ラッキーロール口臭シュリンプ
第14話 フィールド
その町に……名前は忘れたが、町に金の雨が降った夜。
ショコラさんは意識を取り戻した少年を連れて、自身が所属する派出所に戻っていった。主人公はその派出所を宿にして貰う予定だったので、それについて派出所に向かった。
そして仮眠室を借りて、今日は眠ることにした。ショコラさんも不審者だけを派出所においていけないので、派出所内で眠るようだった。さすがに部屋は別だけれど。
さてベッドの前で◯ボタンを押すと、主人公がベッドに寝転んだ。
……
……
……
「あれ、これどうやって寝るの?」
主人公は暗い室内で寝転がっているが、目は開いている。
死後の世界で、僕は天使様に聞く。
「天使様……?」
「んぁ……?」あんたが寝てたんかい。「なに……? どうしたの?」
「どうやって寝るの?」
「寝る……? ああ、キミ自身が寝ればいいんだよ」
「ああ……なるほど」眠るコマンドはないんだな。「……ちなみに聞くけど、僕の就寝中……主人公は目を閉じるよね?」
「閉じると思う?」
「……」
つまり目をバッチリ開けたまま寝転んでるだけの男になるのか……不審者すぎる……
ともあれ……もうやることもない。寝るか。
「そんで……」寝ようと思っていると、天使様が言う。「どっちが本命?」
「本命って?」
「キミの目的は彼女を作ることなんだろう? 美少女2人と出会ったじゃないか」泥棒マイルと警官ショコラ。22を少女というかは微妙だが。「どっちが好み? ねぇねぇ、教えてよ」
めんどくさいなこの天使……
「というか天使さん……いつまでここにいるの……」
「だから、ずっといるよ。キミが死ぬまで」なんでだよ。「暇なんだもん」
「暇って……なにか、お仕事とかないの?」
「あるよ。死んだ人の次の転生先を決めるの」
「じゃあ他の人のところに行けばいいのに」
僕がそう言うと、天使様はため息をついて、
「だって、つまんないもん」
「つまんないって……」
「みんな……もっと自分の人生に自信を持てばいいのにさ」天使様は天井を見上げて、「みんな言うんだよ。自分の人生に価値なんてなかったって。やり直したいって。あの頃に戻りたいって」
……
やり直し願望。
その願望が僕になかったかと言われると嘘になるけれど……
天使様は続ける。
「過去の自分の人生に満足できないやつが、未来の人生に満足できる訳がないの。だからそんな相手の転生先を決めたってつまらないの。『次はもっといい人生にしてくれ』って願いを引っ提げてまた死ぬだけの人生」
「……ちょっと辛口過ぎない……?」
「気を悪くしたならごめんよ。でもね……たまにはこうやって気分転換くらいしたいの」
「気分転換……?」
「ゲームにだけは自信を持ってるやつの生き様さ」なんだか天使様は僕のことを過大評価しているようだった。「キミは……自分の人生が最低だったと思うかい?」
「思わない」即答できる。理由まで含めて即答できる。「だってゲームができたから」
それが僕の人生であり、僕の誇りでもある。
たかがゲームだと人は笑うだろう。他のことに目を向けろと言われるだろう。
それでもいい。それが僕の生き方だった。ゲームがあるから幸せだった。そう、断言できる。
「そんな感じに言い切れる人、なかなかいないよ」
「そうなの?」
「うん。一般的には成功者と言われるような人でも、自分の人生には自信が持てないものさ」
そうなのか……なんだか意外だ。
「キミはなかなかに面白い人間だよ」
「見る目がないんだね」
「天使だからね」それから天使さんは突然、「小学生時代からイジメにあって、イジメ対応に関する教育方針の違いから両親は離婚」
イジメられるほうが悪い。弱いからイジメられる。そう父親は言っていた。
逆に母親はイジメるほうが悪いと断言した。だから両親は常にケンカしていたし、最後には離婚した。
「キミとしては……イジメられてることに関心がなかったんだよね」
「そうだね……」イジメられていてもゲームはできたし、特に問題はなかった。「僕の場合、物的被害が出るイジメじゃなかったからね。助かったよ」
「……十分に自殺とかが範疇に入るレベルのイジメだったと思うけれどね」
「……自覚はないけれど……」
「みんなが、キミみたいに強ければ良いんだけれどね」
別に強くないと思うけれど。
ただ無視されたり、机が濡れていたり、チャットで夜な夜な暴言が送られ続けていただけだ。僕にはなんのダメージもなかった。
……いや、一般的には酷いイジメだったのだろうな。僕が気にしなかっただけで。
「ともあれ、キミのメンタリティは天使である私から見ても特異なのさ。異端と言っても良いだろうね」
「それ、褒めてる?」
「最大級の賛辞のつもりだよ」そりゃどうも。「とにかく、私は自分の人生に誇りを持ってる人間が好きなの。だから……こうやってフィールドを与えてあげたの」
「……フィールド?」
「そのコントローラーさ」連資産は僕の持つコントローラーを指して、「キミが前世で誇りを持っているゲームという分野……それを与えて次の世界を生きさせる。その男の人生が……純粋に気になるのさ」
「平凡な人生になると思うけど」
「初日に泥棒と殴り合って警察官とケンカして、女性警官を口説く人生が平凡だと?」
……
言われてみれば、すでにメチャクチャな人生送ってんな。
「まぁ私から言えることは、たった1つさ」なんとも悪魔的な笑みだった。「せいぜい頑張って私を楽しませておくれ、ってことだけ」
……
「別にあなたを楽しませるために生きるつもりはないですよ」
「そうそう、その調子だよ」
どの調子なんだか……
ともかく……
寝よう。
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