4コマ目 幼馴染と告白。
ゴールデンウィーク中はアニメを作るにもってこいだ。
肝心な
つい一昨日、
インストとは〝インストゥルメンタル〟といい、曲の楽器のみの部分を言う。ゴールデンウィーク中に声を入れるそうだ。
バンド調の曲で、ベース以外は全て
にしても
楽曲制作には協力的なのは俺にとっては有難いが、近いうちに理由を聞いてくれたら良いなと思っている。
そして結局あの日は先輩から『ごめんなさいね』とメッセージが来た……というか、その後は俺が三人に見せたアニメの内容について少し突っつかれた。
自分でも気になっていたけど、主人公の心情が多すぎる、これはラノベではないのだからもっと主人公とヒロインのセリフをメインにした方が良い、というごもっともな指摘だった。
その指摘を受けた俺はその日の夜のうちに、一話だけだが修正をして先輩に転送した。
先輩は俺が修正している間に主人公とヒロインの立ち絵を完成させていた。やはり先輩の家には外界と時間の流れが異なる空間があるのかもしれない。
既に一話分の絵は完成して送ってもらったから、その編集を終え、今から俺と
「んー、
「すまんすまん、ちょっと
「
至って真面目な顔で言おうとしている。変な誤解を生まないように訂正しないと色々とマズイ。
「言っておくが俺はロリコンじゃないぞ」
何を不思議に思ったのか、首を傾げる。
「じゃあ、あれはなんなのさ」
指を刺す方向にはロリキャラのタペストリー。だが大丈夫だ。なんと言っても――。
「
「どうしたのその喋り方……」
相変わらずの指摘速度。だが俺はペースを乱さず続けるぞ。
「このキャラ。見た目は幼女だが、実年齢二十六歳! この見た目でこの年齢、これこそギャップ萌えというやつじゃないか!」
熱烈な紹介にため息をつく
「つまりは合法ロリってことだよねー。うんうん、自分の性癖暴露しなくていいからさー、早くアフレコしようよー」
一体全体何があったらその結論に至るのか。……いや、言われてみたらそうなのか……?
でもここはせっかく
「だな、アフレコしていくか。和泉からのアドバイスのおかげで準備万端だぞ!」
「それなら良かったよー。それじゃ早速やろうか」
部屋のモニターに映像を映し、区切ったシーンごとに声を入れ、所々やり直しをして編集もしたら三時間ちょいでようやく話が完成した。
約二十一分間のセリフを入れるのにここまで時間がかかるのか。声優の人って大変なんだな。
一仕事を終えた二人は菓子を用意し、一話を通し見る。ちなみに時計は既に五時を過ぎている。
親が買い物から帰ってくるのが六時頃と言っていた。家に女子を入れているところを見つかると色々めんどくさそうだ。これを見終わったら早く帰ってもらおう。
ちょうど十七時半になった頃。一話を見終わった感想、自画自賛ではあるがいいアニメを作れていると思う。
「やっぱ
「えへへ、そうかなー。でも
「俺はあくまで
一話以降の内容作成や先輩から送られて絵を繋げて行く作業、〝トランジション〟をしている合間に俺が知る限りの背景キャラが出るアニメを見まくった甲斐があった。
その数々のアニメを思い返していると、時計を見、こちらを向く
「うんうん、なんか力になれたみたいで良かったよー。あとさー、もうこんな時間だけどいいの? 出来れば十七時には終わらせたいって言ってたけど……」
「そうだ、言ってくれて助かった。親が十八時頃には帰ってくるって言ってたから、それまでにはって思ってな」
「もしかして
「ん、言ってないけど、なんかマズイか……?」
「ありゃりゃ、バレたら色々とめんどくさそうだね。それじゃ帰るよー」
家に友達を呼んだ時、一番困るのは相手を帰らせるタイミングとかなんとか聞いたことあるけど、そのタイミングを自ら切り出してくれるのは助かるな。
小さなバックを肩にかけ、ドアノブに手をかけた
「おう、今日はありがとな。送っていかなくて大丈夫か?」
「家まで五分ちょいだよー? 私の事何歳だと思ってる?」
「……それもそうか、それじゃ二話以降はゴールデンウィーク明けになると思うから、一応台本に目を通しておいてくれ」
「りょーかい。じゃまたゴールデンウィーク明けー」
「おう、じゃーな」
よし、一話が完成してアニメ全体の完成も見えてきた。そろそろ五話と最終話の内容も完成させないとな。
パソコン前に座り、話の続きを書こうとした所、何やら下から話し声が――。
「嘘だろっ!」
焦り、窓の外を見てみるとさっきまで居なかったはずの車が家の駐車場に。
おいおいおい、鉢合わせてんじゃねぇか。父さんと母さん、いつもなんだかんだ言って帰り遅くなるのに、今日に限って!
