第3章 ギャハハ、お前らも俺と同じ所まで堕ちてきやがれ!

3-1

「じゃあ本当にパパの娘なんだ!」

「ワタシも他にも子供がいたなんて驚いてるわ」


 互いの自己紹介が終わり、スカーレットとヴィオレはすぐに打ち解けた。

 境遇が似ていることもあり、話もはずむ。


「どうしてパパなんかがそんなにもてるんだろ? 性格はゲスだし、女の子のアタシにやられるほど弱いのに!」

「他のパーティーの人は、皆から尊敬されている凄い人ばかりでしょ。パパはそれを利用して、目につく女を手当たり次第に口説いたんだと思うわ」

「なるほど。今も昔の仲間の人たちの名前を勝手に使って詐欺してるしね。でも口説かれてもパパがどんな男かなんて、ちょっと話せば分かると思うけど」

「ワタシたちのママにそれが分かったと思う?」

「そっか! 性格と頭の悪い女だけが、パパに引っかかたんだね」


「てめえら! いい加減にしやがれ!」


 コウスケは激怒した。

 だが、話しに夢中な二人は、止まらない。。


「でも待って。パパは女なら誰でも見境が無いから、アタシたちの事も……」

「確かに……子供だろうが、実の娘だろうが、パパには関係ないに違いないわ」

「ううん、むしろそっちの方が、興奮して最高とか思ってるに決まってるよ!」


「変な方向に妄想ふくらませてんじゃねえ!」


「近寄らないでロリコン! アタシたちをレイプしようしてるでしょ!」

「近親相姦がしたいからワタシ達を引きとるなんて、どこまで腐ってるの?」


 スカーレットが木剣を構える。

 ヴィオレもスティックを突き出した。


「俺は20代後半から30代前半の、乳のでけえ女が好きなんだ! てめえらなんぞ眼中にねえ! くだらねえこと言ってる暇があったら寝ろ!」



「ナランハ。エルフ地区の人たちと人間の領民たちの暴動が衝突して、惨事になってるみたいで……」


 紅輔は妻に深々と頭をさげた。

 今日は領内初の、義務教育学校の完成記念式典。

 領に来てからずっと苦労をしてきたが、その成果の1つがようやく実った。。

 そんな日に起こった種族同士の衝突。まだまだこの領には課題が多いことを、強く実感させられる。


(そんなんほっとけ)


「気にしないで。式典には先に行ってるから」


 妻は不満一つ言わずに、優しく微笑みかけてくれた。

 新しい命が宿ったお腹は、すっかり大きくなっている。

 出産予定はもうすぐだ。

 そんな身体なのに、いつも妻は自分に協力してくれた。


(身ごもってんのに、そんなとこ行くんじゃねえ!)


「本当にゴメン」

「どうして謝るの? 私は紅輔のそんなところが好きで一緒になったのに」


(男を見る目がねえぞ)


「でも、このお腹じゃ……」

「なに言ってんの。この子もパパのそういうところがみたいに決まってるじゃない」


(…………)


「そっか。頑張らないとな。じゃあ、行ってくる。早く皆を説得してできるだけ急いで式典に参加するよ!」


 妻には、いっぱい負担をかけてきた。

 これが終わったらゆっくりと2人、いや3人で静養できる時間を作ろう。

 そう決意して、その場を後にした。


「俺も、もうすぐ父親か」


 走りながらポツリとつぶやいた。

 実感はまだわかない。

 だが、嬉しかった。

 そして、この子が大きくなった未来のために、頑張ろうと、より強く決意した。


(行くんじゃねえ!)



「……夢か」


 窓からはわずかに、明かりが差してきている。

 夢のせいで気分が悪い。

 ここで、やけに身体が重たいことに気づいた。


「むにゃむにゃ……」

「zzz」


 口喧嘩のあと別々に寝たはずのスカーレットとヴィオレが、ギュッと抱きついて眠っていた。

 2人とも幸せな寝顔を浮かべている。


「ロリコンだの、娘に手出そうしてるだの、散々言っときやがって」


 2人を見て、先ほどみた夢が頭をよぎる。


(……生きてりゃ、こいつらより少し年上か)


「ハハ……パパのロリコン、変態、ペド野郎、最悪」

「ふふ……そんなに近親相姦がしたいの。パパ最低ね」


「どんな夢、見てんだよ」


 コウスケは再び目を閉じた。

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