備をしよう。

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