第3話 破壊の塵 

『時が来た。バル。目覚めよ。破壊の塵。流星よ。』ハルトが「バーン」僕の机に突撃してきた。「バル、テストどうだった?」ハルトの明るい声が響く。固まっていた全身の力だ一気に抜けて、僕は机に伏せた。ハルトが「バル、そんなに落ち込むなよ。悪かったんだな。」タクも絡んでくる。「バル、落ち込むな、赤点

か。」僕は2人の言葉が頭に入ってこない。外に宙に浮いて人間がいた。誰だ。「ギル。」ギル越しに窓の外を見る。いない。僕は立ち上がり。窓を開けた。誰もいない。ハルトが「バル、どうした?外に誰かいるのか?」タクが「ここは2階だぞー。大丈夫か?」僕は頭を出して大きく見回した。誰もいない。身体がまた、ふらついた。脳内にギルの声。『奴は、もういない。話は後だ。』冷静なギルの声だ。朝練ランニングしたジャージのハルトが後ろからバーン。僕に抱きつく。「バル、今日は朝からおかしいぞ。」軽いノリのハルトの声に救われる。意識が戻る。前の席からバタバタといつもの早足でワカが、「バル、本当大丈夫?保育園の時みたいに、突然倒れたりしないでよ。」ハルトが「そうそう、それ僕も覚えてる。なかなか衝撃的だったよね。滑り台のてっぺんに登って

“僕は流れ星だ-”なんて叫んで、ふらついて、そのあとバルが、てっぺんから落ちた。」ワカが「それ、それってあの時の夏も。」突然ワカが泣き出した。ハルトが軽やかな声で「ワカ、大丈夫だよ。バルはもう、小さい子供じゃないから。大丈夫。大丈夫。だよねバル。」僕は瞬時に脳内整理をした。ワカが本気で心配している。ハルトが本気でホローしてくれている。ここは、心配させてはいけない。僕はとっさに嘘をついた。「ワカ、大丈夫だ。窓にカブトムシが見えたんだ。ほら、僕、カブトムシ小さい頃から好きだったじゃないか。つい、窓から探しただけさ。」ハルトが「そうだった。バル、カブトムシ好きだよね。昔から。」タクが「へーえ、それは知らなかった。家の裏山にカブトムシが寄ってくる木があるんだ。夜に蜜に誘われて絶対いる場所だ。秘密の場所だ。しょうがないバルに教えてやるよ。家に来る?」ハルトが「面白そう。僕も行く。行く。来週から夏休みだし。」ギルも「僕も行きたい。」とタクを見つめる。タクが、美しいギルに見つめられてドキドキしている。少しの間がありタクが「いいよ。」ハルトがタクにツッコミ「あれータク、ギルのこと好きになったとか?」タクが「ハルトからかうな。」「コツン」とハルトの頭を押した。ハルトは「冗談だよ。冗談。」タクが真面目な顔で「そんな趣味はないよ。」キッパリ言いきった。2人の会話を聞いて、さっきまで泣いていたワカも笑いだし、

「タク、私も行っていい?そうだ。アンも誘ってもいい?」

タクは「いいよ。大勢だと楽しそうだ。」

ハルトが「じゃあ、決まり。来週水曜日から夏休みだし、初日にどう?タク大丈夫?」

「問題ない。家は、みんな、お祭り騒ぎ好きだから夕食も用意するよ。」

ワカが「タク、最高ーー」

僕の脳内にギルの低い声。

『バル、話がある。学校の帰りにいいか。』

僕はさっき宙を浮いていた奴のことだと直感した。『ギル、問題ない。』



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る