第2話 ファーストフード店にて


「今日1日過ごしてさ」

「なに?」

 

 ファーストフード店舗内、先に席に着いていた紗都子の向かいに座り、わたしは魚を揚げたバーガーのセットが乗ったトレイを置いた。


「言いたくないよ、言いたくないけど、まあ言いたいから言うんだけど。周りの同級生、止まって見えるよね。正確に言うと限りなくスローというか」

「スロー?何それ」

「こう幼いっていうかさ。そしてまあ古いね、なんでもかんでも」

「それはそうでしょ……」

「それでそんなに盛り上がれるの?みたいな」

「単純に嫌な中年じゃない、それ」

「言いたくないけど伝えようがないから言うけど、ちょっと自分達を上だと思っているグループってあるじゃない?その子達にさ、絡もうと思ったのよ」

「なんで?」

「いや、それは。わたしの36歳の力を見せつけたかったから」

「ああ……。うん、いいんじゃない」

「でね、行ったのよ。昼休み始まるときにその子達の席に。でも3人、3人なんだけどわたしが前に立つとほぼ同時に立ち上がって学食に向かったんだ。わたしはそれについていって後ろで並んで、3人が座った横に行ったの。で、ここ、空いてる?って訊いた」

「へえ、それで?」

「普通に、いいよ、って言ってくれて。わたしは3人の横でほぼ一言も喋らずご飯食べたんだ。スマホないのが辛すぎて……」

「で、何が言いたいの?」

「もう駄目なんだよ。夕夏。わたし元に戻っちゃった。あの状態だよ、同窓会状態。おっし、地元に住んでる人達にちょっと変わった自分見せてやる。って意気込んで同窓会行ったのにね。服もさ、頑張ってないよー、こんなもんだよー、っていうニュアンスを出すために頑張ってね。でも結局、乾杯終わって落ち着いたら当時の関係性のままっていう」

「え、それってちょっと前、でもないか。20代最後のーみたいなやつで大々的にやってたやつ?」

 

 わたしがポテトを紗都子の方に向けると、満面の笑みを浮かべて紗都子が1本つまむ。


「うんうん、あれ」

「というか行ってたの?『なんかわたし行くと逆に邪魔だから』みたいな変な言い訳っぽいのしてたのに」

「激しく失敗したから言えなかったんだ。早く忘れたくて……」

「別にいいんだけど。そうだ、写真部ってどうする?」

「いいね、話題を変えよう。明日の放課後にでもさ、入部届持って行こうよ」

「最初は見学だけでもいいんじゃ」

「こういうのは最初が肝心だから。もうね、迷っている暇はないよ。漫画なら次のコマには部室で説明受けてるシーンにしたいぐらいだから。あ、でもそういえば写真部って何するんだろう」

「写真を撮るんじゃないの?」

「それはわかってるけどさあ。撮るだけだと間が持たなくない?」


 その後、わたしと紗都子はそれぞれが考える写真部のイメージについて話し合いを続けた。

 

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