第26話 ギルのプライド

僕はジルとの集合場所から飛び立つギルの横顔が気になっていた。が今はケル星人のケブンを見つけることが一番だ。僕は南の要塞ベルシアに向かうことにした。一方ギルは南へ飛行していた。クレア、ポップより遅れての出発だ。

ギルは高速電磁波を使い飛んだ。

「面白くない。」宙を飛行しながらつぶやく。

我々ケル星は宇宙全土を監視している。彗星として星に着陸。その星の生命体をコピーする。姿を変化させ、その星の住人に。そしてその星を偵察、監視。宇宙の星達からは神様レベルの扱いを受けているにもかかわらず、宇宙嵐モンズに造られた星だと!面白くない。元々、彗星で目的の星まで飛行着陸監視。データーを宇宙嵐モンズ星に送信していたことはシステム上、理解している。僕らケル星の宿命だ。しかしそこには、宇宙全体のバランス均衡のため。星自体が存在に値するか否の判断は現場の我々が判断実行を有していた。そのため星に肩入れすることなく、フェアに監視してきた。努めていた。だから僕らケル星人の心は限りなく透明だ。

それに友達だと思っていたバルが、僕らのケル星人ではなく、僕らを造った宇宙嵐モンズ星人?次期王だと?ありえない。僕の砕かれたプライドはどこに向かえばいいのどろうか?。過去の英雄ケブンを見つける?妖星ケブンならこの僕の打ちひしがれたプライドの心の治し方を教えてくれるのだろうか?僕は単にバルに、宇宙嵐モンズ星人に嫉妬しているだけなのか。同じ目的を追い求めているつもりだったが、スタート地点から上下があることについて“はい”と素直に受け入れられない僕がいる。無垢透明の心が僕の自慢だったのに。“悔しいな”僕はメインエネルギー源の心臓部分をグッと握った。「くそー」

「だよねー。可哀想なギル君。」

「誰だ!」僕は後方を振り返った。

女?クレア?いや違う。「誰だ、お前は!」

「私?名乗りたくはないんけど。それに女子に名前聞く時は、もっと優しく聞いた方がいいと思うんですけど。個人情報だしね。」

「僕は元々は、女子には優しいんだ。今は気がたっているんだ。誰か知らないが邪魔だ。あっちへいけ。」

「ギル君、そう邪険にしなくてもいいじゃない。君とは、いい仲間になれそうだけどなあー。それに君が探しているケル星人の妖星ケブンの居場所、私知っているんだけどなー。」

「なんだって!」僕は飛行をやめ宙に止まった。そして振り向いた。

「どうしてそのことを知っているんだ。」

「当たり前じゃない。これでも私もケル星人よ。」

僕はその謎の女子の電磁波を感知した。アルファα電磁波だ。ケル星人の周波数だ。「君はどうして、僕にかまうんだ。」

「当たり前じゃない。この地球に何人の彗星、ケル星人がいると思っているの?過去から何千何万のケル星人が到来しているのよ。しかも生き残って任務遂行できたのは、ほんのわずかなのよ。生き残りのケル星人は適応能力がとても優れていて優秀なのよ。ギル君はもっと私を敬い、丁寧に扱って欲しいものよ。」

「まあ、なんとなく君の言うことはわかるさ。君は偉い。君は素晴らしい。これでいいか。僕は先を急ぐ。」

「ギル君って、少しおバカなのかしら。私はケル星人。この地球には長くいるわ。なんでも知ってるのよ。」

僕はその場を離れようとしたがやめた。彼女を利用しよう。カラダの中の色が黒に変わる。

「そうだな。僕がバカだった。頼む教えてくれ。妖星ケブンの居場所を。頼む。」

「いいわよ。その代わりにあなたのメインエネルギー源の心臓部分を私のものと変えてほしいいの。長く使いすぎて、この地球じゃメンテナンスもできない。この電磁波の体のメンテナンスなんてこの地球の生命体にはできないし、その習得にはもっともっと長い年月が必要だわね。以前はここに着陸した彗星ケル星人のをいただいていたんだけど、どれも片道用の弱いメインエネルギー源の心臓部だったから全部使い捨て。だから、正直この地球に残っているケル星人は、ほんのわずかよ。進化してあるものはこの地球人の生き血をエネルギーに変えて生きているものもいれば。人型をあきらめてふわふわ浮く幽霊状態の生命体で生きているケル星人もいる。あとは寿命でみんな消滅していったわ。」

「ひどい話だな。ケル星人の扱いは。僕らは、宇宙嵐モンズが造った偵察ロボットなのか?宇宙嵐モンズは、神ではない。」僕は体の中に重いグズグズしたものをまた持ってしまったこれは?」

「ギル君、それは嫉妬。憎しみ。宇宙嵐モンズ星人を消滅させて私達ケル星人のための宇宙を造り変えない?君ならできるよね。ギル君。」

”君ならできる”この言葉が僕のカラダ中を走り抜けた。

僕のカラダに不思議な電磁波が走った。僕の目が漆黒に変わる。

「君の名前は?」

「バムよ。」バムの目も怪しく漆黒の光っている。

そうだ。僕がケル星を、宇宙を支配する星にするんだ。

僕はバムに近づき、瞬時のテレポーテーションで僕のメインエネルギー

源の心臓部を取り換えた。同時に軽いめまいと電磁波が体中を流れた。

目の前のバムの顔色はバラ色に変わり息を吹き替えしたようだ。

「ギル君ありがとう。これで数百年は生きられそうよ。ところであなたの方はどう?私のメインエネルギー源は少し消耗が激しくて、ギル君のカラダに適応できたかしら。あなたの寿命を短くさせたかもしれないわ。」そう言うバムの顔は悪びれることがなかった。新鮮なメインエネルギー源の心臓部は、私がいただいて当然のような顔つきだ。しかし、そんな態度も今の僕には関係がなかった。僕は僕のケル星人としてのプライドと僕の星、ケル星のために打倒宇宙嵐モンズ星を誓っていた。

性悪だが、バムもケル星人として打倒宇宙嵐モンズ星を狙っているのは確かだ。

今はそれだけで十分。この心臓は?しかし僕にはもう一つのエネルギー源が。

このことはバムには秘密にしておこう。

「さあ、行こうバム。我々ケル星人の宇宙のために。」

僕は軽いめまいと電磁波の流れを感じながらベルシアへ向かい高速飛行した。




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