第7話 後日談ー消えた彼女、残ったもの
私が『体調が悪いからいけない』と連絡してから、一言、『
――― それでも私に悔いはない。
なぜあの人が私の前に現れてずっと話を聞いてくれたのか。私は熱が下がった後、会話を思い出しながら振り返った。
あの人が
そしてあの人と話して気が付いたことがある。
毎度、
消えかけたあの人を抱きしめる前のあの人は最後に泣きながら笑っていた。
私はあの人を
あの人が
**
梅雨はあっという間に去り、暑い夏が終わり、秋になった。
仕事の繁忙期が終わり、帰宅時間が早まった。それでも毎日、コンビニに立ち寄ってしまう。もうレジにはあの人はいないし、話を聞いてくれる相手はいないけれども、あの人と過ごした数日間の想い出は色濃く残っている。そして家に帰って、部屋にかけている、あの人が置いていった私のあげた部屋着を見上げる。そうして私は話しかけたところで返ってくることはないとわかっているのに、
そしてついに私がずっと楽しみにしていた
**
初日の学祭にきた私はまっすぐに
大学での評価はわからないけれども、作者コメントが書かれていた。
タイトル:
作者のコメント
自分自身が一番わからない。
思ったことを全て書き出して、私は何のために今を生きるのか、何を求めているのか、偽りのない感情を、自分の要素の一つ一つを露わにした。わかったことは何一つなかった。そうして得た結果、私と言う存在を構成する要素は日々、増えていってこれからも作りあげられていく、ということを示しているのではないか。
この数か月の
3日間ある学祭の最終日は一般人向けの学祭で発表された各作品の評価を発表するような一大イベントが存在する。ここでの評価がこれから始まる就職活動にも有利となるため、特に3年の在学生はこのために夏から制作に力を入れている。私は
**
学祭の最終日、イベントの結果は大学のWEBにも掲載される。その時間は学祭も終わった21時。居ても経ってもいられなくなった私はコンビニに向かって、キウイのヨーグルトドリンクを購入しに行った。帰りに近道しようと公園を突っ切ろうとする。
少し先のブランコ横の椅子に横たわっている人がいる。デジャブが私を襲う。
コンビニと同じくついつい見てしまうその場所にいる人物を凝視したが、ここからはよく見えない。
……まさかあの人なの?
ゆっくりと椅子に近づいて、私が覗き込むとそれは驚くことに……
そんな、まさか?
ここに
「あの…?大丈夫ですか?」
うっすらと月明りに照らされて、その人物は私の声に反応し、ゆっくりと動く。
覆っていたハンドタオルを取ったその人物は……思った通り、
「はい……だいじょうぶ、です」
何と声をかけていいのか、わからない私は無言になってしまった。
「……」
「一言、お礼が言いたくて。メッセージありがとう」
「…うん……」
学祭に行ったよ、という言葉が出てこなかった。その言葉を言ってしまったら、あの日から
「何で声をかけたの?」
私は
「それは…私の知っている人によく似ているから」
「うん……そう
私は言いながら、懐かしいあの人のことを思い出して顔が綻んでしまう。
「その人はどんな人?」
「……ここで話すのも何だから、部屋に行こうか。少し長い話になるけど、いい?」
過去の自分に嫉妬しながら彼女と過ごす10日間 MERO @heroheromero
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます