第3話

「まず貴方のことを教えてくれませんか」


 私の問いに頷いたクラウスさんはどこから話せばいいのか迷っているようだった。


「そうだね、まず私は君が辿り着いたこの惑星、イレーネと呼ばれているのだけどここで生まれたんだ」


 クラウスさんは話すことが決まったのかそうゆっくりと話し始めた。


「イレーネでは大抵の人が魔力を持って生まれてくるんだ。魔力量は人によって違うのだけど道具に魔力を通して魔法を使えるぐらいが一般的で、道具を使わずに魔法を使える者はごく僅かなんだよ」


 そう言うとクラウスさんは自分の手を前にかざし、下から上にゆっくりと動かした。


 すると突然雲の下から木の幹が現れ、それは次第に大きくなり1本の大きな木に変化した。


 そんな状況に驚きを隠せないでいると、クラウスさんがまた手をひとふりした。


 すると今度はどこからともなく水が現れ、らせん状にクルクルと回り始めたのだ。


 目の前の出来事は現実で起きていることなのかと、今もまだ回り続けている水に触れようとした途端その水は凍りついてしまった。


 状況をうまく整理できずにいる私にクラウスさんはこう続けた。


「今見てもらったように私は道具を使わずに魔法を使えるんだ。それと魔法には属性があって基本的には1人が使える属性は1つなんだけど、私は3つの属性が使えたから学校を卒業した後すぐに国王陛下直属の魔法師団に入団したんだ」


 魔法師団なんてものが存在するとは到底思えないけど、さっきのを見たら信じるしかないじゃないか。


 それに国王陛下直属って、クラウスさん実はすごい人なのかもしれない。


「それで、入団して2年くらい経ったときにそこの団長になったんだよ。その後、団長を5年務めてそろそろ世代交代だということで辞めたのがかれこれ100年ほど前のことだよ。私の話はこんなものかな」


 は?100年前?


「100年前って冗談ですか?」


「全部本当の話だよ」


「本気で言ってます?」


「ああ、本気だよ」


 いや、いやいやいや、ありえないでしょそんなの。


 この人何言っちゃってんの。


「その顔は信じてないって顔だね」


「当たり前です。100年前って、それが本当だとしてクラウスさんは今いくつになるんですか」


 こんなときにそんなふざけたことを言うクラウスさんに多少苛つきながらそう聞くと、クラウスさんは少し考えた後こう言った。


「いくつに見える?」


「やめてください、そういうの。そろそろ怒りますよ」


 今までの会話でクラウスさんへの好感度はダダ下がりだ。


 最初は爽やかでかっこいい人だと思ってたのに。


 やっぱり完璧な人なんて存在しないのだと再確認した私であった。


 


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