第4話 新府城

 身曾岐神社を出て山梨県道17号七里岩ラインを南下する。JR日野春駅付近で、また釜無川と並行して走ることとなる。


 JR新府駅の丁度西あたり、七里岩ラインと釜無川に挟まれた小山に新府城しんぷじょうはある。

 近くには新府桃源郷という桃林が整備されており、そこと新府城跡を含めて新府公園と呼称しているらしい。道沿いに砕石敷きの駐車場があったためそちらに駐車。大きな観光看板もあった。


 桃の花の季節ではないし、城跡を見に来たので早速新府城に向かうが、七里岩ラインは交通量が意外と多く、みなスピードを出しているため渡るのに苦労する。

 渡った所は新府城の北端で、東西に出構でがまえが儲けられた場所だ。この構造は他の城では見られない新府城ならではのものらしく、出丸やダムではないかと推測されているらしい。高さはあまりないが、外堀を渡ってくる敵に対してはかなり優位には立てそうである。


 出構から南側へ移動する。頂上の本丸を囲むように帯曲輪が巡らせてあり、それに沿って歩く分には傾斜もゆるく苦にならない。

 本丸の東に来ると、直接山頂にある神社への石段が現れるが、それは登らず帯曲輪を進んでゆく。


 南側に来ると、三の丸があった広場に出る。土塁がしっかりと残っており、草なども刈られ整備された印象。土塁の間から富士山がきれいに見えた。

 三の丸を抜けると、今度は帯曲輪はカーブして北側へ転ずる。二の丸跡を経て少し進めば山頂の本丸だ。


 本丸には、南北に長い楕円形の400mトラックがすっぽり入りそうなほど平らな空間が広がっていた。

 ここには公衆トイレに案内看板、武田勝頼公以下武将たちの墓石、藤武神社などがある。縁には土塁が残り、そこからは眼下に藤井庄や武田庄が望める。平山城としての機能を感じさせる。


 一旦地上からの目線を離れ、鳥の視点を借りよう。

 はるか上空から新府城を見下ろすと、東西を川に挟まれた中洲のような場所にあることが分かる。

 新府城の西側は釜無川が流れ、七里岩という川に沿って北西から南東へ続いている断崖が、新府城を支えている。東側には塩川だ。両川はそれぞれ甲斐駒ヶ岳や富士見町、南八ヶ岳や北杜市に降った雨や雪を集めて流れ、新府城の南西7kmほどの地点で合流し、一つの釜無川となる。

 新府城を中心に東西に線を引けば、山・川・中洲(新府城)・川・山が3kmほどの幅で密集しており、甲府から見ればまさに北の門と言えよう。実際、新府から北西に谷を進めば諏訪であり、北に進めば佐久・上田に至るのだ。甲府から諏訪、上田を領袖した武田家にとっては、非常に重要な地であったことが伺える。


 鳥から視点を返してもらい、地に足を付けて本丸を後にする。帰りは藤武神社前の石段を利用。下れば、すぐに七里岩ラインへと戻ることができる。車に気を付けて道路を横断し、駐車場へと戻った。

 途中で大木が2本、目に付いた。戦国の頃からここに生えていて、武士の生き様死に様を見守ってきたのかもしれない。根元の、実に特徴的なデザインの石仏に思わず手を合わせた。

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