第29話 要塞ベルシア

みんな要塞中央の広場に集まっていた。「バル、遅いわよ。」いつもの大きな元気な声で手を振りながらワカが僕を呼ぶ。横に可愛い女子がいる。「ごめん、ワカ。少し事情があって。」僕は少し照れながらまるでお母さんに言い訳をしている子供のようだ。横から可愛い女子、中学生ぐらいかな、が顔を出し「ワカ姉さん、彼がワカ姉さんの好きな人ですか。少し頼りないですね。これじゃ、ケンタの方が全然頼りがい、ありますよ。」「わーだめー。ミリ。私の好きな人。まだ言っていないのに。」僕はワカたちが二人でガヤガヤしてよく聞こえなかった。「ワカ、どうしたんだ?僕がどうかした?」ワカはあわててミリの口をふさぎながら「バル、なんでもないの気にしないで。」ミリがまたグイッと顔を僕に近づけて「私はミリ。ケル星人よ。特殊能力は記憶操作よ。」

「そう。すごいな、ミリ。僕はバル。宜しく。」ワカがミリの手を引っ張った。また何かおかしなことでもミリが言いださないかとドキドキの様子だ。ワカは小さいころから、まずいことがあると耳が真っ赤であわてるから、わかりやすかった。そっとした方がいいな。そう思い「ワカ、タク達と話してくる。また後で。」「そう。じゃね。」僕はタクの元へ「タク、君にも仲間がいるようだな。」タクはお兄さんぽい顔でうれしげに「そうなんだ。ケル星人のアビビだ。弟みたいで可愛いんだ。」アビビの顔つきは可愛いというよりどちらかと言うと生意気な年下の男の子だがな。僕は大人の対応で「こんにちはアビビ。僕はバル。ヨロシクね。」案の定、生意気なアビビは「バル。バルは、どんな特殊能力が使えるのさ。僕は脳内の考えを読むことができる脳内ハッカーさ。」

わーキター。やっぱり生意気ー。「すごいね。アビビ。えーっと僕はね。何かな?普通能力かなー?」「バル、バルは見るからに弱そうだもんなあ。普通ね。じゃ、タクと同じく俺様が助けてやるよ。」わーこんな子供にこんなこと言われていいのかな?僕、アビビをだましたかなー?まあ、子供だし、ここは大人の対応で。「アビビ、じゃ、助け、頼むよ。僕も。」アビビは嬉しそうに「任せてくれ。」へっへんと胸を張った。僕は気になっていたギルのもとへ「ギル、彼女は?」横にいたクレアにポップもいた。僕はもう一歩ギルに近づいて「ギル、君にも仲間が。」ギル?ギルのアルファα電磁波が微妙に変わっているのに僕は気づいた。僕は思わず「ギル、大丈夫か?」ギルは、はっとした表情をした。ギルの仲間の彼女はギルの紹介も待たないで「私はバム。ケル星人よ。この宇宙は我々、ケル星人のものよ。」そう言いながら僕の方につかつか近寄ってきて「ねえ、バル君。この宇宙はあなた達、宇宙嵐モンズ星の勝手にはさせないわよ。」バムは僕の耳元でささやく。「だめー。バル君から離れて。」ワカが叫ぶ。ミリも「バムさん。悪いけど、ワカ姉さんの嫌がることはしないでくださいね。私が黙っていませんよ。」ミリとバムとの間にビリビリと電磁波が走る。緊張した空気感だ。2人の間に大人の女性が割って入り。「はいはい。そこまで。私の自己紹介が一番最後?ハルト?」空気が変わった。

ハルトの横にいたタクが「ハルトの仲間?彼女、大人だな。すごいな。でも女子?えっ?おばさん?」ハルトの目がピクピク動いた。彼女は一歩前に踏み出し「みんな、よく聞きなさい。私はおばさんじゃないわよ。私は綺麗なお姉さんです。お姉さん。」さっきおばさんと言ったタクの方をじーっと見て彼女は続けた。「私は、あなた達が探している妖星のケブンの元彼女。」みんながどよめく「えーっ!」

「私はゼリよ。元彼のケブンに会いたくはなかったけど、地球のケル星のそして宇宙嵐モンズ星の緊急事態と知らされてきたわ。それにモンズ王、ジル久しぶりですね。」そう言ってゼリは僕の肩のジルに挨拶した。ゼリの言葉と態度が変わる。ジルに敬意を示しているようだ。

僕は「ジル、お前が現モンズ王だったのか?なぜ僕に教えなかったんだ。」「バル、鈍いな。察するとすぐ分かるだろう。そうさ。モンズ王は僕さ。」僕とジルが言いあっている中、前方より強い電磁波が「ケブン。」ゼリがつぶやく。ゼリは今度は大声で「妖星ケブン。会うのは120年ぶりよね。元気そうね。」妖星ケブンが「久しぶりだ。ゼリ。相変わらず綺麗だ。それにジル殿。お久しぶりです。みなさんの目的は理解していります。まずは長旅お疲れさまでした。まずは中へ」要塞へと僕らは招かれた。妖星ケブンの目が僕をまっぐに見た。

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