初めてじゃない想い
「ら、らい君?」
「な、なに!? 笑わないでよ!」
「ごめん……昔はさ、よくこうやって並んで座ってたよな」
「え? ……あ、うん。そうだね」
「
「
「でも、俺たちも実はそれが嬉しかった。だよな」
「そう、だったね」
二人の話題と言ったら、まずは
クッションに顔を埋めて、懐かしむように笑いながら
「私も好きだった。気付いた時には、
「無くなってから気付く、在ったことの大切さ、ってやつだな」
「まったくその通り。私はずっと気付けてなかった。後になって、手遅れになってから気付くなんてこと、ドラマの中だけだと思ってた」
自嘲気味に言った
「らい君は? 後になって、気付いたことくらいあるでしょ?」
「俺か? そう、だな」
考える。俺が、
「全部、だな。俺は失わなかったら、ずっと気付かなかったんだよな、きっと」
「
「気付かせてくれなかったんだよ、あいつが」
「そうかも」
「そうだよ」
いつだって能天気でお転婆でお調子者で。突拍子もないこと言ったりやったり、俺たちは振り回されてばっかりだった。疲れてても付き合わされる毎日に、ついて行くのに必死だったと思う。
でも、ついて行かないなんて選択肢はなかった。ついて行きたくないと、ほんの一瞬思ったってあいつは俺たちの手を無理やり掴んで引っ張ってくる。だから、あの時間が大切な時間かどうかなんて、考える暇もなかったんだ。
「……今思い返してみれば、半年前までの私たちって馬鹿だったよね」
「馬鹿だったのは、俺だけだろ。
この半年、ずっと言いたかったことだ。俺は失って気付いた大切を、取りこぼさないようにと必死になって。
だから、謝る機会を貰えて、正直、本当に良かったと思ってる。許して貰おうとなんて思わない。だからせめて、目を離さずに受け取って欲しい。それだけで、良かったのに。
「急に謝られても困るよ……でも、ありがと。そうやって素直に、真剣に謝ってくれるとことか、好きだった」
かくいう俺も、
しばらく、無言が続いた後で部屋にノック音が響く。
「二人とも~、おやつもって来たわよ」
「う、うん! 入ってきていいよ!」
「は~い……って、あらあら。高校生になっても、仲が良いのね」
ジュースが入ったコップを二つとシュークリームが盛られたお皿を二つ、お盆に乗せて運んできた
「こ、これはその! らい君が勝手に!」
「え、俺!? いや、そうかもしれないけど!?」
「いいのよ、慌てなくても。ずっと前からそうだったじゃない」
「「……」」
うふふふ、と笑いながらお盆をローテーブルに置き、足早に
「
「ちょ、ちょっとお母さん!?」
「まあ、はい。お任せください」
「らい君も!?」
「ええ、よろしくね」
それだけ言って出て行った母親に、
「も~! お母さんってば!」
そしてなぜか、ポスポスと軽い音が鳴るくらいの力加減で俺の肩を殴ってくる。地味に痛い。そしてむず痒い。
「はぁ……まったく」
軽く頬を膨らませ、不満そうながらも落ち着いたのだろう。肩を叩くのをやめた
「ひ、一先ずおやつ休憩。ほら、食べよ?」
「そうだな」
誤魔化すようにそう言う
「ん? らい君? いらないの?」
「いや、貰うよ」
人生で一番見る顔は恋人の横顔、なんていうけど。それに負けないくらい、
だから、断言できる。
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