第2話 入学式に立てた式(1)

 明菱めいりょう高校、入学式の日。


 新品の制服に身を包み、オレたち四人は明菱高校の門をくぐった。深月の付き添いではなくて、れっきとした同級生として。


 桜の枝は葉ばかりだったが、散った花弁はなびらが風を追いかけるみたいに、ころころと転がっていく。


「花弁が駆けっこしてるみたいだね」と千夏ちなつが笑顔を咲かせ、

「かわいいわね」と真紀まきが同意する。

「オレも同じこと思った!」とオレが胸を張り、

「早く行こうぜ」と深月みづきが先を行く。

 オレたちはいつもこんな感じだ。


 親たちは先に体育館へ行き、オレたちはクラス分け表を見て、各自教室へ向かうように指示された。教員がスピーカーを使って、さっきから繰り返し同じ内容をアナウンスしている。


 昇降口前の掲示板前にはうんざりするような人だかりができていて、誰もが自分のクラスを早く知ろうともみ合っている。少し待ったけど、一向に空く様子はない。どうやら一番混む時間に来てしまったらしい。


常葉ときわ、そこから見える?」

 千夏がほぼ真上を見るような角度でオレを見上げる。

「うーんとね、ちょっとだけ見える」

「なんて書いてあるの?」

「『20××年度新入生 全204名』って書いてあるよ。A~Fの6クラスあって、深月はA、マキちゃんはB。二人の名前はクラスの一番上に書いてあるから見えるけど、オレとなっちゃんの名前は下の方に書いてあるのかなあ。ここからは見えない。なんかA・B・Cに頭のいい奴が集まってる印象。模試の上位常連が、A・B・Cに固まってる」


 そこまで聞いて、深月がふと笑う。


「俺、二人のクラス、分かるかも」

「マジかよ!? どうやって!?」

「お前らの合格通知表に書いてあった番号って何? 俺は1」

「私は2」

「わたしは202」

「オレ203」

「なら、千夏がD、常葉がEだ」


 ほんの一瞬で、どうやって……。


「ほんとかよ、深月」

「たぶん合ってる。これから確かめに行くか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る