第6話 結婚
ある日総司とカエサルの娘のユリアは二人で買い物に行くと言って家を出た。
食糧や家の備品の買い出しに出たのであるが二人で歩いているうちに服屋の前を
通り過ぎようとしたときユリアが立ち止まった。
ウェディングドレスが飾ってあったのだ。
ユリア「ああウェディングベールだ。私もあんなの来てみたいな」
総司「ユリアもいつか結婚してああいうウェディングベールを着る日が来るよ」
ユリア「じゃ総司が着せて」
総司は気持ちを抑える事が出来なかった。
総司「ユリア好きだ!」
ユリア「えっ」
総司「ユリアずっと前から思っていたんだが君のその天真爛漫な所に惚れていた
んだ」
ユリア「ソウジ・・嬉しいわ。私もずっと前からソウジのことが好きだったの」
総司「ユリア、結婚しよう」
ユリア「え、でも私達関係上兄妹だし」
総司は一時迷ったが決心して言った。
総司「俺がお父様の養子の立場から離れればいい」
ユリア「え、でもそんな」
総司「しばらくはそう楽な暮らしはさせてやれないけどそのうちお父様の軍に
所属される時が来る」
ユリア「嬉しいわソウジ!」
ユリアは総司に抱き着いた。
ユリア「そうとなれば今の手持ちがこれだけだから買える。
あのウェディングベール買える」
総司「でもそのお金は食料品や他の物に使わないと」
ユリア「いいのいいの私あのウェディングベールが気に入ったの。
早くしないと他の人に取られるわ。入ろソウジ」
ユリアは総司の手を引っ張って服屋に入り込み気に入ったウェディングベールを
購入したのである。
この点からしてもユリアは総司の言う通り天真爛漫でありこういう金銭に関する
使い方というところもカエサルゆずりだなと思ったが、その天真爛漫さに総司は
惚れたのだと改めて思う次第であった。
そしてドレスを買い二人は帰宅した。
ユリア「お婆様、お父様はいませんか」
アウレリア「どうしたの?それにそのウェディングベール」
ユリアと総司は二人が婚約したことをカエサルの母アウレリアに説明した。
アウレリア「まあそういうことなの。それなら二人とも結婚ユビアを作らない
とね」
日が暮れカエサルが帰ってきた。
総司は緊張していた。
養子にはなっていても何しろ実の娘を娶(めと)るのである。
前世が日本の総司にとっては当然と言ったところである。
総司は日本式に娘さんを下さいと言ったのである。
カエサル「ははは、何を言っているソウジ。お前も息子ではないか。
しかし結婚となると養子の席を外してもらわないといけなくなるな。
その手続きはこちらでやっておこう。んどうしたソウジ」
総司「いえ別に」
総司はカエサルのあまりにも素の反応にびっくりしていたのである。
カエサル「二人とも結婚式なんだがほとんど身内だけでやっていいか」
総司「はい。いいよねユリア」
ユリア「はい。お父様、ソウジ」
この時期三頭政治は成立したものの依然、元老院派は敵対心を大きく執政官の
カエサルに向け、回りは敵だらけなのであった。
カエサル「養子でなくなるとしたらソウジにもなにか職をつけねばならない。
私の権限で会計検査官についてもらうようにしておこう」
総司「ありがとうございます。お父様」
会計検査官はこの当時のローマでは通常30才以上でしかなれなかったが三頭政治の
一角であるカエサルにとってその規則に特例を認める事は難しくない事で
あったのである。
ユリア「では私達早速明日結婚指輪を買いに行きますわ。
お父様お金のほうお願いします」
総司「僕は職にも就けるようですし自分で」
カエサル「何を言っているソウジ、養子の席を外すまでお前は我が家の子だろ、
それくらい俺がもつ」
総司は古代ローマの結婚について全く知らずこういう時つい現代日本式に考えて
しまう。
それにしてもカエサルは自分で金を出すといっときながらまたただ借金を増やす
のである。
翌日総司とユリアは結婚指輪を買いに行ったのである。
結婚指輪のはじまりとされるのが、古代ローマ時代である。
古代ローマは建国は今から2800年ほど前のことである。
史実では古代ローマは西暦395年に東西に分裂したものの、西ローマ帝国は
中世が始まるまで、東ローマ帝国は近世が始まる1453年まで存在していた。
古代ローマでは最初、鉄の指輪が結婚指輪として用いられていたのである。
これはギリシア神話のプロメテウスと指輪に関することが由来となっている。
プロメテウスは天界の火を盗み、人類に与えた神である。
人類は火を得たことで豊かになると同時に、戦争をはじめるようになり、
ゼウスはプロメテウスに罰を与えた。
罰は岩山にプロメテウスを鎖ではりつけるというものであったが、
後にヘラクレスにより解放されることとなる。
ただ「岩山に鎖ではりつける」という誓いがあったため、岩山の破片と鎖を
つかって指輪を作り[ゼウスへの服従の誓い]とした。
古代ローマのころは男性が上の存在だったので、結婚指輪は女性が男性に
対して[忠誠を誓うしるし]として用いられていたのである。
薬指にはめるようになったのは、当時[薬指は心臓とつながっている]と考え
られていたため、もっとも大切な場所に誓いの指輪をさせていたのである。
そして結婚式当日二人の結婚式はほぼ身内だけで静かに行われた。
二人は結婚指輪をお互いの指にはめ多神教の古代ローマの神に生涯夫婦(めおと)
として生きると誓った。
そして二人は熱い口づけをした。
一説では、アレキサンダー大王の軍隊がインドから中東へとキスを広め、
そしてそこから、古代ギリシャ、ローマへ伝わったと考えられている。
カエサル「ううん」
アウレリア「どうしたんだい。あんたもしや焼いているんじゃないでしょうね」
カエサル「いえ、ソウジならいい」
政略結婚など当たり前のこの時代のローマにおいても父親の娘に対するおもい
というのは古今東西変わるものではない。
ただ結婚したら新居を構えると言っていた2人にはカエサルは大反対した。
別に金がかかるとか言った様な問題ではない。
単に、我が家から一気に2人も家族がいなくなると淋しかっただけである。
そして無事結婚式は終了しその夜は一家で夜を通してゆわゆる二次会、三次会
をしたのである。
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