スペクラム・モメンタム

グレースバーク・ヘンドリック

第1話 何も変わらない日常

自慢ではないが、私アリス・トレイシーは完璧だ。

はっきり言って欠点が見つからない、学園での成績は常にトップ、運動神経も良く、金色の髪に青色の瞳がよく映える整った容姿。


こんな感じの私だが、強いて言えば友達が少ない事が唯一の欠点なのかもしれない。

が、誰かと群れることは私の性に合わない、寧ろ独りで過ごす方が心地良い。


で、今日も今日とて退屈な授業を抜け出し、こうやって独りで街に繰り出そうとしている最中だ。

ただ、私の学園はかなり広く、正門へ行く時は必ず中央広場を通らなければならない。

そこにはこの学園を象徴するものがある

"光の天柱"

その原理は分からない。

何時から、そして何故存在しているのか、その天をも貫く柱は学園に堂々鎮座している。


「相変わらず馬鹿でかいな。」

普段見ている当たり前の光景だが、ここを通る際は毎度同じような感想を思い浮かべている。


中央広場を過ぎれば、後は正門のみ、ここを出れば退屈な世界からおさらば。

「さてと、今日は何しようかな?」

楽しい妄想を膨らませていると自然と私の表情も緩くなる。


学園の外には忙しなく行き交う人々がいて、彼ら自身の生活を送っている。

誰にとっても変わらない日常。

私の日常もここを出れば始まる。


それは突然だった。

正門まで後数メートルの地点で私の背後から何か途轍もなく強い光が襲ってきた。

好奇心に駆られた私は不意に後ろを見た。

そう、あの天柱だった。

今まであれ程までに光り輝いているのを見たことがなかった私はほんの少しそれに魅了されてしまった。

その刹那、一層強く、激しく光り始めた。


「くっ、眩しすぎる!」


余りの強さからか反射的に身を守るように地面に伏してしまった。


体感で1分くらいだろうか、漸く光が収まっているのが分かり、その場から立ち上がった。


そして私は目の前の光景に愕然とした。


「柱がなくなっている?」


慌てて正門の方へ振り向くとそこには、今まで行き交っていた人々がまるで人形のように生気を感じられないように静止していた。


「一体何が起こっているの?」


私はいつもの日常が跡形もなく崩壊したという事実を見せつけられた。

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