部屋を飛び出し、階段を駆け降りる
「ホタちゃんの彼女さん? お友達? 可愛いわね〜」
母さんが一方的に質問攻めしている……。それもよそ行きの声で。
やはり世の中の母親は皆、ママ友間や電話の時に声が変わるものなのだろうか。そう思うと普通に引くな。
……今はそんなこと考えてる場合じゃないな。早く止めないと。
「ちょっと母さん!
目の前の見知らぬ女子に夢中だったのか、俺の声を聞いてようやくこちらに気づく。
「ホタちゃんっ、この子はだぁれ? 彼女さん?
二つほどやめて頂きたいのだが、その喋り方と〝ホタちゃん〟呼び。ただでさえ
あと父さんはなんで黙ったままニヤニヤしてんだ。普通にキモいぞ。とにかく今は母さんの質問に答えて早く帰そう。
「そいつは和泉。アニメ制作の手伝いをしにきてもらった帰り!」
「そうなのねぇ。ホタちゃん、ちゃんと女の子は家まで送って行くのよ〜?」
マジでその呼び方と口調やめてくれよ……。人前だとより恥ずかしい。
「分かってるから、行くぞ
未だ玄関の手前の廊下で詰まる
「はい、どいてどいて」
ドアの前の母さんと父さんを退けると、母さんは「あらあら」と、父さんは常にニコニコ顔。不気味だ。
外に出て早く立ち去ろうとすると母さんが声を送ってくる。
「ちゃんと家まで送るのよ〜? 女の子には優しくねぇ?」
「はいはい、分かってるから!
この状況はめんどくさ過ぎる。一刻も早く家から離れよう。
「ホタちゃん……面白いお母さんだねー」
「お願いだからその呼び方、忘れてくれ……」
結局、
この日、
部屋の奥の収録ブースはガラス張りで防音、音響設備バッチリ。そのブース内で二人は『恋愛シミュレーション!』のインストを流し、それに合わせて声入れをしている。
「いい感じだね!」
「ですねっ」
歌い終わった二人は演奏スペースの四隅の天井に付いているスピーカーで完成した曲を流しながら話す。
「好きな曲あったら流せるけど、なんかあるっ⁈」
「いえ、せっかく私たちで作った曲が完成したんですから、もう少し聴いていたいです」
「それもそうだね! このまま流しとこ!」
「やっぱり、
あまりの広さと設備の完璧さに言葉が詰まっている。
「よねー。両親共に音楽家だとこうなっちゃうらしい。私が小さい頃はパパのバンドメンバーがここで収録とかしてたんだよ⁉︎」
「それじゃ、結構うるさかったんじゃないですか?」
「それが全然なの! パパも抜かりないよねー。二階の部屋は全部完全防音! ドア開けた時くらいしか演奏の音が聴こえないんだもん」
そこまで言い終えると、途端に声のトーンが下がる
「でも、今はもう……そこにあるドラムもキーボードも、あっちの部屋のピアノも使われてない……。ママはピアノ教室で忙しいし、パパは完全に音楽の世界から離れちゃってるしさ……」
「なら……
聞いた途端、一気に元気を取り戻したように顔を嬉々とさせる。
「今、この子達って言った⁈ もしかして秋貴ちゃん、自分の楽器に名前つけるタイプ⁈」
あまりの勢いに先程よりも声をしぼめながらも、ベースを撫でて言う。
「は、はい……。この子、九万円したので、〝ここのつ〟から名前を取ってココちゃんです……」
「おー! って……可愛いけどなんか……生々しいな」
……。一瞬、二人の続いていた会話は途絶える。想定外の名付けセンスに困っていたのだ。
それ以上の言葉が見つからなかった
「えっとね、私のギターは、私の名前がじゅりで〝ジュエリー〟に繋がって、ジュエリーと言ったらダイヤモンド! だからダイヤって呼んでる!」
「いいですね、呼びやすいし、なんと言っても高級そうです」
「……
「はい、もちろんです……。世の中の大抵のことはお金が解決してくれるので。ところで
この質問に気まずそうにする。
「うーん、
「ん、? そんなことしませんよ」
「うん、なら……
この二週間、一度たりとも上がらなかった
「ほら!
