第2話

前回までのあらすじ


 主人公の中島強(なかじま つよし)は、人類がみな転生したのにも関わらず、この世界に取り残されてしまった。

そんな中、ホームレスの旧担任の長岡先生と再開して、異性界生物に出くわす。2人を助けたのは、一度異世界転生したが、生贄(?)を助けに来た男、斉藤春(さいとう しゅん)、2人はこの男と、生贄を助ける旅に出ることにきめる。人類異世界転生計画を実行した政府の目的とは、そして男の言う生贄とはなんなのか!?真相が明らかになってゆく…。


第2話



 今日は雨が降っている。音もしないほどの小雨だが、夏でもあり、湿度が高い。

もちろん斉藤は、生贄を助けることだけを考えている。

だからこうして俺らは雨の中歩かされているのだ。

そもそも生贄とは、僕らのように転生できてない人のことを指すのだろうけど、そうなると転生できなかったのは政府が意図的に、そうしたとしか思えない。生贄と、つくほどだから。

最も、俺や先生はフリーターとホームレスだ。社会に必要とされていない。

言ってしまえばゴミ人間ということになる。

「何故政府は生贄が必要なんですか?」 

長岡先生が斉藤に聞いた。

「…」

やはり簡単に話せるような話ではないらしい。しかし溜め込んだ上、斉藤は口を開いた。

「君らには最初からチャンスが与えられていた。」

「手紙や、DVDをしっかり確認することですか?」俺は、適当に答えた。 

「それもある、しかし君たち。他に身に覚えはないか?」「6年前ことで…」


「!」


そう、それはさかのぼること6年前、先生が

俺のクラスの担任だったころ…。


31人クラスのうち、20名が失踪し、先生はまともに仕事ができなくなり、クビに、俺は引きこもりになって高校を中退。

しかしあれとこれに何の関係があるというのだろう。

「生贄は…全部で12人いる!」

「…!」

12人ということは、生き残った11名と、先生…。

チャンス…?あの時のことをハッキリと思い出すことができない。相当ショックだったからだ。恋人も、親友も失った。

その中で生き残った俺ら12人が生贄?

「あ」俺と先生の目が合う。 

「斉藤…って、あの時の刑事さん?」 

俺は自信なさげに聞いた。

「そのとうり…」「つまり僕は、」

「20人の失踪理由を知っている!!」

「え…!!!!」俺たちは声が出なくなった。

これに異世界生物が関係しているとでもいうのか?チャンスとは何だったんだ?また考えなければいけないことが増えた。頭が痛い。

その時だった。 

真っ赤な液体が僕らを飲み込んだ。 

「にげろぉぉぉぉぉぉ!!」

斉藤さんはマッチを取り出して何かをするようだ。異世界の技か?

「くそぉぉう!湿気が強くて火がつかない!」 

斉藤さんは見えなくなり、俺らは深い眠りに落ちた。

起きるとそこには、頭から血を流す斉藤の姿と、首から上がぐちゃぐちゃにされた女性の姿が見えた。「俺は…気絶していたのか?」

「さより!!」長岡先生が叫んだ。

さより!?俺の彼女だ。失踪事件で失踪した一人のはず…。

しかし彼女の右手に大事そうに握られていたのは、確かに2人で買いに行ったキーホルダーだった。

「生きていたんだ…彼女…」

斉藤さんが小さな声でいった。

その瞬間。俺の頭は考えることをやめ、 

ただ、彼女との思い出でいっぱいになった。

俺のことを1番愛してくれた、俺が1番愛した彼女が、今まで生きてて…死んだと思ったのに…

それなのに…こんな姿で死ぬなんて…。

こんなに最後まで俺のことを思ってくれていただなんて…。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」 

俺は何も考えず泣いた。泣き続けた。今日降った雨全部集めても足りないくらい涙を流した。

「さより…」

彼女の右手からキーホルダーを取ると、

ポケットにしまった。

そこには、いつも一緒と、書かれていた。

「一緒にいられなくてごめん。」

「幸せにしてやらなくてごめん。」

今度は思い出を噛み締めながら静かに泣いた。

もう泣けなくなるくらいまで。


どうやら泣き疲れて寝てしまったようだ。

起きた時には次の日になっていた。

今日は彼女を骨にして埋めた。

花のいっぱい咲くところに。 

そして俺らはまた旅を始めた。

もう犠牲が出ないように。 

この生物についてもっと知るために。 


「斉藤さん、教えてください。どうして彼らは失踪したんですか?」 

「何故、異世界の生物がこの世界にやってきているんですか?

「チャンスとは一体何のことだったんですか?」

やはり彼は答えてくれなかった。

ただ、異世界生物は、俺たちに恨みを持っているのかもしれない。クラス全員を食う。

そういうことなんだろうか。そう考えると、

俺たちが転生しちゃいけない理由がわかってきた。俺たちが転生したら、他の人たちもこの騒動に巻き込まれると考えたのかもしれない。

そう考えていると、俺たちはあの事件があった高校についていた。そこで斎藤がやっと口を開いた。

「この石碑に見覚えはないか?」

「これは…俺たちが壊したやつ…」

「そう、ここは異世界への入り口。」

「異世界への!?」俺たちは叫んだ。

「君たちが逃したチャンス。それはズバリ、この石碑を壊した後、これを放置したことだ!」

「!」そうか、これは僕らが蒔いた種だったんだ!こんなことがなければ他の人たちだってこの世界で暮らしていたはずだ。

「そう、つまりこれは、異世界生物が俺たちを食べ尽くし、満足するか、俺たちが奴らを全て倒すまで終わらない!政府なんて、関係なかったんだ!!」長岡が言った。

俺たちは最初から、異世界なんていけなかったんだ。

「ちょっと待て、それじゃあ他の人たちも危険な異世界に転生してしまうことだってあるんじゃないのか?」俺はノリ気に言った。

「そうだよ!どうなんだ?え?斉藤!」

長岡が顔お赤くして斉藤の肩を揺らす。 

「もういい!お前とは組めない!信用しきれん!中島も、付いてきたいんだったらついてくるんだ!」

俺は、食べられるのが嫌だったため、斉藤さん側につくことにした。 

「おい待て!食われるぞ!!お前に何ができる!!」斉藤さんは必死に叫んでいた。 

だが、長岡の決意は固かった。俺に向かって手を一振りし、去っていった…。(2)完

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