第2話 出会い
周りを見ると、学園の方も変わっていた。
中央広場の天柱は消え去っており、建物は巨大な屋敷に様変わりしていた。
また広場周りは一面芝生だった所が、様々な花が咲き乱れる綺麗な花壇に変わっていた。
見たところ誰かが手入れしているようで、みずみずしかった。
「本当にここはどこ?」
未だに状況を整理出来ない私は取り敢えず誰かいないかを確認する為に動くことにした。
かつて天柱があった広場を通り、その屋敷に向かって歩いた。
立派な装飾が施された玄関の前まで来て、一か八か開くかどうか扉に手をかけた。
すると施錠されているからかびくともしなかった。
「開かないか。」
諦めて他を探索しようと玄関から離れ、花壇の方へ足を向ける。
花壇を進んでいると、背の高い紳士風の男が花を眺めている姿が目に入った。
黒いコートに黒いシルクハット、杖を持つその典型的な出立ちに若干の時代錯誤を感じつつ、声をかける。
「すいません、少々お話しよろしいですか?」
そういうと彼はゆっくりと私の方へ振り向いた。若いと思っていたが、以外と老いを感じさせる顔立ちだった。
「おや、"また"見慣れない顔のお嬢さんですね。宜しかったらお名前を伺ってもいいでしょうか?」
「アリス・トレイシー。17歳。マルブランシュ学園の2年生です。貴方は?それからここはどこなんですか?」
「"マルブランシュ"、ということは貴女も"また"ここに迷い込んだ訳ですね。」
「またって、前も経験したような口振りですね。」
「ここはそういう場所ですから。いずれ貴女にもわかる筈です。ほら早くお行きなさい。
彼女達をあまり待たせてはいけませんから。」
「何のこと?それに彼女達って」
その男が指差す方を見ると、先程まで閉まっていた屋敷の玄関が空いているのが見えた。
「いつのまに?」
そういって、直ぐに男の方に目をやると、彼は既に歩き始めていた。
私は慌てて、彼を追おうとしたが、何故か身体が動かない。
せめて名前だけでも聞こうとした瞬間。
「フランシス。とだけ名乗って置きますね。
可愛いお嬢さん。」
そう言い残すと、跡形も無く消え、彼の姿は見渡す限りの範囲で見つけることはできなかった。
「あの男は一体何者だったの?」
謎は益々深まるばかりだったが、その場に留まってもどうしようもないので、男の指示に従うように屋敷の玄関へ再び向かった。
玄関の前で行き、空いた扉から中を見る。
その屋敷の外観から想像出来るくらい豪華なシャンデリアや絵画、その他高価そうな装飾がなされていた。
そしてその玄関を超えた、ロビーにはメイドの格好をした女性が一人立っていた。
「ようこそおいでくださいました。アリス様、奥でお嬢様方がお待ちです。」
「どうして私の名前を?」
「旦那様から伺っております。失礼、申し遅れました、私、ジスカール家にてメイド長を務めております、アンナと申します。以後お見知り置きください。」
そのアンナと名乗ったメイドは深々と頭を下げた。
スペクラム・モメンタム グレースバーク・ヘンドリック @GreathbergHendrick90
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