「……いえ、大、丈夫です。続けてください……」
「ほんとに……?」
声は発さず、小さく
「小学生の時さ、
「それで私決めたんだ。曲を作れるようになって、
「えっと……」
言いにくそうにする
「その、
間を挟みながらも言った
「そそそそ、そ、そんなわけ、な、ないじゃん⁈ 私が?
「
指摘され、振りまくっていた両手で顔を隠して右をサッと向く。
「……だって、
「
「もー! と・に・か・く! 私は
顔を隠してた両手を下げ、横目に聞いてみる。
「あの……前も言った通り私、オタク先輩のこと嫌いではないですよ? ただ……」
「ただ……?」
ゴクリと息を
「
「え?」
頭にハテナマークが飛び交う
「去年は一度たりとも! 一度たりともですよ⁈ オタク先輩の名前なんて出たことなかったのに、
そこまでいうと息を切らす。
右を向いたまま聞いていた
「
先ほどの
「そ、そうですよ……なんか
声を荒げていたのが嘘かのように、いつもの声のボリュームに戻った
「なんなのそれ! 可愛すぎない⁉︎ え、さっき私が
「それは……
終盤、声のボリュームをさらに下げた
「うん、
「ちょ、
言われて
「
なぜか改まったように落ち着いた声をして
「なんですか?」
「あの、私のことお姉ちゃんって呼んでみてほしい!」
まさかの要望。戸惑う
「え、えっと……」
「ホント、一回だけでいいから! お願い!」
手を合わせて頼み込む。右目をチラッと開けて様子を伺っている
「ダメ……?」
「うっ、一回、ホント一回だけですよ……」
「やった!」
ニコニコが止まない
「えっと、その……
「あー! もう! ギサキも幸せね、こんなに可愛い妹がいるんだから! ……もう一回、もう一回でいいからお姉ちゃんって呼んで!」
「一回だけって言ったじゃないですか……恥ずかしいのでもう言いませんっ」
「もう、ケチ!」
言うと、
「あーあ、私も
「それってやっぱり……」
「うん、私……
泣きつくように再び
「えっ、どうしたんですか……?」
「それがね、
「それこそオタク先輩に相談してみたら、いいんじゃないですか……? ゴールデンウィーク中に会えないのも寂しいでしょうし……」
「寂しっ、くないことはないけど……。でも
「大丈夫ですよ、あの人は
「な、なんか
「そこが嫌なんですよ、
「あぁ、そういうものね……うん」
自らを言い聞かせるように頷く。
「今からでも送ってみたらどうですか?」
「うん、そうね……」
そう言ってスマホを取り出す。
送る内容を考える時間およそ5分。決意の表情。
「それじゃ送るわよ……」
『
「
「だってしょうがないじゃない! 今まで改まって相談とかした事ないし、
照れながらも怒る
「え、どうしたんですか?」
「アイツ、返信早すぎない……?」
『いつものファミレスでいいか?』
『あ、すまん。親がうるさいから何時集合か送っておいてくれ』
その時丁度、
「とにかく良かったじゃないですか。集合時間を送らないと」
「だ、だね。えっと朝からで大丈夫かな……? 早すぎないかな?」
「いいんじゃないですか。話が早く終われば、その後二人でデートとかしてもいいと思いますし……」
「……
「確かに
「いやっ……まぁない事もないけど……」
顔を隠すため下を向く
「ちょっと貸してください」
「ちょっと
返されたスマホを見ると勝手に返信された文。
『朝の10時に待ってる』
「えー⁈ ちょっと、なにやってるのよ! 自分じゃ送れなかったから助かるけど!」
「なら良かったです。明日、頑張ってくださいね」
「うん、ありがと……って告白とかしないわよ⁈」
