第5話 尿道王決定戦(ちょっと下ネタ注意)
「では今日の授業はここまで」
先生がそう告げると生徒たちは一斉に立ち上がり、腰を曲げ礼をする。いつもの授業の終わり方、そして村田ははこの流れのままトイレへと向かう。
彼は頻尿であった。
それも普通では考えられないほどの頻尿なのだ、授業が終わる度に必ずトイレに行く彼はある界隈において少し有名になっていた………。
「?」
いつも通りのはずの男子トイレは今日ばかりは異様な雰囲気を漂わせていた。そう一人の男子を除いてまるで用を足す気配がないのだ、であればでかい方か、と思う村田であったが個室のドアがすべて開かれているのに気づきその考えを消した、ならばなぜそこに立っている!?村田は混乱する。
「……おい来たぞ」
「あぁ、ついに始まるんだな」
「今日は忘れられない日になるだろうな」
「おい、誰もこの神聖な戦いに邪魔を入れないように清掃中の看板を立てておけ」
「了解」
一人の男がトイレの前に”清掃中”と書かれた黄色い看板を立てた。
彼らは尿の長い男こそ最強にかっこいい男であると思っている者たちで構成された”尿論派”のメンバーであり、その派閥はこの学校にとどまらず全国に散らばっていてさらに勢力は徐々に大きくなっている。
彼ら尿論派は日夜尿をどれだけ長く出せるのかの対決をしており、その戦いはメンバーはもちろんメンバーではない者ともすら人知れず勝手に行われていた。
そして後ろで観客としてたたずんでいる彼らは全員尿の出力時間において村田に負けた者たちであり、そのせいか村田は尿論派の中で有名になっていた。尿論派の連中は尿の出力の長さで負けるとリーダー角と戦わせるというルールがある、ゆえにこの状況は村田とこの学校にリーダーによる戦いを見るためにセッティングされたものなのである。
対する相手はこの学校最強の尿道を持つ男、”精密のゲン”、最長尿出力時間およそ56秒、この記録はここ2年間誰にも破られていない。
だがこの話は尿論派の中だけに限られたもの、その界隈の外の強者には適用されていない、ゆえにゲンは未知との闘いに冷や汗を流していた。
(あいつがうちのもんを全員倒したっつう”ダークホース村田”か、尿出力時間アベレージで約40秒、正真正銘の化け物、俺も万全の尿にしないと危ないな)
ゲンは生唾を呑み込み、排尿の準備をするためにあそこを出した。
臨戦態勢!!観客の尿論派の連中は息をのむ。しかし張り詰めた空気の中悠然と歩く人間が一人いた。
村田である!!
(あ、あいつ、ゲンさんの威圧を物ともしてねぇ!!)
観客の一人は戦慄し、腕に鳥肌を立たせる。
「………本当にいいのか?」
ゲンは口を開き、自身の隣にて止まった村田にそう聞く。
「え、何が?」
「ふっ、愚問というわけか」
ゲンは少し笑い、何喰わずして臨戦態勢に入る村田を未だ舐めていたことを悔いる。
(ならばこちらも本気でいかせてもらおう!!!!)
そして戦いの火ぶたは切って落とされた。
「ま、まさか最初っからあの技を使う気かよゲンさん!!」
(当たり前だ、手加減して勝てる相手じゃねぇ、最初っから奥義を使わせてもらう!)
ゲンの奥義”連続尿吐き出し”!!
尿の出力時間を競うとき、ずっと休みもなく尿を吐き出すのと定期的に尿の排泄を止めて吐き出すのとでは出力時間には雲泥の差がある。
だがこの定期的に尿を止めるという行為、これは尿道の精密な操作が必要になってくる、この技を使えるのは尿論派の中でもゲンと数人しかいない。それゆえの”精密のゲン”なのである。
(さて村田、お前はどのように、なに!?)
ハイスピード排泄!!!
頻尿の村田にとってこの時間は解放の時間とも言っていい、ならば尿のコントロールなどできるはずもなくただ欲望のまま尿を出すほかない。
(馬鹿が!そんなハイペースで尿を出せばストックはすぐに切れるぞ!!)
ゲン、勝利の笑みを浮かべ尿を操り勝利のブイ字サインを描く。
「これは、ゲンさんの勝ちだな」
「あぁ、案外あっけなかったな」
誰もがゲンの勝ちを確信しながらも尿論派の中で一人だけある違和感に気が付いた。
「え、皆待って、村田の出力時間アベレージは約40秒、けどこれは2限終わり以降の尿の時間からしかデータをとってない、俺達はこの朝方の尿の時間は測っていないよね、ということはつまり」
「それがなんだって………はっそうか!!」
尿の我慢!!この学校ではショートホームルームが終わるとそのまま1限の時間が開始されるため普通の授業時間45分プラス15分のショートホームルームの時間が追加され、この時間分の尿が村田の膀胱に貯められていた。
つまり、村田の尿は40秒を超えても止まらない!!
(こいつまだ出す気か!!)
未だ滝のように出続ける村田の尿に反転窮地に陥るゲン!!
50秒が経過する。
「こんの、やろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ゲン魂のねばり、自分に残っている僅かな尿を絞り出す。
そしてようやく村田の尿が落ち着きはじめ、勢いは弱まっていく。
56秒経過、ゲン自身の最長記録を更新する。
「ゲンさん!!あんたならやれる、やれるさ!」
外野の尿論派の連中はまさに命がけで尿をひねり出す自分たちのリーダーに涙ぐんでしまう。
だが当の本人は雫のような尿を出し切った後、外野とは違いすがすがしい顔をしていた。
「………そうか、俺に足りなかったのは尿を出すことへの喜び、そのオリジンだったってことか」
ゲンの視線の先には誰よりも幸せそうに尿を出す村田の姿であった。
今回の勝負 村田の勝利!!(時間:1分02秒!!)
「なんか今日のトイレうるさかったな」
そう思いながら村田はトイレから立ち去った。
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