第4話

「いくつに見える?」


「やめてください。そろそろ怒りますよ」


「ハハッ冗談だよ、そんなに怒らないでくれ」


 別に怒ってるわけじゃなくて、ちょっとイラッとしただけだし。


「それでいくつなんですか?今度はちゃんと答えてくださいね」


「ん〜、ハッキリとした年齢は覚えてないんだけど100歳を超えているのは確かだよ」


 クラウスさんはふざけた様子もなくそう言った。


「本当なんですか?」


「本当だよ」


 なんとなく嘘はついていない気がした。


 それに嘘をついていたらこんなに優しい顔なんてしないだろう。


「仕方ないので信じてあげます」


 素直に言うのは少し恥ずかしくてそんな言い方をしてしまった。


「ありがとう」


 でもクラウスさんはそんな私に嫌な態度をとることもなく、やっぱり優しく答えてくれるのだ。


「あっ、そういえばまだ何も出してなかったね。お腹が空いただろう?準備をするから少し待っててくれるかい」


「はい、ありがとうございます」


 そう言うとクラウスさんは何もなかったはずの場所に机やらティーカップやら、いろんなものを出現させていた。


 もう驚いたりしない。これはきっと普通のことなんだよ、驚くだけ無駄だしいちいち反応して疲れるのは私なんだから。


 信じられないようなことをしながら忙しそうに準備をしているクラウスさんを、私は半分諦めの気持ちで眺めていた。


 最初は神様だとか私を殺した人だとか色々思ってたけど案外普通の人で、いや普通ではないかもしれないけど、とりあえずこの人はすごく優しい人なんだろう。


 もう家族には会えないかもしれないし、やり途中だった仕事もある。それでも、この人を恨むことができない、なんだか許したくなってしまうのだ。


「そうだ、何か食べたいものはあるかい?遠慮しないでなんでも言っていいからね」


「ん〜、それじゃあ、2キロの白トリュフをください」


「へ?白トリュフ?2キロ?」


 フフッ、白トリュフは高いしそんなに大きいサイズもめったにないはず。せいぜい困ればいいわ!


「はい。それとお米と生卵とお醤油が欲しいです」


「そんなにいるのかい?白トリュフ」


「なんでもいいんじゃないんですか?」


「確かにそう言ったんだけど、流石にそんなに大きいものは用意できないよ。ごめんね、今度探してみるから今回はこれで我慢してくれるかい?」


 そう言ってクラウスさんはどこからか取り出してきたピンポン玉くらいの大きさをした白トリュフとお米と生卵、お醤油を渡してきた。


「別に探さなくていいですよ。本当はそんなに大きいのなんて欲しくなかったので」


 私が受け取りながらそんなことを言うとクラウスさんは少し呆けた顔をした後困ったように笑った。


「本当に探しに行こうと思ったじゃないか」


 クラウスさんをただて許すのはなんだか負けた気がする。だから少し意地悪しちゃうのは仕方ないと思って見逃してほしい。


「ちなみにそれはなんなんだい?」


「これは卵かけご飯ですよ。トリュフは削ってかけるんです」


「へ〜」


「1口食べてみます?」


「おや、いいのかい?それじゃあ1口いただこうかな」


 

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転生先で魔法使いに拾われた私は、王宮でメイド兼スパイになる 春白 ルナ @357159popoi

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