またニヤリと口角を上げる。
「え、私は相談するのを頑張ってと言ったつもりだったんですけど……もしかして告白するつもりだったんですか?」
少し
「本当にオタク先輩のこと、好きなんですね。頑張ってください、応援してます」
頬を膨らましながら
「なんか
「今の私、可愛くないんですか……?」
頭を抱えながら
「あー、もう! どっちの
「
「うん、分かったから! 今日はもう遅いんだし送っていくね」
「大丈夫ですよ。あ、それよりベースは置いたままでいいですか?」
「え、うん。いいけど
「はい、またすぐお邪魔させていただくと思うので、では帰りますね」
立ち上がった
「いいですって」
「玄関までだって。ほらほら」
見た目より重い防音の扉を開けてあげ、
「あ、ありがとうございます」
「なんか
誰もいない家で一人、天井に向かって呟いていると途端に立ち上がってクローゼットの前に立つ。
「明日の服どうしよう! あ〜、
バタン。ベッドに倒れ込んで両手を広げる。
「はぁ……ほんと、どうしよ」
気の抜けた声で寝返りを打つ先のクローゼットを見ると大量の洋服。普段から着る服を悩んでいる
散々悩んだ挙句、クローゼットの横にかかっている一着を見る珠璃。
「もうこれでいっかな」
次の日の朝十時前。先に着いていた
休日の朝のファミレスは比較的人が多い。席もほぼ埋まっている状態だ。
いつもは三人以上で来る
店内の中央、入り口から一番奥の二人席。ソファと椅子になっているテーブルだ。
店内に入店音が響き、椅子側に座っている珠璃の背中を見つけた夜輝はテーブルへと向かい
「よう、そっち側でいいのか? 昔はソファがいいって
「い、いつの話よ。私がそんなお子ちゃまな訳ないでしょ? アンタの方が精神年齢低いんだからそっちがお似合いよ」
どうしていつもこう言ってしまうんだろ、何やってんだ私! しかも昔の事も覚えててくれてるし!
言われるがままソファ席に座った
「な、なにジロジロ見てんのよ、キモいわよ」
「お前……あんなに服買ってんのに、なんで休日に制服なんだ……?」
しょうがないじゃない! 色々悩んだ結果これがベストだったのよ!
「うるさいわね、アンタこそなによ。オシャレしちゃって。もしかしてこれからデートでも行くのかしら」
はわわわわっ……。私がこの前買ってあげた服じゃない! ちゃんと着てくれてるのね、なのに私はなんでこんな事言っちゃってるの〜!
「これ、この前
「私より遅く来た
昨日の
「まぁそうか、
喋りの後半、メニューを手に取って開く。
「朝食べてないからなんか頼んでいいか?」
「それなら私も食べてないから頼もっかな」
二人は
「先に頼んでいいぞ」
「このデミグラスハンバーグ定食と……」
メニューを
「あとこれで!」
「お前、結構食べるな……。あ、俺はプライドポテトとドリンクバーでお願いします」
え、
店員が戻って、
「ちょっと
「でもパフェまでは要らなくないか?」
「しょうがないじゃない、目に入っちゃったんだから」
その後、大した会話もなく、運ばれた食事を楽しんだ。
そして
「
一口目のパフェを
「おいおい、大丈夫か」
聞かせてってなに⁈ 私が
「えっと、なにを聞かせればいいのよ」
「ん? 『恋愛シミュレーション!』だろ。完成したから聴いてほしいって」
「あ、うん……もちろんそうよね」
なんて事考えてんだ、私のバカー! とにかくここは曲を聴かせてる間に落ち着きましょう、うん。
スマホを取り出し、曲を
「うん、いいぞ……めっちゃいいぞ
夜輝がすっごく褒めてくれてる⁉︎ やった! やったやった!
緊張が解け、脳内ではしゃぐ珠璃は自慢げに腕を組み、ニマニマ顔になる。
「そりゃ私が作った曲なんだからいいのは当たり前でしょ! なんならもっと褒めてくれたっていいんだからね!」
「少しは遠慮しろよ……って言いたいところだけどマジでいい! CD化されても買うレベルだぞ!」
「ふふん、そうでしょ。私の手に掛かればこのくらい余裕よ!」
ってまだ
テンション爆上がりも束の間、今まで
黙り込んだ
「にしても凄いよな。こんな短期間でこんないい曲、
自ら
「てか、
そういえば
「う〜ん、
「んー、そうか? マジで俺、心当たりがないから、知らないうちに
「うんうん、
ようやく
「ん? どうした」
「あのさ、ごめん!
「何言ってんだ? 普通俺が謝る側だろ。こんな短い期間で二曲作って欲しいって頼んでんだから」
「でも、
「俺がこのアニメの発案者なんだぞ? 俺がほんとは他の四人よりも頑張らねーといけないだろ。俺の夢に付き合って貰ってんだから。
自分のプライドばっかり気にして、ちゃんと相談に乗って欲しいって言えないのはダメだ。今日は真剣に相談するために呼んだんだから。こんな中途半端な気持ちじゃ、
気持ちがまとまり決意の表情。
「
「ど、どうした。いきなり真剣な顔して」
初めて見る
「ホントは今日、曲を聴いてもらうために呼んだんじゃないの。
「……
「うん、私、本気で
「あぁ、もちろんだ! その代わり、ヒロインの心情とか、男の俺に分かんないことあったら相談させてもらうからな!」
あぁ、どうしよう……。曲に集中しなきゃいけない、
え、私、
なんとか想いを抑えようとする
スマホをスクロールしながら話し出す
「えっとそうだな……
悩む顔を上げ、面と向かって
「うん、それいいわね。主人公に寄せるならやっぱり落ち着いた曲よね」
「うんうん、そうだな。予定では六話では一話の時よりも明るくなってるから、曲の終盤で明るくしてみてもいいかもしれないな」
ようやく気持ちが落ち着いたのか、バッグからスマホを取り出し、メモり始める。
「りょーかい……あと、まだ
「あーっと、そうだな〜」
言いながら、スマホをいじり、キャラのメモ画面を開き、ゆっくりと読み上げる。
「
メモリながら
「つまり、曲のコンセプトとしては〝
意見がまとまり、スマホを閉じる。
すると突然、
「
「すっ、すすすす好きな人⁈ いるわけないじゃない! そう言うアンタはどうなのよ!」
なんでこのタイミングでそんな事聞いてくるのよ、バカ
というか、今変な事聞いちゃったよね⁈ 反射的に絶対言っちゃったわよね⁉︎
好きな人を聞かれ動揺する
「実はな、最近めっちゃ気になる女子がいてな……」
……え、どういう事……?
息を呑み込み、恐る恐る尋ねてみる。
「それって誰のことなの……?」
「ふふ、気になるよな! 金髪ツインテ、幼馴染! そしてだな――」
自分の髪を確認して動揺Lv.MAX状態の
金髪ツインテ、幼馴染……それってもしかして、え⁈
パニック状態の
「あのツンデレ! あれは全読者が惚れ込むな……」
ん、読者? なんの話……?
