最初からクライマックス

神田 真

エクスカリバー

かの王は、対峙していた。

人の丈の三倍はあろうかという巨人と。


互いに、ここまでに無数の攻防があったことを物語る傷、傷、傷。

そして互いに、次の交錯が決着であることを悟っていた。


先に動いたのは巨人だった。

巨石を打ち欠き造られた、王の丈ほどはあろうかという戦斧を手に。

まるで、災害。

何者にも従わず、ただ自分の征くままに破壊する。

強く踏み蹴られた地面は炸裂したかのように見え、

そこに確かに、巨人の動きは気流の流れを変えていた。


双眸の赤き線のみを残し、巨人は迫る。


王は眼前に捉えたまま、持っていた剣を捨て、帯びる剣を手にする。

鞘はない。 ただ、布が封印するように巻かれているだけだ。


王は布を解いた。


瞬間、辺りにまばゆい光。

質量を伴った暴風は、そこで動きを止めた。

この未知の剣を畏れているのだろうか。


光は再び剣に集う。

花が水を吸って鮮やかに咲くように、

剣は光を吸ってさらに輝きを増す。


そして、王は動いた

双眸の碧は線を残し、剣の煌めきと共に、王の軌跡を示す。


そして暴風も再び動き出した。

互いが最接近した時、決着は始まった。


先に動いたのは、巨人だった

禍々しく、血塗られた戦斧を振り上げ、獣のような、声にならない声をあげる。

もしかして、あれは銘だったのだろうか


そして王も動き出した。

見上げるほどの体格差、切り上げる形になる。

そして当然、巨人はそれを見越し、すでに防御の構えをとっている


剣をこの一撃で致命に到らせられなければ、王は死ぬ。

だが戦斧はあまりに大きく、分厚く、巨人を守っている



それでよかった



剣と戦斧が交差する。

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最初からクライマックス 神田 真 @wakana0624

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