初めてのカフェ
「いらっしゃいませ~」
「あ、四人でお願いします」
「こちらの席へどうぞ~」
カフェへとやって来た俺たちは、店員さんに案内されて四人席に着いた。とりあえず俺と玲奈さん、対面するように美空姉妹の形で席に着く。
「まあ、とりあえずなんか頼んでくれ。俺の奢りだ」
「やったー! 頼斗の奢り一年ぶりかも!」
「私初めて! らい兄、一番高いの頼んで良い!?」
「頼んでもいいから声のボリューム落としてくれ。迷惑になる」
早速メニューを開いて騒ぐ美空姉妹とは打って変わって、隣に座る玲奈さんはやけにおとなしい。ファミレスよろしく、玲奈さんも食いつくと思ったんだが。
なんだかやけに落ち着かない様子で俯いてしまっている。
「玲奈さん? 大丈夫?」
「えっ? あ、うん! 大丈夫だよ!」
俺が声をかけると、玲奈さんは大きく肩を震わせて慌ててメニューに手を伸ばす。
「わ、わぁ美味しそう! さっきはデザート食べなかったし、私もスイーツ頼んじゃおうかな! い、いい?」
「もちろん構わないよ。ここに来たのも俺の我が儘だし」
「わ、わーい! ありがと! 何が良いかな~」
……何だろう。笑顔がぎこちない。あと、微妙に目線が合わない。もしかしてやっぱり美空姉妹が一緒なのは快くないのだろうか。それとも、カフェに緊張している? でもなぁ、ここそこまで気の張るようなお店じゃないんだけど。
「あ、もしかしてカフェも初めてか? 外食はあんまりしない、って言ってたし」
「えっ!? あ、うん! 初めて! ど、どんなところか気になってたんだけど、やっぱり大人っぽい雰囲気だね。き、緊張しちゃう、みたいな? あはは……」
所々早口でまくし立てる玲奈さんだったが、やっぱり緊張してたのか。まあ、初めての場所で緊張するな、って方が無理だよな。確かにファミレスと違って子どもは少ないし、ちょっと雰囲気あるのはその通りだしな。
「まあ、あんまり緊張しないでよ。美味しいスイーツ食べて飲み物飲んで、気を休めてよ」
「う、うん、頑張る」
玲奈さんは、それだけ言ってメニューに視線を落としてしまった。どうやら本当に緊張しているらしい。
「あ、そうだ頼斗。早く連絡先交換しちゃお」
「私も私も! らい兄の連絡先欲しい!」
「ん? ああ、先に済ましちゃうか。ちょっと待ってくれ」
美空姉妹がスマホを手に催促してくるので、注文前に済ませてしまおう。
「そ、そう言えば三人は仲が良さそうなのに、どうして連絡先を交換してなかったんで……の? もしかして、どっちか中学生の頃にはスマホ持ってなかったとか?」
控えめに差し込むように玲奈さんが問いかけてきた。
と言うか、今一瞬敬語が出そうになったな。流石に緊張しすぎだと思っていたが、初めて会う美空姉妹に対しても緊張してたのかもしれないな。まあ、こいつら顔だけはいいしオーラがあるから気持ちは分からないでもない。
「ああ、それは
「あれは流石にびっくりしたよね」
「うっ、その件は許してやってくれ」
責めるような星空が鋭くこちらを向いて来た。綺麗なはずなのに刺々しい。綺麗なら花以外にも棘があるらしい。
「夜見ちゃん? って誰?」
そして追い打ちをかけるように聞かれた言葉に、今度は
「あ……これ、言っていいやつ?」
「お、俺から言うよ」
「ん?」
俺と
「俺の元カノの事。夜見、って言うんだ。俺と
……冷や汗が止まらない。
デート中に他の女友達を同行させるってだけでも重罪なのに元カノの話を始めるのはいかがなものか。だけど会話の流れ的にどう誤魔化したって察せられることな気がしたし、隠すのではなく明かしたほうが今後のためにもなると思うのだ。
そう思っての発言だったが、やはり反応が怖い。言い終えてすぐ顔を見れなくなって視線を外したのだが、聞こえてきたのは想像していたより明るい声だった。
「あ、噂の元カノさん? どうして連絡先交換できなかったの?」
「え? ああ、うん。えっと、あいつ曰く『え? 彼女が出来たら彼女以外の連絡先消すんじゃないの?』だそうで……その時消して、そっからずっと、って感じ」
今思い出してもあいつは異常だった。玲奈さんはこうして目の前で他の女子との連絡先交換を認めてくれてるんだし、普通の彼女はこんなこと言わないよな。
「え? そう言うものなの? 私もそう言ったほうが良いのかな」
「そ、そうなるのか!? 今の流れで!?」
「そ、そうだよ! 夜見ちゃんがおかしいだけだから、真似しないで!」
「普通にらい兄困るから!」
「や、やっぱりそうだよね。あはは……」
玲奈さん、今こそ笑っているがさっきの発言中結構真面目な顔してたぞ。冗談風に流されたが、割と本気だったんじゃないかと疑ってる。
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