2-6

「はあ、ばあさんがめつ過ぎだぞ」

「なに言ってんだい! そんな値段じゃ商売あがったりだよ」


 マーヴィ―からもらったお金をできるだけ多く余らせて自分の懐に入れたいコウスケは一向に値下げしない老婆にコウスケは辟易していた。


(仕方ねえ、後から沢山もらえる約束したし、これ渡すか)


「そうかじゃあ良いもんやるよ。これはかの賢者マーヴィ―・キュアノスが作った幸運を呼ぶ魔法の石って魔道具よ!」

「あんたこの前もそんなの作って広場で詐欺してたらしいじゃないかい」

「石を見てくれよ。マーヴィ―のサインがある。この前、アイツの手稿が新聞に載っただろ。それと見比べてみてくれ」


 老婆は新聞の手稿と石に書かれたサインを何度も見比べた。


「……良いのかい?」

「勿論だ。だから今買ったもん全部タダにしてくれ」

「それじゃ最初と話しが違うね。こんなんでどうだい?」

「結局こっちの言い値より高けえじゃねえか」




「はあ、あのばばあ……うわさ通りのがめつさだ」


 店を出るなり男は頭を抱えてため息をついた。


「それなのにどうしてこのお店に連れてきたの?」

「あのババア、こんな商売やってるのに、ろくな魔法使えねえから魔道具の相場よく分かってねえらしいんだ。だから適当なこと言って値切って、マーヴィ―に貰ったカネを少しでも多く懐に入れようと思ってな……あ」


 しまったという顔をして男は浮かべている。

 言っていることは最低なのに、先ほどと打って変わりヴィオレには何故か男が可愛らしく見えた。


「最低ね……フフ、ウフフ」


 店に背を向けて少し歩いたその時、強力な呪いの魔力を感じた。

 方向は魔道具店のようだ。

 その直後なにかが落下し、大きく地面が揺れた。


「え? なに?」


 先ほどの魔道具屋が巨大な糞で押しつぶされていた。

 店主の老婆は無事なようだ。

 魔道具屋の上空には巨大な魔方陣が浮いていた。

 どうやらあそこから糞は降ってきたとしか考えられなかった。


「ギャハハハ! “降糞”を呼ぶ魔法の石か! あのクソ女、おもしれえ事しやがる。ざまみろボッタクリくそババア!……待てよ、アイツあんな呪いを俺にかけるつもりで石渡してきたのか! ふざけやがって!」


 男の言う通りマーヴィ―先生の石の効果だと考えて間違いないだろう。

 しかし、あんな恐ろしい呪物を渡すなど、2人の関係がいよいよヴィオレには分からなくなった。


「なに笑ってんの!? 逃げるわよ!」


 が、今はそれどころではない。


「そうだな! 近くによく行く広場があるんだ! そこまで行くぞ!」

「キャッ」


 男はヴィオレをお姫様抱っこして走り始めた。

 恥ずかしい、だがなぜか心地の良い感覚に襲われながらヴィオレは男をギュッとつかむ。


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