「主人公に最後、告白されるシーン……すっげぇ感動したな……」
主人公。シーン。感動。
自分のことだと勘違いしていた
「
「
「あ、そう……漫画、ね、うん……。私のときめきを返して欲しいわ……」
「ときめき? なんの話してんだ」
小声の
「おいおい
バニラアイスの部分が全て溶けきっていて、下のチョコスナックとスポンジケーキの部分に染み込んでいる容器。もはやパフェの原型はない。
ドロドロの元パフェを見て、
「それって美味しいのか、?」
「いいのよ。この液体と、もはや原型を留めていないスナックだって、元を辿ればパフェだったんだから! 胃に入れてしまえば同じよ」
パフェドロドロ騒動の後、二人は会計を終わらせ店を出た。
そこからどこかに寄る様子もなく、いつもの帰り道。
結局、
「そういや
「あ、だからフライドポテトしか頼まなかったのね……。それじゃこれからはどこで集まるのよ」
「俺の家で良くねぇか? 俺と
位置関係としては、学校→ファミレス。そしてファミレスから徒歩二分ほどの高級マンションの最上階が
徒歩十分圏内にみんな住んでいるのだが、その中でも
「まぁ確かにそうね、これからアニメの話を休日する時とかは
「おう、先輩たちには俺から伝えとく。それじゃまたゴールデンウィーク明け。それまでにまた相談があったらいつでも来てくれ!
『一緒に家でゲームしないか⁉︎ 一人より二人でした方が楽しいからさ!』
始まりは
幼稚園の頃の私は、今の面影は全くなかった。友達は居なくて、人に喋りかけることが出来なくて。
でも、そんな私を変えてくれたのが
『えっと、あの……私……』
『ほら! 早く行こーぜ!』
あの日、
『お、初めて同じクラスになったな! 今までトコトン違う組だったもんな』
幼稚園の頃は一回も同じクラスになった事はなく、小一で初めて同じクラスになった。
内心不安だった小学校も、
でも現実はそう甘くなくて、人見知りだった私とは相対して
『なんで一人なんだよ? みんなで遊んだ方が楽しくないか?』
『でも……私、みんなと喋れない、から……』
『またその喋り方かよ、俺と家でゲームしてる時みたいにすればいいんだって! ほら、行くぞ!』
『あの、えっと……す、ずみやじゅりです……』
『コイツも一緒に遊んでいいよな⁈』
『うん!』
『
あの時も
『
『ふんっ、アンタと同じクラスとかもう飽きたわ。七年連続一緒とか終わってるわね』
ホントは嬉しいのに、思ってもない事を言ってしまうようになったのはいつからだろう。それは考えなくても分かってる。
小四の頃。人見知りする事もなくなり、私が学級長になった。
それからというもの、学校で
『なんで学校では話しかけてきてくれないのよ、
『今の
『うん、確かにそうね。オタクのアンタが居ない方がいいかもね』
ここで本当の事を言ってしまったら、私の
私が
別に登下校と、家でゲームをしてアニメを見てる時間さえあればいい。この関係のままでいいんだって。
……私って
ふと
『本当にオタク先輩のこと、好きなんですね。頑張ってください、応援してます』
そうだ、私は
……でも、でも
『つまり、曲のコンセプトとしては〝背景〟と〝好きな気持ちを伝えられない〟って感じで、終盤にかけて明るくしていけばいいのね……分かったわ』
好きな気持ちを伝えられない……か、似てるわね。私のこの気持ちも背景のままでいちゃダメなんだ。
うん、これだ……。これなら伝えられる。
「
昼の二時、住宅街に響き渡る
「私、決めたわ! これから作る
「え、それってどういう――」
遠回りの告白をした
ドアの前で振り返り、棒立ちの夜輝にもう一度。
「覚悟してなさいよ!」
ドアに背中を合わせ、その場で座り込みささやく珠璃。
「うん、言ったわ……私、言えたわ……」
珠璃の入ったドアをただ棒立ちで見つめて、状況を理解した
「今のって……まさか、な……」
『
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