11月某日

 全く相手にしてくれない――。

 噂には聞いていたが、ここまでとは。けんもほろろに追い返され、私は肩を落として交番を後にした。


 とぼとぼと歩いていると、スマホが震えた。彼氏からだ。

『警察行けた? どうだった?』

「うーん、全然相手にしてもらえなかった。年の瀬で忙しいって追い払われちゃったよ」

 そう言うと彼は驚いたようだった。

「でも、相談してもまともに取り合ってもらえないって話、聞いたことあったんだよね。女ひとりで行くとダメとか、恋人や友人間のトラブルでしょってことで、民事不介入って言われちゃうとか」

『でも今回は知り合いですらないじゃないか』

「うん、それも言ったんだけど、名前も知らないようじゃどうしようもないですね、みたいに言われちゃって」

『電話のこととか手紙のことは言ったんだよね?』

「もちろん。知らない人に住所知られてるんですよって言ったんだけど、電話の方は職場宛てだし、実害なしって判断されちゃうみたい」

『酷いな』

 彼は電話の向こうで憤慨している。二人で住んでいる家だから彼にとっても他人事ではないし当然の反応ではあるのだが、私のために怒ってくれていると思うとなんだかホッとした。それだけ警察の冷たい対応に神経がすり減っていたようだ。

『今度は俺も一緒に行くよ。嫌な対応された場合の対処法とかもちゃんと調べてさ。交番より警察署のほうがいいかもしれないね』

「うん、私も調べてみる。ありがとう」

 彼の優しさに、少しだけ涙が出た。声には出してないつもりだけどどうだろう。

『こんなことでめげちゃダメだ。何も悪いことしてないんだから。大丈夫。俺もついてる。ストーカーにも、警察にも、毅然きぜんと対処すればきっと解決するよ』

 彼のこういうまっすぐなところが好きだ。どうして好きかといえば、それはからだ。だから、こうやってウジウジしているのは、私らしくないのだ。

「そうだね。私は何も悪いことしてない。堂々としてなきゃ」

 こんなことで、私はめげない――

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