第17話 妖星ケル軌道回避

僕らの答えは決まっていた。「たとえ、この地球が破滅の道を歩んでいる愚かな星だとしても“消滅はさせない。“そうだろう、みんな。」

「おーう!」「そうよ、その通り。」

ワカ、ハルト、タクの声が響く。クレアも「この心優しき地球の友人のためにも消滅は、あり得ない。」ハルトが「ありがとう。みんな、確かにバルが言うように僕らの地球は今、破滅ではなく、自滅に向かっている。

大昔から幾度かの彗星衝突はあった。その都度、我々は、気候変動を繰り返し、人類、動植物、すべて、カタチを変えてこの地上の生命体は生き延びてきた。そして今の自分達がいる。僕は生きたい。ケル星人のクレア、ギル、ポップには悪いが、君達は神ではない。君達にこの地球の存続の決定権はないはずだ。彗星の衝突で消滅はさせない。」ワカが「そうよ。ハルトの言う通り。」地球人、タクもうなずいた。

僕は「そうだ。その通り…」と言葉を言いかけた時、ジルが僕の言葉を遮る。ジルは、いつの間にか、人間の子供の姿から地球到着時のネズミの姿になっていた。

みんな、「えっ?」と思ったが、小さいネズミのジルは、なぜか大きく見えた。ジルが話出す。「みんなの言うことはわかった。ケル星人たちは任務を放棄してこの地球を存続。バル、お前も何も調査せず、思いつきでこの地球を存続させようとしている。薄っぺらすぎるな。だめだ。そんな感情論だけでこの地球を存続?ありえない。ありえないし、全宇宙では誰も納得しない。」僕はジルにかみついた。「何を偉そうに言っているんだ。こうやって僕ら友達じゃないか。友達の家を星を助けて何が悪いんだ。」ジルは平然とした顔で「悪い。悪いに決まってるじゃないか。友達を救いたければ、彼らをケル星に連れて行けばいいじゃないか。バル、お前の宇宙嵐モンズ星に連れて行けばいい。どうせ、次期王はお前だから、好きにすればいい。それに友達がいるだけで、それが残り99%の、この星の悪しき状況を覆す価値はない。」僕は思わず手をあげてしまった。と同時に本来の力がもどった僕は、怒りのまま辺り一帯を一瞬で電磁波の力で消滅させてしまった。あまりのジルの言い方に腹が立ったからだ。ジルが僕の頭をネズミの姿で「ゴッン」と殴った。「バル、周りを見ろ。ないもない。お前の大切な地球人の友達もケル星の友達も消滅したぞ。さっきまでのクヌギの木もカブトムシもみんな消えた。」僕はヒートした脳内回路を冷やし、周りをよく見た。何もない。大きく円状にすべて消えている。冷静になった僕は自分の考えなしで無意識に使った自分のこのエネルギーの強さを恨んだ。「WOOO-----」涙が流れて止まらない。形あるものがすべて無くなってしまった。しかも自分のこの手で大切な人達を。僕のカラダは地球人の姿ではなく宇宙嵐モンズ星人、本来のスライムの姿になっていた。涙は止まらない。「ジル、ジル、助けてくれ。僕はとりかえしのつかないことをしてしまった。ジル。ジルーーーーーー!」ジルは「バル、落ち着け。遅かれ早かれこの星は消滅する。たとえ、ケル星の使者ポップの報告があろがなかろうが120年周期妖星ケル。”時は来る。”それにこの地球は我々宇宙嵐モンズ星の誕生と深くかかわっている。消滅?させるわけにはいかないな。それに一つだけ妖星ケルの回避方法がある、それはバル、お前の力だ。」「僕の力?今更何を言っても無駄さ。友達を失った今、僕は何もする気が無い。できない。できないんだ。この地球には何もない。」ジルはまた今度は強く「ゴッン」と僕の頭をたたいた。「バル、時間はない。腹をくくれ。お前はこの星。友達と出会った地球を守るんだろう。」僕の脳内でみんなの笑顔が浮かんで、消えない。さっきまで、ほんのさっきまで一緒にいたのに。僕の脳内回路が静かに動き出す。残されたもの、罪深き僕ができることは大好きだった友達との思い出のこの地球を守ることだ。

「ジル、僕にできる。僕にしかできない妖星ケルの軌道回避方法を教えてくれ。僕はやるよ。」ジルは「そう、それでこそ、宇宙嵐モンズの次期王だ。その前にと・・・」ジルはネズミの姿から宇宙嵐モンズの本来のスライムの姿になって光だした。その光は放射状に延び、そのエネルギーの強さで僕は目が開けれない。ジルが「行くぞーーーーーー!」凄まじい光と音が響きだした。次の瞬間、夜の静けさの音が聞こえ、話声が聞こえた。その声は聞きなれたワカの声だ。ギルもハルトもアンの声もする。「カブトムシ捕まえたよ。」みんなの声がする。「ジル、これは、これは!」「時間を少し戻しただけさ。」そう言ってジルの姿がまた小さなネズミの姿になった。「時間操作・・・」

「ジル、聞きたいことがあるが、今は、今はいい、」僕のカラダは人間型に戻っていた。涙は、流れたままだ。ワカが「バル、どうしたの?カブトムシにかまれた?あれ?それはクワガタか?」僕は目をこすり「大丈夫だ。問題ない。さあ、カブトムシ取るぞ。」時間操作?僕にできるのだろうか?脳内にジルの声”できるさ。それにまだまだやることは他にもたくさんあるぞ。これからだ。”




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