第62話 別次元のトラップその2 僕
僕らは明らかに地球次元と違う次元の中を歩いている。先頭のジルに続き地球人のワカ、ケル星人のはミリ、アビビ、生徒達が先頭グループ。ジルが一緒だから問題ない。
次の真ん中のグループにギル、クレアにポップ、月人アン達、そしてここに来て宇宙嵐モンズ星人と判明したばかりのタクが歩いている。次は誰がトラップの標的になるだろうか?
スーッとエルダが「バル、いけないね。次は誰が標的になるだろうかと楽しんでいるようだ。」
「エルダか?まさかこのトラップはお前が仕掛けたのか?」
「バル、宇宙創設者のジルではあるまいし、そんなに俺様は暇ではないよ。それに誰よりも早く古代宇宙嵐モンズ星へ到着したいんだ。」
「そうか。疑って悪かった。しかしどうしてエルダが古代宇宙嵐モンズに行きたいんだ。何か理由があるのか?」
エルダは僕の顔を深く見た。見たと言うより僕の背後にある何かを見ているようだったがすぐさま。
「そうだな。古代宇宙嵐モンズ星は、はじまりの星だ。始まりはすべてが美しい。感動することが多すぎて脳内もカラダもパンパン。僕は長く生きすぎた。ある程度のことなら、物事のはじめを見れば、終わり結果がわかる。」
僕は「それって地球で言う占い師?みたいな感じ?」
「バル、失礼だな。そんな、あやふやな者たちと一緒にしないでくれ。僕には、もちろんジルもだが、すべてを見通す力だある。当たり前だが、はじまりはジルだ。ジルが造った一番目のジルのコピーが俺様だ。だからわかるんだ。すべてにたいして、はじめとおわりがある。」
「それはすごいじゃないか。おわりが分かっていれば対処できる。例えばサッカーの試合で最後エース10番右キックでゴール。勝利がわかっていたら最後10番を徹底的にマークすれば点数は入らない。僕らの勝ちだ。みたいな感じで対処できる。素晴らしい能力じゃないかエルダ。」
「バル、君は素直だ。意地悪な言い方をすれば若い。単純だ。」
「エルダ、どこが単純なんだ。単純のどこが悪いなんだ。」
「そうだな、例えば今回のように僕は次元争い、ブラックホールダーク部隊としてジルや君達と戦った。あの時は敵だったよなバル。」
「そうだな。」
「戦闘はどうだったか?」「今だから言うが、戦闘は正直苦戦した。エルダの部隊のロン毛の少年はかなりの戦闘能力だった。」
「そうだな。彼は部隊の中でもとても優秀な少年だ。今はラコーニにの星、ギラル星の戦闘員になっているよ。」
「そうか。それでエルダ、僕がなぜ単純なのか教えてくれ。」
エルダは「そうだな、話を戻すが、君達との戦いは、すでに戦う前から負けることは、分かっていた。”はじまりとおわり”がわかる能力。もちろんこの能力はジルと僕しか持たない。僕はわかっていたが、抗いたかった。”もしかして”勝てるかも。しかし、それはなかった。すべてを見通す能力は時として、すべてのやる気をすいとる最強、最悪の力だ。しかしもはじめから結果がわかっていたが、僕は戦いたかった。戦ってジルの仲間になるけじめ。痛みが欲しかった。結果がわかっていて、戦う気持ちはバル、君にはわからないだろうな。」
僕は言葉がでない。ただ心がズキズキした。痛い。
エルダの人型が急に崩れ出した。黒いスライムの固まりになり僕へ「バル、僕を助けてくれ。はじまりのジルを消滅させたい。ジルにこの気持ちはわからない。バル。君ならわかるだろう。僕を助けてくれ。心が苦しい。助けてくて。」
エルダの言葉が耳元のすぐそばまで。
「バル!」ジルの声。「ポコン」ジルのゲンコツ。目を覚ませ。僕は道を外れそうになっていた。
「わあー。落ちる。」
ジルの手が伸びる。僕をつかまえる。「何に引っ張られているんだ。ばかバルめ。」
ぐいっと正しい道に引き戻された。「エルダに呼ばれた。エルダがジルを一緒に消滅させようと」
目の前にエルダが「バル。僕がジルを消滅させる?それはない。」
ジルも「それはない。俺様が消滅してしまえば、エルダも同時に消滅する。俺様たちはそういう関係だ。」
エルダも真面目な顔で「バル。ジルの言う通りだ。バル、君は誰に引っ張られたんだ。心に隙があると魔の空間から手が伸びる。古代宇宙嵐モンズ星までの道は案外戦闘より苦戦しそうだな。」
僕は落ちそうになった暗やみの深い淵をにらんだ。
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