第4話 入学式に立てた式(3)


「この学年は生徒数204名。AからFの6クラス。神木かみき深月みづき城ノ戸きのと真紀まきも、各クラスの一番目に名前があるから名前の順じゃない。合格者番号が俺が1、真紀が2ってことを考えれば、成績順にA・B・C って振り分けられている可能性は大。


 問題は、A・B・C・D・E・Fの6進法で振り分けているのかどうか。


 常葉は模試の上位常連が A・B・C に偏っていると言っていた。6進法で割り当てて、成績優良者がたまたまA・B・Cに偏るなんてことがあるか? 何人いるかにもよるけど、『固まってる』ってことは、結構いそうだ。


 それなら、俺は、成績上位半分がA・B・C に。

 それ以外がD・E・Fに振り分けられている方に賭ける。


 これは完全に推測。だが、可能性があるなら試す価値はある。試すなら可能性が高い順に、だ。


 この先は、千夏のクラスが分かれば、常葉のクラスも分かる。その逆も然り。常葉、どっちにする?」


「どっちでもいいなら、じゃあ、なっちゃんで」


「オーケー。ここからは千夏にしぼって考えよう。千夏の合格者番号は202。これには上半分の102名が含まれているから、それを除けば100になる。


 千夏たち102名も成績順にⅮ・E・Fと振り分けられているとすると、100番目はどのクラスに当たるのか。それを考えればいいってことだ。常葉、どうだ?」


「『どうだ?』って。いきなりそこでオレに振るのかよ!」

「当然だ。ただ聞いてるだけなんて、つまらないだろ?」

「マジかよ」

 オレは額に手を当てる。


「常葉ーがんばってー」

「常葉ならできるわ」

 千夏と真紀の声援が耳に入る。


「しゃーない! やってやろう!」


 オレは張り切って腕まくりする。

 ブレザーだと上手く捲くれないことには、やってみてから気が付いた。


「そうだな。

 オレならまず、D組に割り当てられる順位を考える。

 するとこうなる。


 1・4・7・10・13・16…


 よく見れば、最初が1で、そのあとは3ずつ増える数列だ。

 この数列に現れる数字を左から数えて1、2、3、……nとすると、この数列は 1+3(nー1)で表せる」


「はい、常葉先生」

「なんだい、千夏くん」

「なんでー1するんですか?」 

「いい質問だね。

 (nー1)は、3を何回かけるかを表している。

 でも、この数列の1番目で3の倍数は発生しない。

 3の倍数が発生するのは2番目以降。

 それを(nー1)で表してるんだよ」


「よくわかんない」


「実際、数字を当てはめてみようか。

 さっきの数列が出てくるはずだよ。


 1+3(nー1)において、

 1番目 1+3(1ー1)=1+3×0=1

 2番目 1+3(2-1)=1+3×1=4

 3番目 1+3(3-1)=1+3×2=7


 な?」


「本当だ! ちゃんとさっきの順番で数字が出てくる!」

 千夏は胸の前で、小鳥の羽ばたきみたいな拍手をする。


「まだまだ、拍手するのは早いぞ?

 さっき言ってた3の倍数を見てみると、ほら。

  3×0

  3×1

  3×2

 って、ちゃんと3の倍数が2番目から発生するようになっているだろ?」


「おお~。(nー1)ってこういうことなんだね!」


「この数列の答えが、千夏の順位の100になる時、

 割り切れたらD、余り1ならE、余り2ならFだ。


 1+3(nー1)=100

   1+3nー3=100

     3nー2=100

       3n=102

        n=34

 割り切れた。

 千夏はD組にぴったりはまったってことだ。

 オレは千夏の次で1あまるから隣のE。


 どうだ!? 深月!!」

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